「全ての人が多様性を認め合い安心して過ごせる社会を目指して、今自分ができることをやりたいです。」
地域科学部でジャーナリズムを専攻する加藤みのりさん。外出時のトイレなどで悩む重度心身障害を持つ方の話を聞いたことから、仲間とユニバーサルシートがある場所をまとめたマップを制作。ユニバーサルシートの普及に尽力するとともに、所属するゼミではドキュメンタリー映像の制作に取り組んでいます。


ゆにぃんくる
令和5年7月に発足したボランティア団体。加藤さんをはじめ、11名の学生が所属。誰もが気軽に外出できる社会を目指して、ユニバーサルシートの普及活動などを行っている。「岐阜地区・西濃地区 ユニバーサルシート設置施設リストマップ」は、令和5年度岐阜大学学生支援プロジェクトに採択され、令和6年1月に完成。岐阜市役所や岐阜県福祉友愛アリーナなどに冊子版が設置されているほか、WEBサイトからPDF版、WEB版が利用可能。
ユニバーサルシートの認知度はかなり低い。
まずは、その存在を多くの人に知ってもらえたら。
旺盛な好奇心の赴く先は、ジャーナリズムの世界でした。
高校生の頃、ジャーナリズムに興味があり、放送部に所属していました。地域科学部に進学したのは、報道の世界に明るい野原仁教授から専門的なことを学ぶため。また、特定の領域に特化せず、さまざまな学問を学べる環境は、好奇心の対象が移ろいやすい自分には合っていると思ったからです。
入学後、当初考えていたように幅広い領域の学問にふれられたことは良い経験でした。そして、2年生後期になって晴れて野原ゼミの一員に。現在は「インクルーシブ*1」に関する映像制作に取り組んでいます。私自身が骨形成不全症で、5歳から車いすで生活していますが、学生の頃からインクルーシブ教育、障がいの有無に関わらず一緒に学校生活を送る教育を受けてきました。しかし、私のインクルーシブ教育は周囲の理解が乏しく、つらい思い出となっています。そんな時、親子とも私と同じ病気ながらインクルーシブの中で楽しく前向きに生活する家族の存在を知り、その日常を映像化することで、インクルーシブ教育の在り方、そして、障がいの有無で人生の幸福度が決まるわけではないことを発信したいと思いました。
※1 インクルーシブ:「包摂的」「一体感」という意味で、男女、年齢、国籍、障害の有無など問わず、誰もが一緒にいられること、そういった社会を目指す言葉。

各所で配布活動を行う加藤さん。
ボランティア活動こそ、学生だからできることだと思う。
昨夏に学生ボランティア団体「ゆにぃんくる」を立ち上げ、ユニバーサルシートの普及や認知の向上に取り組んでいます。この活動を始めたきっかけは、一般的なトイレの利用が難しい重度心身障害を持つ方やそのご家族がお手洗いで悩んでいると話を聞いたからです。そこで、仲間たちとユニバーサルシートがある場所をまとめたマップを作ることに。設置個所の実地調査は大変でしたが、県庁や福祉施設などで配布したところ、感謝の言葉をいただいて本当にうれしかったです。また、私の思いに共感して手伝ってくれた仲間には本当に感謝しています。
卒業後は、どのような道に進むのか、選択肢がある分迷っています。ただ、家族や仲間のおかげで、小さい頃に考えていた「大きくなったら幸せになりたい」という願いは叶えられました。今、選択肢があるのも周りの支え、制度のおかげです。選択肢で悩めることに幸せを感じつつ、これからは、「多くの人が生き生きと生きられること」に貢献したいと思っています。そのために、いろんなことにチャレンジして自分ができることを模索しながら、人生の設計図を描いていきたいです。
ユニバーサルシートとは?
多目的トイレなどに設置される介助用大型ベッド。乳幼児などのおむつ交換のために設置するベビーシートとは異なり、大人も横になれる大きさ。車椅子などから乗り移りやすい高さに設置されるのが特徴。障害のある方のおむつ交換や衣服の着脱など幅広い用途で利用できる。身体が不自由な方などのニーズがあるが、設置費用が高額などの理由で普及が進んでいないことが社会問題となっている。写真は「道の駅 パレットおおの(揖斐郡大野町)」内に設置されたユニバーサルシート。