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生涯でかかるお金は?若いうちからマネープランを考える「人生設計ゲーム」を開発。

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将来お金に困らないために,金融教育は小学校から学ぶべき

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 幼少期からお金に関心があった私は,現在は生活経済学・家庭経済学を専門とし,教育学部で家庭科教員の養成に当たる一方,金融教育について研究しています。

 日本では昔から,お金の話は「人前でするもんじゃない」「子どもが心配するな」などと敬遠されてきました。ところがリーマンショック後,海外の動きを追うように,国内でも消費者教育,中でも金融教育の重要性が注目され始めました。現在,お金に関する教育は,小中学校では家庭科,高校では家庭科と公民科で行われ,高校の家庭科で初めて生活設計を学びます。私はそれでは遅いと考えています。少子高齢化や単独世帯の増加,長寿化に伴うライフサイクルの変化を踏まえると,お金に困らず一生を送るためには,小学生のうちから生活設計の教育が必要です。「将来結婚したい」「こんな職業に就きたい」といった夢をすでに持っている年齢ですから,早すぎるということはありません。

 そこで平成19年にゼミ生と開発し,改良を重ねて完成したのが,小学校高学年からを対象とした教材「人生設計ゲーム」です。20代から寿命まで,10年ごとに結婚や出産など自分が望むライフイベントを選び,発生したお金の収支を計算。さらに,事故や相続といった突発的なライフイベントのカードも無作為に引きます。このように現実に起きる出来事を盛り込み,リアルに人生やお金について考えることを目的としています。

人生設計ゲームとは?

「人生の最後までお金が足りるか?」をゲーム感覚でシミュレーションする教材。20代から10年ごとに区切られたボードに従って,一人で考えて進める。各年代の初めに,結婚や仕事の有無を選択し,その後10年間のクルマや住宅の購入,子どもの進学,旅行といったライフイベントを,別表から自由に選ぶ。また,不意の事故や火災,相続などが発生する「選択不可能なライフイベント」カードもランダムに引く。その結果を年代ごとに収支計算して軌道修正しながら進めていき,最終的な残金を算出。金額によって,「ギリギリ人生」「熟慮人生」など5タイプに診断され,自分のお金に対する考え方の課題に気づくことができる。


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金融についての意識を高めつつ,人間発達を伸ばすことが目的

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 一人で考えて進める,見た目も地味な人生設計ゲームですが,子どもたちは説明を待たずに始めるほど積極的に取り組みます。休み時間に「何歳で結婚した?」「家買った?」と盛り上がる光景も。ゲームの事前・事後に行ったアンケート結果の比較では,多くの子がゲームによって将来を具体的にイメージできたことが明らかになりました。例えば「将来お金に困らないようにしたい」という漠然とした内容が,事後には「無駄遣いをしなければ,これだけ貯まると分かった」などと変化しました。お金の大切さに気づいたことで,「家事を手伝いたい」など親への感謝や思いやりから出る言葉も見られました。

 この教材の目的は「お金についての意識を高めること」でしたが,人間発達を促進する力,つまり,人生を自ら切り拓いていく力がつくことも分かりました。人間発達とは,①現実把握=「面白かった」などの感想,②価値の内面化=「お母さんは節約を頑張っているな」などの気づき,③自己創造=「私はこうしよう」などの工夫,という段階をたどります。アンケートの回答からは人間発達の段階が着実に進んだことを示す結果が多く見受けられました。また,さらにアンケート結果を分析すると,ニュースや雑誌などから情報を得るなどの情報収集力が高い人ほど人間発達に必要な②=価値の内面化と,③=自己創造の段階へと進みやすいという傾向も表れました。金融に限らずすべての教育において,まず情報収集力を伸ばすことが,何より重要だといえるでしょう。

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 人生設計ゲームは岐阜県の教育現場で評価され,現在までに,岐阜県内を中心に小学生から大学生1,000人以上を対象に実施してきました。岐阜市ではこれを基に作った「ライフプランニングゲーム」が全中学校で実施されました。昨年には,老後を計画する「エンディングプランニングゲーム」も開発。本学の授業のほか,今後定年を迎える40~50代の会社員向けの研修などで活用されています。これらの活動に対して,平成30年には金融庁と日本銀行から金融知識普及功労者表彰をいただきました。

 人生設計ゲームが岐阜をはじめ今や他県でも評判となったのは,金融教育という新たな分野の教え方に悩む現場の先生方に応える教材となったから。そして我々自身が楽しんで開発し,子どもたちにも楽しんでもらえる教材となったからだと思います。教育には,FREEDOM(考え方の自由度),FRESHNESS(情報の新鮮さ),FUN(ちょっとした面白さ)の「3Fエフ」が大切です。今後も,3Fを忘れずに,地域の教育の発展に取り組みたいと思います。



ゲーム前後の「現実把握力」と「人間発達」

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人生設計ゲームの効果

ゲームの事前・事後に「現実把握力」を見るアンケートを行い、ゲームの効果を分析したところ、事前でかなり現実的なことを書いている子どもは少ないが、事後には現実的な記述が増加。「現実把握力」が高くなることが証明された。さらに、事前からかなり現実的なことを書いている生徒は「自己創造」が57ポイント増加。この結果から教育によって現実把握ができるようになった子どもは「自己創造」=「人間発達」が進むと裏付けられた。

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