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酒学:日本酒 酒造りを実践的に学ぶ清酒醸造実習

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令和元年に「清酒醸造実習」を開講した岐阜県食品科学研究所と岐阜大学。その目的や手応えについて担当者にインタビューしました。

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清酒醸造実習とは?

毎年10月から12月にかけて、ほぼ毎日行われる実習を通じて集中的に「酒造り」について学んでいくプログラムです。原材料である酒米から日本酒をつくり、最終的に瓶詰めをして製品として完成させるところまで、ひと通りの製造工程を全て体験してもらうのがコンセプト。 多彩な実習を通じて、学部で普段学んでいる発酵や微生物などの知識が、どのように現場で生かされているのかを理解できます。基本的な流れを学んだ後は、学生が自ら判断して発酵を管理し、毎日のように味を見ながらおいしい日本酒へと仕上げていきます。
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岐阜県食品科学研究所で酒造りの全工程を実体験

 岐阜大学では、平成31年にキャンパス内に岐阜県食品科学研究所が移転することに伴い、岐阜県と一緒に学生を育成するプログラムを立ち上げられないかと考え、令和5年10月から「地域食品産業実習」という名称の授業を始めることを決めました。ただ、単位に認定される授業を始めるにはさまざまな手続きが必要です。せっかく研究所が移転してきたにもかかわらず、しばらくは授業を行うことができない。であれば、単位を認定することはできないものの、岐阜県と連携して学生を育てる実習が何かできないかと考え、岐阜県次世代企業技術者育成事業の一環として「清酒醸造実習」を行うことを決めました。
 令和元年から始まった清酒醸造実習は今年で5回目となりました。受け入れられる人数にはどうしても限りがあるため、最大10名程度という定員を設けています。応用生物科学部応用生命科学課程の3年生を対象に募集を行っていますが、毎年のように定員を超える応募があり、実際に実習を受けた学生たちからも非常に好評です。
 単位が取得できないにもかかわらず、主体的に学びたいと集まってきている学生ばかりですから、10月~12月にかけて毎日のように行われる実習にも意欲的に参加してくれています。なかには、実家がみそ造りを行っている醸造メーカーで、「基本的な知識を身に付けたい」と熱心に学んでくれている学生もいたりします。将来、酒造メーカーにでも就職しない限り、おそらく酒造りに関わる機会は一生に一度もないでしょう。そんな貴重な体験がキャンパス内でできるという点もこの実習を受ける大きな魅力の一つだと思います。

酒造りの面白さに目覚め日本酒業界を志す学生も

 酒造りは「職人の勘でつくるもの」という印象を持っている人も多いかもしれません。実際には、緻密なデータ管理がなされ、安定した品質を保つためにさまざまな技術が用いられています。実習でも毎日、成分分析を行い、酒蔵と同様に発酵を管理します。データを基に発酵を制御し、目標とする品質の日本酒をつくる。そんな日本酒造りの面白さを感じてもらえます。また、発酵が進むにつれて味が変化し、徐々に日本酒になっていく様子を官能的に体感できるのもこの実習の特色です。酒造りを通じて、実践的な醸造について学びを深めていける良い機会だと思います。また、食品づくりに欠かせない官能評価に取り組む機会も設けており、食品業界で活躍するうえで生かせるさまざまな知識を身に付けることができます。
 この清酒醸造実習で酒造りの面白さに目覚め、実際に日本酒業界を志す学生も登場し、企業の面接で「清酒醸造実習を受けました」と話したところ、最終的に大手酒造メーカーから内定を獲得できたという学生も出てきています。今後も若い世代の人たちに日本酒の魅力を伝え、醸造に興味を持ってもらう契機の一つとして継続していければと思います。