大学案内

ローカルの経営課題に特化した、即戦力リーダーを育てる大学院

社会システム経営学環(学部相当)設置から4年後の2025年、複数の研究科や他大学・研究機関などが連携して教育課程を編成・実施できる「研究科等連係課程制度」に基づき社会システム経営学院(大学院修士課程)が発足しました。従来型の経営学大学院とは一線を画す、その目的や教育の特色について、三井栄学院長に聞きました。

高度な理論とローカルの現場を往還しながら経営学を学ぶ。

学部相当の社会システム経営学環はビジネス、まちづくり、観光を対象にローカル(地域の中小企業・自治体・観光など)の経営課題を解決できる実践力の修得を目指す一方、大学院である社会システム経営学院はより高度な専門知識と実践力を備え、地域経済でリーダーシップを発揮する即戦力の育成を目的に誕生しました。この大学院は、社員研修としてMBAと同等以上の知識やスキルを実践的に学べる場を求める地域経済界などの声に応える形で設置されました。修了時には「修士(経営学)」の学位が授与されます。

一般的な経営学大学院が理論と学術論文を重視する一方、社会システム経営学院では講義での高度な理論と実習・研究を組み合わせた「往還型研究」により、社会実装を実践的に学べることが大きな特長です。学生自身や所属組織が抱える経営課題を持ち込み、その解決に取り組み、成果を論文にまとめます。修了後は、一般企業の組織リーダーやファミリービジネスの後継者、起業家、経営コンサルタント、公務員や非営利団体の幹部職員など、多様な進路が想定されます。

最終的に育てたいのは、リーダーを育成できる人材。

社会システム経営学院では、すでに企業や団体のリーダーとして活躍している方も歓迎します。在籍の1期生は、社会人4名、中国人留学生2名の計6名(女性4名、男性2名)です。20代から50代と幅広い年代が、互いに刺激しながら学んでいます。例えば、自治体職員であれば、今後も進む少子化や財源減少で必要な経営的視点、まちづくりや観光振興の実践的知識が身に付くでしょう。企業のリーダー研修として、組織内では得られない知識や体系的な学びを提供できると自負しています。

社会人学生が学びやすいよう、授業は6限目(平日・18:10〜19:40)を中心に実施しており、社会人は2年分の学費で最長4年間学べる長期履修制度を設けています。

私たちは、リーダーとして活躍できる学生を教育するだけでなく、修了生が組織のリーダーや組織の持続可能性を高められる人材育成を目指します。短期の研修では難しい、こうした人材育成も社会システム経営学院では十分可能です。社会システム経営学環の卒業生には、3年ほど社会で経験を積み、ぜひ経営課題を携えて入学し、リーダーを目指して学んでほしいと願っています。

往還型研究

講義で学んだ理論(例:マーケティングリサーチの知識)と実習・研究(例:観光地でのデータ収集・分析)を組み合わせることで、事業展開や起業に直接活かせる学びを深める。組織リーダーに求められる実践的な課題解決能力の修得を目指す。

いま直面している経営課題を題材に、実践力を磨くカリキュラム。

アカデミックな研究に終始することなく、理論と現場を往還する学びを通じて、知識の社会実装を目指す社会システム経営学院。それを可能にする独自のカリキュラムについて、篠田朝也教授に聞きました。

ローカルの企業課題に特化した経営学を学ぶ。

岐阜のような地方では、大企業の本社が集まる大都市とは異なり、ヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源に限りがあり、地域特有の制約も存在します。こうした地域の企業経営に焦点を当てて経営学を学ぶことは実はとても重要で、それが社会システム経営学院のカリキュラムの根幹となっています。

講義は、高度な経営学の専門知識を体系的に修得する「コア科目」と、学生が個々の関心に応じて選択できる「応用科目」で構成しています。自然科学技術研究科や地域科学研究科、名古屋大学大学院経済学研究科の教員による授業もあり、ローカルの経営課題として不可欠なまちづくりや景観デザイン、都市工学、農業経営など、工学や農学との融合分野を学ぶことができます。また、これからの経営に欠かせないビッグデータ活用によるマーケティングリサーチなど、データサイエンス分野も重視しています。

講義の知識と実践を結びつける場が演習と実習です。「コア実習」はコア科目での学びを活かし経営課題の解決を探るグループワーク型実習です。「実務家演習」では外部講師の下で実際の企業の経営課題に対する解決策を検討。「ビジネス実習」は地域の経営課題に取り組むインターンシップ型実習で、高山市での観光ビジネス実習などを実施しています。

多様な属性や視点からの活発な議論が学生の刺激に。

講義はどれも教員から学生への一方通行ではなく、ディスカッションを積極的に取り入れています。オンライン受講も可能ですが、多様な属性を持つ学生同士が対面で議論を交わすことで刺激が得られるため、大半の学生が毎回対面で授業を受けています。

2026年度に開講される2年次の「社会システム経営学実習」では、中心市街地でありながら多くの課題を抱える柳ヶ瀬商店街を題材に、活性化策に取り組みます。より充実した内容とするため、私たち教員も地域との調整に奔走しているところです。今後は、実習プログラムを学生自身が考案する形に発展させるなど、さらなる学びの充実に向けた方法を検討していきます。学生には、こうした学びの成果を個々の研究に反映させ、社会実装を実現してもらえると期待しています。

学生インタビュー
社会システム経営学院ってどんなところ?

学び直しに「遅すぎる」はありません!

社会システム経営学院に入学した理由は?

社会人でありながら組織のことを何も知らないと感じ、学び直しを決意しました。愛着ある岐阜のローカルな経営課題解決に力を入れているこの学院の理念に共鳴して入学しました。

入学前の不安は?実際入学してどうですか?

新設の大学院なので、実際に入学してみないとどんなところか分からず不安でしたが、社会人や経営者、留学生と一緒に学ぶうちに知識が増え、世界が広がるのを実感しています。

1日の過ごし方は?

日中は図書館で経営学の書籍や論文を読み自習し、6限目の講義を受けて帰宅します。

将来の目標やキャリアプランは?

経営学や組織論を深く理解し、学びを活かせる社会人・組織人を目指しています。

入学希望者に一言

毎日、世界が広がりワクワクできる学びがあります。少しでも興味があればぜひ。学び直しに遅すぎることはありません!

経営者として刺激を得られる贅沢な時間。!

社会システム経営学院に入学した理由は?

会社を設立して7年目、いつか経営を系統的に学びたいと思っていました。

入学前の不安は?実際入学してどうですか?

仕事と勉強の両立や勉強についていけるかが不安でしたが、毎回良い刺激になり、とても贅沢な時間だと感じています。特に、地域で活躍中の学院の教員によるリレー形式の授業は、多様な視点を学べ面白いです。

1日の過ごし方は?

朝は娘のためにお弁当と夕飯を用意して仕事に出かけ、17時頃から大学へ移動。毎日バタバタです(笑)。

将来の目標やキャリアプランは?

大学で教えながら地域でも活躍されている岐阜大学の先生のように、私も経営者としてプラスαの選択肢が増えるといいなと思っています。

入学希望者に一言

働きながら学べるこの大学院は、社会人はもちろん、一から学びたい経営者にもお勧めです。

描いた未来に向かって頑張れる環境です。!

社会システム経営学院に入学した理由は?

中国で日本語教師をしていましたが、将来が想像できず、現状を変えるため大学院進学を決意。岐阜大学は、研究生として留学していた先輩から勧められました。

入学前の不安は?実際入学してどうですか?

授業についていけるか不安でしたが、先生や学生が明るく元気で、高山のビジネス実習で一緒に活動した学部生も賢く、ここで頑張れば描いた未来を実現できると思いました。

1日の過ごし方は?

朝はアルバイトかヨガなどの運動の時間。午後は授業や研究テーマに関連する自習をし、6限目の授業に出て帰宅します。

将来の目標やキャリアプランは?

企業への就職が目標。今まで想像しなかった仕事にも挑戦したいです。

入学希望者に一言

現状を変えたい人、勉強への意欲が高い人にお勧めです。チームワークも楽しみながら一緒に頑張りましょう!

特色あるプログラム

実務家演習

外部講師を招き、実際の経営課題に対する解決策の企画立案を行います。2025年前期は、AIについて学ぶWeb会員制サロンを運営する、東京の起業家が講師を務めました。全8回の第1回は、講師から「会員数が伸び悩んでいる」という課題と事業への想いを直接聞くことから始まりました。第2回~第7回では、学生たちが互いに助言し合いながら各自のプランを練り上げ、最終回に発表しました。学生各位からの個性的な報告に対して、起業家からは「普段気が付かない新しい視点なども得られて、自分自身も刺激を受けることができた」と好意的なフィードバックをいただきました。

後学期の予定は、管理会計をベースとした経営コンサルティングを行う会計専門家とDXによる経営課題の解決に取り組むコンサルティングファームのコンサルタントを講師に迎えます。両講師陣の顧客である中小企業が直面する実際の課題をテーマに、学生が各自またはグループで解決策を検討します。

異なるキャリアを持つ学生たちが、助言し合いながら解決策を練り上げていく過程は、新たな気づきの宝庫。
経営のリアルな課題を取り上げるワークの実施や、実際の経営者との討論などを通して、経営者マインドを養います。

主な授業科目

1.講義による学び
①コア科目 [必修科目]社会システム経営学特論
[選択必修科目]事業創造特論、マーケティング特論、ファイナンス特論、デザイン思考特論、会計学特論、経営組織特論、データリサーチ特論
②応用科目 [自由選択科目]生産管理特論、環境経営特論
[自然科学技術研究科開講科目]基本データツールI、リーダーシップ特論、都市経営論、農業経営特論、地域デザイン特論、基本データツールII、リスクマネジメント特論、プロジェクトマネジメント特論、食料・農業政策特論
[地域科学研究科開講科目]計量経済学特論
[名古屋大学大学院経済学研究科開講科目]人事管理特論
2.実習による学び
①コア実習 [必修科目]社会システム経営学実習
②実務家演習 [選択必修科目]実務家演習I~III
③ビジネス実習 [選択必修科目]ビジネス実習I・II
3.実践による学び
専門演習 [必修科目]専門演習I~IV