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パンと岐大と

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02.png 岐阜大学教育学部 家政教育講座
柴田 奈緒美 准教授


東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 応用生命科学専攻修了、海洋科学博士。平成26年、本学に着任し、「食品学概論」「家庭科教育法Ⅱ」 などの授業を担当。「理論だけでなく実物に触れることも大切」と、家庭ではパンを作る機会も多い。愛娘のリクエストは、チョコチップ入りのカメやジンベイザメの形のパン。食パンにクリームチーズを塗ってこんがり焼き、ハチミツをかけてブラックペッパーを合わせるレシピが最近のマイブーム。

なぜその方法で調理するかを明らかにする調理工学が専門

 パンが膨らむにはグルテンが必要。グルテンは小麦粉に水を加え、沢山こねることで形成されます。また、グルテンを作るためには小麦粉特有のタンパク質が必要になるため、これらが多く含まれる強力粉を使うなど、パン作りは材料から調理法などさまざまな理論から成り立ちます。また、米を炊く温度やハンバーグの火加減なども同様に根拠があります。私が専門とする「調理工学」は、「なぜその方法で調理するのか?」を科学的に検証し、理論化・数式化する学問分野です。
 教育学部の調理実習でも、こうした原理を説明しながら行っています。原理を知っていれば、学生が教員になったとき、子どもたちに説明できます。そして何より、子どもたちが原理を学べば、家庭で料理をするときにも、「この料理はこの方法で調理しよう」と考え、取り組むことができるようになります。

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パン粉以外でもいいのでは?その疑問から始まった研究

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 岐阜大学教育学部に着任して小学校を訪問するようになり、給食が食べられずお弁当を持参する子どもが何人もいることを知りました。もともと私が食品を学び始めた動機は、高校時代にそういう子どもたちをテレビで見たこと。当時の思いがよみがえり、私の専門分野でどうアプローチしようかと考えるうち、「なぜその食品でなくてはいけないのだろう?」という考えが浮かびました。代用品があれば、アレルギーがない人にとっても選択肢が広がるはず。そんな研究がしたいと考え給食の揚げ物に 注目していたところ、一緒に研究を進めていた岐阜女子大学家政学部の大場君枝助教が、パン粉代わりに、ある程度乾燥させたおからを提案してくれました。
 大場先生はレシピ開発や栄養価計算が専門。私はおからの水分含有量や粒子サイズごとの、食感や色、食物繊維量、保存性について分析し、データ化することで専門知識がない人でも用途や好みに合ったものを選択できるためのマップを作成しています。
 おから製パン粉は揚げると小麦粉のパン粉よりも香ばしく、食物繊維やタンパク質も豊富。少々はがれやすく、油を10%多く吸うことが課題ですが、衣をくっつけるバッター液の調製や、揚げずにオーブンで焼くなどの工夫で解決できると思っています。
 豆腐メーカーからは、「大量に出るおからを何とかしたい」との相談も。市販の乾燥おからはサラサラのパウダーですが、そこまで乾燥させず粒子サイズも大きいおから製パン粉なら、少ない設備投資で製造でき、SDGsにもつながります。研究者として、社会の問題を解決する研究を成し遂げることが大きな目標。老人ホームなど大量調理の場や、家庭で使用してもらえる日を思い描き、商品化してくれるメーカーが現れてくれることを熱望しています。小麦粉のパン粉を否定するわけではなく、おか ら製パン粉がスーパーの棚に並び、「今日はこっちを使おうかな」と、消費者の選択肢を増やせたらうれしいですね。

おから製パン粉の開発による食物アレルギー対応と健康づくりへの貢献

現在の課題

①学校給食における食物アレルギー対応
・約930万人の児童が給食を喫食
・揚物は小麦粉パン粉を使用することが多いため、小麦アレルギーのある児童は揚物を食べられない
②おからの大量廃棄
・国内で豆腐を製造する際に年間約70万tのおからが排出され、その大半が産業廃棄物として処理されている
・おからはタンパク質や食物繊維が豊富
・おからを乾燥させるには多額の設備投資が必要

パン粉の代わりに
おからを使用

・小麦アレルギーのある児童が揚物を食べられるようにする
05.png ・栄養豊富なおからを楽しむ人を増やすとともにフードロスを削減
・個人の嗜好に合わせて、パン粉を選べるようにする

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