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岐阜県家畜保健衛生所と強力タッグ。
全国初となる共同施設を開設し、 畜産を救う新たなモデルの構築へ。

岐阜大学応用生物科学部附属家畜衛生地域連携教育研究センター(GeFAH)

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学生に産業動物獣医師への理解を深めてもらう場を提供。

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 私がセンター長を務める岐阜大学応用生物科学部附属家畜衛生地域連携教育研究センター(GeFAH:ジーファ)は,平成27年4月に設立されました。
 岐阜県と連携し,「家畜衛生の教育」,「家畜疾病等の学術研究」,「家畜の防疫・保健衛生対策」の3つを推進するのが目的です。その後,平成29年6月には,岐阜大学のキャンパス内に岐阜県中央家畜保健衛生所・高度病性鑑定センターが移転。この建物の3階にGeFAHの実験室,研究室,解析室が設けられ,岐阜県とのさらなる連携強化が図られました。ちなみに,同じ建物内に家畜保健衛生所と大学の研究室が同居し,積極的に連携を図るというのは全国初の試みです。

 岐阜県との連携には,「教育」と「研究」の2つの側面があります。教育面では,岐阜県と連携した講義や体験型実習を行っています。以前から県の方に獣医関連法規の集中講義をお願いしていましたが,センター開設後は連携をさらに発展させ,家畜衛生インターンシップ実習も開講し,家畜保健衛生所で,より実践的な体験実習を受けられるようになりました。通常の獣医学教育では,現場に行く機会はかなり限られています。そんな中,自分たちの学びがどう社会に役立っているのかを実感できる実習は,非常に有意義だと感じています。
 また,学内の農場にある鶏舎を使い,岐阜県と一緒に高病原性鳥インフルエンザ発生時の防疫演習を行っていますが,こちらにも学生たちに参加してもらっています。

 さらに今後は,家畜保健衛生所に持ち込まれた病気の家畜の解剖を,学生たちに見学してもらう予定です。こうした機会を得られるのも,キャンパス内に家畜保健衛生所が設置されているからこそ。貴重な経験を通じて,学生が産業動物臨床や家畜衛生への理解や関心を高め,近頃特に問題視されている産業動物獣医師や公務員獣医師の不足を少しでも解消していければと考えています。

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農家とより強く繋がりが持て,学生の学習意欲向上にも寄与。

04.jpg  研究面においても,家畜保健衛生所と密に連携しており,今後は共同研究を通じて家畜衛生のレベルを向上させ,地域の畜産業に貢献していきたいと思っています。
 具体的には,薬剤耐性菌や豚抗酸菌症,トキソプラズマ症に関する研究などを進めています。私が担当しているのは牛白血病ウイルスの研究です。近年,白血病を発症する牛が増加傾向にあり,各地で問題となっています。白血病が見つかれば,その牛は殺処分しないといけません。畜産農家は牛が販売できないだけでなく,殺処分の費用を負担しなくてはならない。最近は子牛の価格も高騰しており,農家にとっては非常に大きな痛手です。また,白血病の検査には採血が必要で,頭数の多い大規模農家は頻繁に検査することは困難です。そこで私は,搾乳したミルクで検査ができないかと研究を進めており,将来的にはミルクに限らず,唾液や尿からでも検査ができるようにするのが目標です。

 こうした研究を進めるには,地域の畜産農家の協力が欠かせません。しかし,協力してくれる農家を探そうにも,研究者にはそのネットワークがありません。そんな時に頼りになるのが,家畜保健衛生所です。協力的な農家を紹介してもらい,現場の課題をお聞きすることは研究に取り組むモチベーションにもなりますし,同行する学生たちにも良い刺激になっているようです。
 このほか,家畜保健衛生所と共同で家畜衛生技術検討会を開催しており,具体的な症例に対して密に情報交換ができる点も連携の大きなメリットの一つだと思います。

 今後は岐阜県との連携をさらに深めていきたいです。そして,全国から「岐阜モデル」と呼ばれるような家畜衛生教育・研究のモデルを構築し,その成果を広く示していければと思います。さらに将来的には,東海,中部へと連携の輪を広げ,全国の獣医系大学による家畜衛生教育研究拠点を結ぶ広範なネットワークを構築するのが目標です。

05.jpg 平成29年に岐阜大学のキャンパス内に移転した岐阜県中央家畜保健衛生所。GeFAHは岐阜大学の窓口となり、応用生物科学部共同獣医学科、大学院連合獣医学研究科に、体験型実習や家畜衛生技術検討会など、実践的な教育・研究の機会を提供している。

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物理的な距離が縮まり連携もより強固に。
岐阜大学と一緒に畜産業を盛り上げたい。

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岐阜県中央家畜保健衛生所
小林 弘明 企画・連携係長

 岐阜大学の敷地内に施設を移転する前は,大垣市と岐阜市に施設が分かれ,大学から遠い場所にありましたが,今は2つの施設が統合され,大学も徒歩で行ける距離になりました。物理的な距離が縮まったことで,すでに何度も先生方のもとを訪れて相談や情報交換を行えているなど,目に見えて良い効果が出ています。行政だけで高度な技術を担保するのは難しいため,ぜひとも先生方が持つ専門的な知識・技能を現場に活かしていきたいと思います。
 国内の人口減少が進んでいく中,どの産業でも何もせず手をこまねいていれば,厳しい状況に陥りかねないのは明らかです。私たちは畜産業に携わる者として,おいしく安全な食肉を提供し続ける責務がありますが,安全を守るには不断の努力が必要であり,家畜衛生の担い手育成も急務です。今後も畜産現場が抱える課題と向き合いながら,岐阜大学との連携をさらに深め,畜産業を一緒に盛り上げていきたいと思います。

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