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馬の持つ力を引き出せるように、深い信頼関係を築き、ゴールを見つめて走り抜けたい。

 朝日が注ぎ込む厩舎に、馬に語りかけるような優しい眼差しを向けながら毛並みの手入れをする岡部恭佳さんの姿がありました。地区予選で優勝し、今秋行われた「全日本学生馬術大会2024」へ出場した、馬術競技の実力者です。
 厩舎全焼から5年。再スタートを切った岐阜大学馬術部の馬場には、今日も馬たちの足音が心地よく響いています。

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岐阜大学 馬術部
1940年創立の歴史ある馬術部。現在は部員25人、馬6頭と犬1匹で活動する。
平日は火曜以外の毎日、土日はコーチ(馬術部OB)を迎えて、馬に乗って歩いたり走ったりする騎乗練習や障害飛越競技で障害物を飛び越えるための訓練などを重ねている。練習だけでなく馬の世話や体調管理、餌やりは、毎日欠かせない大切な活動である。馬とのコミュニケーションも楽しいひとときとなっている。
活動時間帯は主に早朝で、特に夏は5時ごろに集まり、日差しが強くなる前に活動を終える。
障害飛越競技とは
08.png 馬術競技の一種で、馬と騎手が一緒にさまざまな障害物を飛び越える競技のこと。「障害馬術」とも呼ばれる。
障害飛越競技は、競技アリーナに設置されたさまざまな障害物を決められた順番どおりに飛越して走行し、そのスピードと正確さを競う。
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演技の正確さや美しさを競う「馬場馬術競技」。3種類の歩き方
を基本に、さまざまなステップを踏んだり、図形を描いたりする。
障害の高さや難易度によってA級、L級、M級、S級(学生大会では30~130㎝)、そして国際レベルのG級(150㎝以上)まで、さまざまな級(クラス)がある。
馬術競技は、動物とともに行う唯一のオリンピック競技で、馬場馬術、障害馬術、総合馬術の3種目が実施される。

馬の能力と選手の技術、そのコンビネーションがそろったとき、最大限に力を発揮できるところが魅力。

馬に乗ったときの気持ちよさ、楽しさが忘れられず、馬術部へ。

05.png 幼いころから動物が大好きで獣医師に憧れていました。獣医は狭き門ですが、絶対に岐阜大学で勉強したいと思い入学を決めました。馬術部を知ったのは入学後。体験入部で、初めて馬に乗せてもらいました。馬の背中はとても大きく、想像以上に楽しくて、「自分で乗って、走ってみたい」と思い入部しました。
 私たちが練習している「障害飛越競技」は、馬に乗って障害を飛び越えて走り、その速さを競う競技です。日常的に騎乗し、基本姿勢やバランス、障害物を飛び越えるときの踏み込みやスピードコントロールなど、馬と一緒に訓練を重ねています。入部当初は落馬を恐れていた時期もありましたが、練習を重ねて自分に自信がつき馬たちとの信頼関係が深まってくると、お互いに最大限の力を発揮できるようになりました。馬はとても賢くて敏感で繊細。私たちの緊張や不安な気持ちがダイレクトに伝わってしまいます。馬が私のことを認めてくれて、心が通じ合えたと実感できる瞬間が、馬術競技の大きな醍醐味です。日々の馬の世話やコミュニケーションも部活動の一番大きな柱。馬たちが持つ本来の力が発揮できるよう、日頃から馬と触れ合いながら、馬も人も、みんなでチーム一丸となって頑張っています。


犠牲になった4頭のことを次世代へ伝え続けていきたい。

06.png 今、馬術部には6頭の馬がいます。個性豊かで乗り心地も違う馬たちから、たくさんのことを学ぶ日々です。私が4年生になってからペアを組んでいる「シリウス」は、JRAで競技一筋だったアスリート。誰よりも経験豊富な大ベテランです。今年の地区予選で一位通過し、全国大会に出場できたのも、シリウスのおかげ。大先輩のシリウスに助けてもらってばかりですが、私ももっと実力をつけて、シリウスにふさわしい騎手になることが目標です。

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馬たちの体調管理やコミュニケーションが何よりも大切。毎朝、練習のため
に集まる以外に、昼・夕・夜の餌やりも部員らが交代制で担当。練習のない
日も馬の体をほぐすために引いて歩いたり、暑い日は体を冷やしたりして、
体調管理を行う。

 2020年に発生した火災で馬術部厩舎が全焼、馬4頭が犠牲になりました。火災後、たくさんの方にご支援をいただきました。私たちはその記憶を風化させず、感謝の気持ちも教訓も後輩たちにずっと伝え続けていかなければと思っています。馬房に元気な馬がいてくれて、ここで馬術を学べる環境は当たり前ではなく、たくさんの方々の支えによって成り立っていることを忘れず、馬も人も互いに思いやる気持ちを大切に活動していきたいです。



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今年「第59回中部学生自馬競技会大会」のM級C障害(120㎝クラス)にて岡部さんが第1位の成績を収め、秋に行われた全国大会「全日本学生馬 術大会2024」に出場した。
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厩舎全焼を乗り越えて
2020年6月23日の午前2時半ごろ火災が発生、馬術部の厩舎が全焼した。馬房で眠っていた馬4頭全てが犠牲となった。クラウドファンディングをはじめ、たくさんの方の支援により、火災から1年9カ月後の2022年3月に新厩舎が完成。広々としていて風通しの良い、馬にとっても人にとっても快適な活動場所が誕生し、岐阜大学馬術部はここから新たなスタートを切った。
厩舎の隣には慰霊碑があり、火災で亡くなった4頭がここに眠る。