岐阜大学の国際交流

留学生から選ばれ、Global Citizenが育つ大学に
岐阜大学は「地域に根ざした国際化」によって「成果の地域還元」を果たすことを目指し、インド工科大学グワハティ校などと協働し多彩な国際交流プログラムを展開、キャンパスの国際化を推進しています。岐阜大学が推進する国際化の方針や特徴を、自身も岐阜大学への留学経験を持つ、リム・リーワ副学長に聞きました。
教育と研究の国際化を2015年から推進
Q.岐阜大学の国際化にどのように関わっておられますか?
私はマレーシア国民大学を卒業した後、シンガポールの企業勤務などを経て2000年に岐阜大学に留学し、工学部の教員になりました。前学長の時代に、岐阜大学として国際化に取り組むこととなり、岐阜大学グローカル推進本部が設置された2015年、全講義を英語で行う大学院工学研究科のプログラム設置に携わりました。後にジョイント・ディグリープログラム(JDP)を設置する際には、母校であるマレーシア国民大学との橋渡し役を買って出ました。今年度からは副学長として、国際展開などを担当しています。
Q.国際交流方針と具体策を教えてください。

岐阜大学が目指す「地域に根ざした国際化」「成果の地域還元」とは、海外留学を経験した学生や外国人留学生が、卒業後に地域で国際的な視点を持って活躍することです。そのために次のような方針の下、教育と研究の国際化を推進しています。
まず、海外大学との協定です。大学間では20カ国50大学、部局間では25カ国1地域の61大学と学術交流協定を結び、岐阜大学と海外協定校の学生向けに交換留学やサマースクールの他、短期の研究留学など多彩な留学プログラムを実施しています。キャンパスの国際化に力を入れ、2015年からは英語表記の案内板を整備してきました。
また、留学生が日本で就職し、地域で活躍できるように、日本のマナーや文化に慣れるためのセミナーを設ける他、日本の企業や研究所での仕事を経験するグローバルインターンシップを必須化。現在、工学部では外国人留学生の4割が、岐阜・愛知県内を中心に日本国内で就職しています。
「学生ファースト」が制度のポイント
Q.岐阜大学ならではの国際交流の特徴は?
岐阜大学の国際交流は、海外協定校との間での国際共同研究をメインにしている点が大きな特徴です。1カ月以上にわたる共同研究を行う外国人研究者の受け入れや、若手を中心とした研究者の海外派遣や招へいのための助成を積極的に行っています。
また、日本に協定校が少ないインド工科大学グワハティ校をはじめ、カナダのアルバータ大学、オーストラリアのグリフィス大学など、世界ランキング上位の大学と一緒に行う共同プログラムも豊富です。
Q.留学する学生へのバックアップ体制は?
学生ファーストの支援を行っています。留学中は一般的に入学した大学と留学先の両方で学費がかかりますが、岐阜大学の学費を免除する制度を設けて負担を軽減し、学生の挑戦を後押ししています。
学生の派遣先選びに当たっては、相手校の教員と交流があり現地のことをよく知るリエゾン(つなぎ役)の教員が学生に合った派遣先を判断しています。私自身も、マレーシアやインドネシアの大学とのリエゾンを担当しています。協定校の中には、学生の行き来が活発でない大学もありますが、リエゾン教員がうまく調整して連携をもっと深めて活用できるようにしたいです。
職員向けには、アルバータ大学に1~2週間赴き、現地の同職種の部署と交流する公募制の海外研修も実施しています。本人の視野が広がる効果もありますが、職員同士の面識ができると、留学生の手続き上のやりとりがスムーズになることが多く、学生のためにもなります。
Global Citizen を目指し継続できる国際交流を
Q.注目すべき新しい取り組みは?

現在の協定校はアジアやインドが中心ですが、博士課程の学生にとって魅力的な研究ができる留学先を増やすため、ヨーロッパの大学との協定にも力を入れており、近年ではフランスのリール大学との交流も活発化しています。
岐阜県との協力による新たな協定も拡大しています。杉原千畝記念館があるリトアニアの大学とはすでに学術交流協定を結んでいましたが、大統領が2019年の岐阜県来訪時に来校されたのをきっかけに、さらなる連携を進めています。 モロッコのラバト国際大学は、大使の来校や岐阜大学学長の現地訪問を機に、2024年7月、エネルギー分野で工学部と、また観光分野で社会システム経営学環と協定を締結。同じ月に、ウズベキスタンのサマルカンド国立医科大学は医学部との友好関係強化に合意しました。今後もこれまで以上に学生ファーストな取り組みの充実を図っていきます。
Q.今後の目標や将来ビジョンは?
短期的な目標としては、留学生の受け入れを増やしたいです。文部科学省はJ-MIRAI※において、2033年までに日本人学生の海外留学者数50万人、外国人留学生の受け入れ数40万人の実現を掲げました。国立大学協会は、2040年までに留学生を全学年の3割に増やす方針を打ち出していますが、岐阜大学の現状は学生数約7,500人中、留学生はアジアを中心に296人と約4%。私の任期である2025年度末までに、短期留学生も含めて7%まで増やしたい考えです。
そのために必要な教職員の意識改革を進めています。若手の教員には、まず自分で現地へ行って知り合った学生を短期留学生として受け入れることから始めて、受け入れるメリットを感じてもらいたいと考えています。最近は「ぜひ留学生を紹介してほしい」と前向きな先生方の声が増え、うれしく思っています。
国際交流によって最終的に目指すことは、海外の留学希望者が「岐阜に行きたい」と選び、卒業後も岐阜に定着してくれること。また岐阜大学生には英語に限定せず、自分が抵抗なく学べる外国語を見つけて習得し、Global Citizen、つまり「地球人」になってほしいと願っています。
※J-MIRAI:未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ