大学案内

岐阜大学のミッション・ビジョンと戦略

岐阜大学は、総合知を活かした研究力を強化し、その強みをさらに伸ばすことで、地域中核大学としての役割を果たすことを目指し、中期のビジョンと戦略を策定しました。


地域共創、特色ある研究、 イノベーション、 教育をさらに推進

内外の大きな環境変化に対峙し、定めたミッションとビジョン

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 2020年4月、岐阜大学は名古屋大学(以下 両大学)との法人統合により東海国立大学機構(以下 東海機構)を設立して以来、岐阜大学単独の力では見ることができなかった将来像を描くことができるようになりました。同時に両大学の間では、執行部はもちろんのこと各部局、研究者、事務方レベルでのコミュニケーションの機会が飛躍的に増え、一体感が醸成されてきました。
 この間、岐阜大学を取り巻く国内外の環境において大きな変化がありました。まず新型コロナウイルスの世界的な蔓延、ロシアのウクライナ侵攻という歴史的な危機の経験から、DXやIoTの進展が加速されました。特に日本では科学技術立国の地位を取り戻すために、大学を中心としたアカデミアが果たす役割の重要性に鑑み、国立大学が日本の成長を牽引しなければいけないと強く認識されるようになりました。次に、大学が研究力を強化して社会課題・人類課題に取り組むためにも、単なる運営から、ミッションやビジョンに基づいた経営にシフトすることが求められるようになりました。さらに大学に対する国の大きな財政支援の仕組みとして、国際卓越研究大学制度と地域中核・特色ある研究大学強化促進事業が始まるとともに、大学と自治体との連携強化もクローズアップされました。また人口減、少子化に伴い、優秀な研究者も減少する可能性もあることから、優秀な人材を海外から獲得することも議 論されるとともに、地域内での大学の連携や統合に加えて海外の大学との連携も大きくクローズアップされてきました。
 このような大きな環境変化に応じて、東海機構とともに岐阜大学は大きく変化してきました。まず「Make New Standards for The Public ― 知とイノベーションのコモンズとして、常に国立大学の新たな形を追求し、地域と人類社会の進歩に貢献し続けることを、存在意義とする」との東海機構のミッションを踏まえつつ、岐阜大学は地域に軸足を置き、日本トップクラスの地域の中核大学を目指して自治体や企業と連携し、地域の課題解決に具体的に貢献するイノベーションを起こしていくことをミッションとしました。次に、法人統合の成果として両大学において学生の共通教育を始めるなど、学びの質を向上させることができました。また、地域中核大学総合振興パッケージに関連する国の大型補助金を活かして、教育・人材育成、研究・価値創造、社会連携・産学連携、国際展開の活動を活性化することができ、その結果、岐阜大学の教職員が将来ビジョンに向け勇気をもって挑戦することができるようになりました。法人統合以来の岐阜大学の発展の姿は自治体、企業、他大学からも注目され、レピュテーションも向上してきたと感じています。

変化と発展の3年半の歩みを振り返る

 2023年4月、東海機構発足から4年目を迎えましたが、これまでの成果を振り返ります。

大型補助金獲得

vision2023-1.png 岐阜大学は国の地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージと言われる支援策の補助金を6件獲得できました。1件目は地域活性化人材育成事業~SPARC~で、これはすでに「ぎふ地域創発人材育成プログラム(SPARC-GIFU)」としてスタートしています。
 2件目は、産学連携推進事業費補助金(地域の中核大学の産学融合拠点の整備)事業に採択され、地域の産学連携オープンイノベーションの拠点となるTokai Open Innovation Complex岐阜サイト設置を進め、2023年12月に竣工予定です。3件目は、イノベーション創出環境強化事業に採択されたことで、大学内拠点の機能を拡充するとともに、自治体との密な連携と学内の新たな支援体制の構築を進めることができました。
 4件目としては航空宇宙研究教育拠点が、名古屋大学の協力のもと地方大学・地域産業創生交付金「展開枠」を獲得することができ、ものづくりの発展につながる生産技術の横展開に取り組んでいます。5件目は、大学の世界展開力強化事業に選定され、インド太平洋地域との大学間交流形成に取り組み、インド工科大学グワハティ校とのジョイント・ディグリー・プログラム(以下 JDP)を中心とした国際展開力強化を推進しています。6件目は国立大学改革・研究基盤強化推進補助金により、「One Medicine(ヒトと動物の疾病は共通)」の視座のもと「Sharing Medicine(人獣共通医療学)」という新たな学術領域開拓を目指すOne Medicineトランスレーショナルリサーチセンターを設立し、それがOne Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点 (COMIT)として東海機構の連携拠点支援事業に位置づけられました。今後、名古屋大学との連携を軸に、岐阜薬科大学、三重大学、藤田医科大学とも連携をして東海発の創薬の拠点づくりにつなげていきます。

教育・人材育成

 学部学生の共通教育において、数理・データサイエンス・AI教育、英語教育などを名古屋大学と連携して単位互換性がある共通科目として開講することができました。さらに博士課程の学生を対象に学費免除が始まったことは大きな成果です。また学生自らがスマートフォンなどを使って目標とする学修レベルに対する達成で状況を自己評価できる学生ステータスシステムが、2023年10月に運用を開始しました。教育成果、学修成果を可視化するシステムを構築した大学は国内初です。
 地域との連携を活かした教育の取り組みとしては、宇宙産業を重要な成長産業として位置づける岐阜県とのコラボレーションにより「宇宙プロジェクト研究会」を立ち上げ、岐阜県内の高校生を対象に宇宙に関する勉強会を開催しています。さらに岐阜県の補助事業「ぎふハイスクールサット(GHS)プロジェクト」においては、岐阜県内の工業高校生が2024年度の打ち上げを目指して、10×10×20cmの小型衛星の設計・製造・打ち上げ・運用までを一貫して行う技術者育成プログラムを支援しています。

研究・価値創造、社会連携・産学連携

 糖鎖生命コア研究拠点(iGCORE)が中心となって推進する糖鎖研究が、国の大規模学術フロンティア促進事業において生命科学領域初の事業として採択され、世界をリードするオールジャパン体制の一翼を担うことができました。また2023年2月には糖鎖研究の新たな拠点となる岐阜研究棟が誕生しました。
 2023年1月には前述した、One Medicineトランスレーショナルリサーチセンターが設置され、新たな創薬をリードする基礎研究、人材育成、社会連携・産学連携の取り組みがスタートするとともに、日本学術会議の「未来の学術振興構想(2023年版)」のグランドビジョンにおいて「One Medicineによる創薬・先端医療研究の革新とSharing Medicineの実現」として位置づけられました。さらに国と岐阜県の支援を受けて発足した航空宇宙生産技術開発センターは、2020年に東海機構の航空宇宙研究教育拠点として活動を展開し、この5年間に8件の研究成果を現場導入でき、社会実装につながる段階に入ったことで新たな産学官連携が始動しました。今後は航空宇宙分野にとどまらず、自動車産業をはじめ他の産業における生産技術の革新に貢献することが期待されています。また同拠点では、両大学の学生の教育や企業人向けのリカレント教育において実績をあげるなど、産学連携による教育面でも大きな成果をあげています。飛行ロボット優秀機による「東海クライマックスシリーズ」では、両大学の授業・実習教育の象徴的なイベントになりました。

国際展開

 岐阜大学は、全国ジョイント・ディグリー・プロラム(JDP)協議会の会長大学として、JDP設置を推進しています。インド工科大学グワハティ校やマレーシア国民大学との協定のもと、博士課程の学生を対象とした教育・研究プログラムの推進とともに、岐阜県と相手国地域の双方の地域活性化に貢献することを目指しています。これまでにシンポジウムの相互開催、研究成果を活かした産業振興などに取り組んでいます。今後は、リール大学、リトアニアのヴィータウナス・マグヌス大学、南フロリダ大学など、すでに大学間学術交流協定を結んでいる大学とのJDP設置に向けた交渉を活発化していきます。また新たにモロッコのラバト国際大学との交流も始まりました。

附属病院

 ハイブリッド手術室を備えた手術棟を整備し、2022年4月から稼働開始したことで高難度手術などの手術件数が約50件/月増加し、先端医療の推進や病院収入への効果が現れました。また、入退院センターを設置したことで、患者さんへのサービス向上を図ることができました。今後は自治体や地域社会との連携も深め、未病・予防に貢献する研究も推進していく計画です。

地域創生、地域共創に貢献する 「ぎふのミ・ラ・イ・エ」構想を推進

 岐阜大学は、産業・まちづくり、ものづくり・食づくり、医療づくり、人づくりにおいて強みを有しています。私は、これらの分野における研究成果が地域の課題を解決し、地域を変えていく循環を「ぎふのミ・ラ・イ・エ」構想(Migration, Laboratory, Innovation, Education)と名づけ、岐阜大学の価値創造のモデルとして活動をさらに発展させていきます。その中で社会課題・人類課題の解決に貢献し得る有望なテーマがライフサイエンス、ものづくり、環境・エネルギーです。ライフサイエンスは前述の糖鎖研究やOne Medicineの視座に立った創薬や新しい医療分野の開拓です。One Medicineトランスレーショナルリサーチセンターでは、2024年度に新たな研究棟の設置を計画しています。また、ものづくりの分野では、航空宇宙分野をベースにスマート金型を中心とした生産技術や炭素繊維などのコンポジット材料を幅広い産業に横展開していく研究開発と社会実装をさらに推進していく計画です。環境・エネルギー分野でイノベーションの起爆剤になり得るのは、プラズマを使い、アンモニアの分解と水素の分離を同時に行うことができるプラズマメンブレンリアクター(純水素製造装置)の開発など、産業界からの期待を集める研究が進行しています。
 またイノベーションを起こし、地域創生をリードするスターアップの創出、育成・支援を東海機構、自治体、産業界とともに推進していきます。2023年6月には、岐阜県とともに「ぎふスタートアップ支援コンソーシアム」を立ち上げました。地域創生をリードするスタートアップを産官学金が連携して応援していきます。また、大学公認団体である岐阜大学起業部からも大学発ベンチャーが何社も生まれているので、アントレプレナーシップ教育の推進や起業支援などを通じて、今後も力強く応援していきます。

地域と世界に開かれ、愛される岐阜大学を目指して

 東海機構では、自らを「知とイノベーションのコモンズ」と定義しています。岐阜大学も社会の公共財としての役割を深く認識し、学び、究め、貢献する人材を輩出するとともに、地域と人類の課題解決に貢献する地域活性化の中核拠点となることを目指しています。この大きなビジョンを実現するためには、まずは岐阜大学のすべての構成員にとって、多様性と公正さ、帰属意識を持って働きやすい環境づくりと、優秀な研究者や学生を惹きつけることができる、地域と世界に開かれ、かつ魅力的な大学づくりが必要だと考えています。
 今後の持続的かつ飛躍的な発展に向け、岐阜大学に愛着を持っていただける人を増やし、支えていただきたいと願っています。ステークホルダーの皆様のさらなるご支援をお願い申し上げます。

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岐阜大学の執行体制

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