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外国にルーツを持つ児童が授業に必要な日本語を遊びながら学べる、「いみあわせかあど」を開発。

※掲載内容(役職名,学年など)は取材時のものです。(現在と内容が異なる場合があります。)

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教師が話す言葉を理解するためのカード型教材を制作。

 岐阜県は、外国にルーツを持ち日本語指導を必要とする児童・生徒が多くいる地域です。教育実習を終えたゼミ生との会話から、そのような子どもが授業に参加するための支援の必要性を知りました。さっそく同じ問題意識を持つ教育学部の教員で研究グループを作り調査を開始。実態を調査すると、学校生活や日常生活に必要な日本語を学ぶ教材はあっても、授業の理解や授業に参加しやすくするための教材は十分ではない現状が見えてきました。
02.png  私が専門とする教育工学では、「教育・学習活動をより良くする方法」を、現状を調査したうえで検討し、それを実践と評価・分析を繰り返して完成させていきます。そのため、教育工学研究として日本語指導が必要な子どもが授業に参加するための支援ができるのではないかと考えました。
 まず取り組んだのは、授業を行う先生となる教育学部の学生向けに日本語指導の必要な児童・生徒のための教育プログラムを開発しました。同時期に、小学校の先生でもある大学院生の福島貴子さんが修士研究として、日本語指導が必要な児童のための教材開発に着手しました。教師が話していることを推測できれば授業に参加しやすくなるという仮説をもとに、どんな教材にするかを、調査を繰り返しながら考えていきました。そして、日本語指導が必要な児童の多くは、親が学習をバックアップできる環境にないため、一人でも手軽に使えるカードゲーム式の教材を開発することにしました。教材で学ぶ言葉は「動詞」に着目しました。「窓を開ける」「席を空ける」など、同じ音で異なる意味を持ち、授業で使われる動詞をチョイス。楽しく学べるよう、トランプの神経衰弱のように、同じ意味の動詞が使われているカードを見つける「いみあわせ」にたどり着きました。
 こうして生まれた「いみあわせかあど」のプロトタイプ評価を依頼した市の教育委員会を訪れると、「こんな教材を待っていた!」と快諾。対象となる児童に2週間使ってもらった結果、児童の日本語の理解度がわずかながら上昇。終了後のアンケートでも高評価をいただき、使い込まれてボロボロになったカードを見て、ニーズを確信しました。
 その後、クラウドファンディングで資金を募り、協力校にはお礼として完成品を配布。さらに教材会社からの申し出を受け、製品化が実現しました。今後は福島さんが中心となり、「いみあわせかあど」の第2弾の開発を進める予定です。

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04.png 開発者のコメント
福島 貴子さん

私が校長を務めていた小学校に、日本語が分からないために授業に参加できない子どもがいました。クラスに「いるだけ」になりがちな子どもに少しでも友達と学ぶ楽しさを感じてほしい。そんな思いから、今井先生のご指導の下で学習支援教材開発の方途について学び、教材を開発しました。

◎「いみあわせかあど」で学ぶ言葉は、一つの「読み」に対して
 二つの「意味」を持つ15個の動詞、計60枚
◎プレイ人数:1人〜 ◎対象年齢:小学校低学年〜
◎難易度のレベルを★印の数で表示

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学ぶ楽しさを、子どもたちや教員となる学生たちに伝えたい!

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船来山古墳群スケルトン教材

 私は技術の教員を目指して岐阜大学に入学し、折りたたみ机の設計と製作、歯車の設計などを夢中になって行いました。もっと学びを深めたいと修士課程へ進み、旅先のエジプトで出会った現地国立大学の教員との議論などを通じて、「学校と大学の懸け橋となる仕事に就きたい」と研究者の道へ。岐阜大学赴任後は現職教師向けのインターネット型大学院の立ち上げ(現代GP)に携わり、終了後は複数の教科で使用できる教材の開発や学習環境の構築に取り組んでいます。近年は、岐阜市と本巣市の境にある、船来山古墳群をテーマとするふるさと学習の教材を開発。鳥ちょうかんず瞰図を印刷したクリアファイルに、古墳がプロットされたワークシートを挟む簡単な仕掛けの教材です。展示パネルをただ見るのとは違い、子どもたち自身でワークシートを挟むという操作をすることで、「こんなに古墳があるんだ!」と実感できるツールになっています。

 「学びの面白さをたくさんの人に味わってもらいたい」が私のモットーです。学ぶことは、ゲームより何よりも面白い。そのことをどう伝えるか。一つの答えが「いみあわせかあど」。子どもたちが「この言葉知ってる!」と、その先の学びを楽しむきっかけになればと思っています。また、教育学部の学生には、自分自身が学びの面白さを知り、子どもたちに伝えられる人になってほしいですね。教育学部も教育現場も多彩な教科の専門家が集まっているため、コラボレーションすることで、一人ではできないことも実現できる可能性に満ちた場です。その魅力を学生に伝えられるよう、私自身が研究をもっと楽しみたいと思います。

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