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岐大の環境が医学・医療のレベルを高める。3つの受賞はその証。

鼎談 医療への思いを語る

岐阜県における内視鏡手術のパイオニアである岐阜大学医学部附属病院。消化器外科および呼吸器外科における内視鏡手術の3人のスペシャリストがそれぞれ受賞したことを記念し、鼎談を行いました。

PROFILE

吉田 和弘 学長

食道がん・胃がん研究の第一人者。学長就任以前は医学部附属病院長、がんセンター長、消化器外科学教授等を歴任。「消化器癌における分子病理学的解析と集学的治療開発に関する研究」により、がんの治療・診断・予防に関する顕著な研究成果を表彰する「第31回中山恒明賞」を受賞。

岩田 尚 教授

岐阜大学大学院医学研究科 修了。呼吸器センター長、呼吸器外科長、内視鏡外科手術トレーニングセンター長。第18回日本ロボット外科学会学術集会 会長。日本内視鏡外科学会が毎年1人選ぶ、内視鏡外科学に携わる医師の最高の栄誉である「第18回 大上賞」を、岐阜大学で初めて受賞。

畑中 勇治 助教

岐阜大学医学部卒業。消化器外科所属。3 人が1チームで内視鏡手術の技術を競う世界大会「ELSA-WCES2025 MIS Championship」の一員として参加し優勝。その日本代表選抜選手権は日本内視鏡外科学会が主催、2025 年に続き2026 年も第1位を獲得し日本代表に選出。

内視鏡手術のパイオニアとしての実績と技術は国内外で高く評価。

吉田学長
消化器外科講座で切磋琢磨した仲間や弟子と同時期に受賞できたことは非常にうれしく、教育者冥利に尽きます。大上賞は日本で内視鏡外科手術の先駆者である大上正裕医師の名を冠した賞ですね。
岩田教授
ええ。私が医師になった1989年当時は、大きく切開する外科医が偉大とされた時代でしたが、間もなく内視鏡ブームが到来し、技術向上のために学会が設立されました。今回の受賞理由ですが2点ございます。一つは、呼吸器外科医は、肺がんの手術を請け負うのですが、もろい肺動脈を扱います。それを出血させると命にも関わります。そのような手術を内視鏡下でより安全に執り行うために、日本呼吸器外科学会では、手術動画を評価する技術認定制度を発足し、私がその運用に貢献したことです。もう一つは、手術支援ロボットを用いた洗練された術式をアメリカで学び、独自に工夫し日本に普及させたことです。現在、国内の肺がんのロボット手術の約30%がその術式です。
吉田学長
私が受賞した中山恒明賞は、がんの臨床において優れた業績に与えられる賞です。がんを自分の手で治したくて外科を選んだのですが、1980年代の大きく切る手術では、術後の合併症や再発による死亡例が多発していました。そこで基礎研究を行い、手術創や縫合不全の傷口に集まる白血球(好中球)が自壊して出すタンパク質分解酵素のエラスターゼについて研究を重ねました。
エラスターゼが、がん細胞に増殖因子を放出させることを突き止め、縫合不全等の合併症の少ない食道がん・胃がんの術式を開発しました。さらに、抗がん剤でがんを小さくしてから腹腔鏡や手術支援ロボットで切除する治療法を提唱し、食道がん・胃がんの治療で実績を上げ、これが標準治療となった業績が評価されました。畑中先生の受賞は、その腹腔鏡手術の技術に関するものですね。
畑中助教
はい。腹腔鏡手術のレベルアップを図るため、日本や世界の内視鏡学会では縫合などの技術を競う大会が開催されています。昨年度と今年度、私は個人で日本代表選抜1位となり、昨年度は世界大会で優勝しました。日本チームはレベルが高いのですが、それでも大会では緊張しました。チームワークで勝つことができ、吉田学長からも特別賞をいただきました。

※標準治療 科学的根拠に基づき、専門家が安全性と有効性を確認した最善で最先端の治療法のこと。多くの患者さんに推奨される。

栄誉につながる成果を生んだ関わる人々の寛容さや「和」。

吉田学長
今回の受賞の背景には、岐阜大学の環境は影響していますか。
畑中助教
私は学生時代の実習を通じて、腹腔鏡手術に興味を持ちました。初期研修先の県内の病院では、指導医師から「興味があるなら、患者さんに失礼のないようトレーニングを積みなさい」とご指導いただき、自主練習に励みました。岐阜大学病院では早くから手術を経験させてもらいました。吉田学長が教授時代に言われた、「治療が難しい患者さんを、自分の親だと思って診るように」という言葉も心に刻まれています。こうした温かな環境のおかげでモチベーションを保ち続けることができています。
岩田教授
私は呼吸器外科医となって間もない頃、慎重になるあまり手術にずいぶん時間が掛かっていました。それでも、内科の先生方はあえて私に自分の患者さんを任せてくださいましたし、先輩医師やスタッフも見守ってくれました。ロボット手術などの新技術を導入した際も同様です。
吉田学長
岩田先生は肺がん手術がまだ少ない時代から新分野を開拓してこられたパイオニアですが、サポートする仲間に囲まれている様子を素晴らしいなと思いながら見ていました。
岩田教授
それは、寛容で一生懸命な人を助ける土壌が岐阜大学にはあるのだと思います。
吉田学長
外科は、チームの仲間との和があってこそベストな治療ができるもの。私も「和をもって貴しとなす」をモットーにしています。
私は岐阜大学で、先にお話しした食道がん・胃がんの術式開発のほか、内視鏡外科手術の治療成績を向上させ、関連病院にも導入できました。また2種類の抗がん剤を組み合わせてステージⅢの胃がん患者の生存率を改善する治療法を開発し、現在では標準治療となりました。さらにステージⅣでも「化学療法でがんを小さくし、手術で切除すれば長生きできる」との考え方を普及させることができました。これらも私1人の力ではなく、講座や関連病院、さらには患者さんの協力があって実現できたものです。
畑中助教
チームで手術の現場に臨む魅力こそ、まさに私が外科を選んだ理由です。岐阜大学のチーム力はかけがえのないものです。関連病院にも「和」が浸透しており、研修医時代も人間関係で悩むことなく、充実した研修期間を過ごせました。

この先も標準治療となるような最先端の治療法を生み出していきたい。

吉田学長
それぞれが切磋琢磨した総和として今の岐阜大学医学部があることを誇りに思います。
最後に、医学部を目指す人へのメッセージはありますか。
岩田教授
目先の実利のみにとらわれることなく、医療をより良いものへと発展させたいという情熱と、尽きることのない知的探究心を持つ方々に私どもの後輩になってほしい。
畑中助教
私のように、憧れを原動力に医師を目指すのもいいと思います。他に必要なのは、人へのやさしさです。もちろん、身近な人も含めてです。
吉田学長
まさに、医師には相手の気持ちを理解することが大切です。人の意見を素直に真摯に受け入れ、客観的に考えようとする姿勢も必要です。あとはぜひ、英語を議論ができるレベルまで身に付けてほしいと思います。皆さんの今後の目標を聞かせてください。
岩田教授
医学を基礎から理解した総合的な外科医の育成に注力したいです。
畑中助教
これからも外科医の仕事の魅力ややりがいを積極的に発信し、岐阜の外科診療に誇りをもって取り組む外科医を育成することで、私を育ててくれた岐阜に恩返しをしたいと考えています。
吉田学長
私の目標は、岐阜大学病院が標準治療を実施するだけでなく、次の標準治療となる最先端の治療を続々と生み出せる大学であり続けることです。全国の大学や病院と連携して新しいエビデンスを作り、患者さんとご家族に喜ばれる治療を、今後も展開していきましょう。