大学案内

岐阜大学発ベンチャーと起業家育成

ベンチャー企業や人材が次々と生まれ地域経済を活性化していく循環を
岐阜大学発信で構築していきたい。

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教員や学生が研究成果を活かし,自ら起業できる仕組みを作る。

 岐阜大学は令和2年度から、東海 国立大学機構のミッションの実現に向け、今後取り組んでいく研究・産学官連携の基本方針とアクティブプランについて取りまとめた「地域展開ビジョン2030」を掲げています。このビジョンの中のプロジェクトの一つとして動き始めているのが、「東海スタートアップエコシステムの構築」です。
 このプロジェクトでは、起業家精神を持つ人材の育成、世界最高水準の知を活かした大学発ベンチャーの創出を行い、地域創生に貢献することを目標としています。そこで、学術研究・産学官連携推進本部のガバナンスの下、大学発ベンチャーの創設・成長に向けた支援体制を充実させ、大学発ベンチャー設立数を増やし、その発展と規模拡大を加速させていく計画です。これにより、新たな価値を創造し、東海地域経済の活性化および新産業の創出、そして東海スタートアップエコシステムの構築に寄与していきたいと考えています。
 岐阜大学の教員は、すでにさまざまな社会課題をテーマに研究を行い、その研究から得られた成果を活かし、課題解決に向けた取り組みを進めています。しかし、従来の研究スタイルでは、民間の企業や研究機関と共同してプロジェクトを進め、最終的に社会実装するのは外部の企業という流れになりがちです。これも一つの形だと思いますが、それとは別にもっと大きなプロジェクト、社会生活を根本から変えるようなイノベーティブな事業を展開しようとする時、もう一つの選択肢として、研究をしてきた教員あるいは学生が自身の成果を活かして起業するというスタイルが増えていくべきだろうと考えています。そこで、東海スタートアップエコシステムでは、研究シーズを持ち、そこから起業する人たちを幅広く応援する仕組みを作るのと同時に、ベンチャーを立ち上げようという起業マインドを持つ人材を育成し、東海地域経済を活性化する起業家が生まれるサイクルを構築したいと考えています。

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ベンチャーの認定制度を創設。大学独自の資金支援事業も

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 5年ほど前には、名古屋大学を中心とした東海地区の5大学が連携し、「Tongaliプロジェクト」という起業家育成プロジェクトを立ち上げました。東海地区は、全国的に見てもベンチャーマインドが決して高い地域ではありません。製造業などが盛んで、起業を志す人が少ないと言われますが、最近では「Tongaliプロジェクト」に関心を持つ学生が増え、大学内でベンチャーを立ち上げようという教員や学生が増えてきました。そして実際、独自の研究成果を活かした有望なベンチャー企業が相次ぎ誕生するようになったことから、令和元年に大学発のベンチャー認定制度を立ち上げました。
 現在、この制度に認定されたベンチャー企業は6社あります。認定企業は、学内のオープンスペースや共用設備が学内料金で利用できるほか、企業や自治体、地域金融機関、ベンチャーキャピタルなどとの連携仲介、大学を通じた広報活動、知財関連の相談対応など、手厚い支援を受けられるのが特徴です。企業を運営するなかで生じる課題に対し、きめ細かなサポートを行っています。
 また令和2年には、さまざまなアイデアを形にする創造の場として、最新の工作機械や3Dプリンター、CAD/CAMなどを揃えた工場を整備し、認定企業に開放しています。試作品などを作りたい場合にも、スピーディーに形にできる設備が整っており、これは全国的にもあまり例がないと思います。
 ベンチャーを設立する前の支援にもさまざまなものがあります。その一つが、令和2年に実施した岐阜大学独自のGAPファンド資金支援事業「東海スタートアップエコシステム構築に向けた起業支援事業」です。この支援事業に、東海国立大学機構の岐阜大学・名古屋大学の両大学から25件の応募があり、最終的に10件が採択されましたが、そのうち3件が大学生からの応募でした。現在、採択されたすべての案件でベンチャー創設に向けた取り組みを推進していますが、惜しくも採択に漏れた案件についても、起業マインドを大切にしながら継続的なサポートを展開しています。
 岐阜大学では、ベンチャー設立のマインド醸成の段階から、会社設立時に直面する課題などに至るまで、プロジェクトを推進する上原先生が全面的にバックアップしてくださるのも特長です。フェーズごとに担当者が変われば、その都度一から説明しなければなりません。同じ担当者がずっと伴走し続けてくれるというのは、起業家にとって非常に心強いはずです。
 このほかにも、岐阜地域の経営支援機関や金融機関、他大学などと連携し、外部専門家との個別面談を設定するほか、学外研修への参加支援、外部ファンドへの公募支援など、東海地域のリソースを活用した手厚い支援を展開しています。また、十六銀行のグループ会社である投資会社「NOBUNAGAキャピタルビレッジ」からも、大学発ベンチャーに対してコワーキングスペースを提供していただいています。

 東海スタートアップエコシステムとは 

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社会的インパクトのある企業を岐阜大学から生み出したい。

 今後の展望としては、同じ建屋に20~30社ほどのベンチャーが集まり、朝には互いにコーヒーを飲みながら気軽に情報交換できるような場を作り上げたいと考えています。建物の一角でベンチャーの皆さんが勉強し、日常的に交流が生まれる。金融機関の方にも入居してもらうといいかもしれません。この場所に行けば、学生にとっても先輩起業家と気軽に会話できる絶好の機会になり、ベンチャー教育に役立つことは間違いありません。こんな場所ができれば、今まで以上に起業マインドが盛り上がっていくのではないかと期待しています。
 現在はスペースの問題もあり、ベンチャー企業の皆さんが学内に分散しており、その動きがなかなか見えてきません。ベンチャーを立ち上げた皆さんは、一人ひとりが非常にエネルギッシュで、そんな人たちが一か所に集まれば、そこが核になって周囲にいる人たちも熱を帯びていくはず。自分も頑張ってみたいという学生も増えてくると思います。
 ベンチャー企業を軌道に乗せるまでには、さまざまな苦労があります。最初の数年間は、問題を抱えて苦しむこともあるでしょう。でも、同じように産みの苦しみを味わいながら頑張る起業家に相談することができれば、精神面でも救われる部分が多いと思います。
 大学発ベンチャーに認定された企業は6社(取材時点)ありますが、厳しい審査をくぐり抜けた企業ばかりです。岐阜大学で獲得した知財や知識をベースにしていることが条件ですが、それ以外にも「将来の発展性」を外部の専門家の意見も交えて厳しく見ています。ぜひこの6社にはさらなる成長を遂げてほしいですし、将来的には上場を果たし、社会課題の解決につながるインパクトの大きい岐阜大学発ベンチャーとして花開くことを期待しています。

 岐阜大学発認定ベンチャーの紹介
 株式会社フォトニック・エッジ   株式会社Lukosルコス  GRC株式会社 
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創業者
久武 信太郎

岐阜大学発認定ベンチャー第1号。 第5世代移動通信システム「5G」や自動運転に必要な車載レーダで用いられる「高周波数電磁波」を可視化・計測する技術を有し、製品開発などに取り組んでいる。

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代表取締役
朝日 翔太

東海地方の製造業をメインターゲットとするITソリューション企業。画像・映像解析、波形解析処理、AI技術など社員が研究室で培った技術を駆使し、企業が抱える問題の解決を目指す。
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代表取締役
澤田 政久

岐阜大学医学部附属病院放射線科の知的財産を生かし、医療関連製品の開発、医療従事者への技術指導や遠隔画像診断支援等を行うことで、医療の質向上に貢献し、適切な診療をサポートする。
 株式会社e-NA Biotecイーエヌエイバイオテック  株式会社ゼノバイオティック   株式会社GFジーエフMilleミレ
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代表取締役
北出 幸夫

代表の北出幸夫氏が岐阜大学在職中に得た成果をもとに、世界初のマイクロRNA医薬の上市を目指して設立。特許が成立したmiRNA-143は、がん治療の可能性を広げる革新的な医薬候補。
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代表取締役
澤田 敏彦

岐阜大学地域科学部の研究グループが開発した、化合物の毒性試験結果予測ソフトウェア「xenoBiotic」を開発し、その実用化のために設立。
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代表取締役
茶野 徳宏

岐阜大学で生まれた核酸化学、糖鎖化学のノウハウ、特許を生かして創薬に挑戦。カナダの創薬ベンチャーSolstar Pharma社と連携して商品を開発するとともに、北米市場の開拓を図る。

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大学発ベンチャーの認定は新興企業にとって大きなサポート

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岐阜大学発 認定ベンチャー
株式会社GF・Mille 科学顧問
岐阜大学応用生物科学部
上野 義仁 教授

 株式会社GF・Milleは、岐阜大学で生まれた核酸化学、糖鎖化学の技術やノウハウ、特許を活かした創薬開発を進めるベンチャー企業です。
 生物の遺伝情報は、ゲノムDNAの中に保存されています。その情報はメッセンジャーRNAに託され、そこから数万種類ものタンパク質 が合成されます。これらのDNAやRNAは、従来「核酸」と呼ばれ、遺伝情報の運び屋として研究されてきました。しかし近年は、この核酸自身が、新しいタイプの医薬品として活用されるようになり、低分子医薬や抗体医薬に続く「次世代型医薬品」として注目を集めています。
 当社では、医薬品として優れた配列のRNAを選抜し、化学修飾を加えて合成することで、副作用の少ないRNA医薬の完成を目指して 挑戦を続けています。私が研究を進めてきた技術を活用し、ブレーキのような役割を果たすsiRNAを生成。マウスに投与したところ、卵巣がんの増殖を抑え、腹水貯留を阻止する優れた能力を持つことが明らかになっています。
 令和2年2月には、カナダのSolstar社との共同研究契約を締結。同年秋には、共同作業による最初の医薬品候補として抗コロナ「siRNA-3XX」の特許をカナダ特許庁で申請しました。また、令和3年7月には日本医療研究開発機構(AMED)の事業に採択され、抗がん剤の開発を目指した新たな研究も始まっています。
 大学発ベンチャーの認定を受けたことは、学外での信用を得るという点で非常に大きいものがありました。今後のさらなる投資も 呼び込みやすく、学内の設備を幅広く利用できるところもメリットです。今後も岐阜大学の支援をうまく活用しながら、数年後には 上場を果たし、将来的には核酸医薬創薬の世界標準として広く認知されるとともに、BioNTech社、Moderna社のような成長を実現さ せたいと思います。

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