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ツキノワグマの生態調査を通して,野生動物と人との共存を目指したい。

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実際に山や森林に分け入ってツキノワグマの生態を調査する
「ツキノワグマ研究会」の代表を務める原田和輝さん。
定期的に現地調査を行ったり,他大学との調査結果報告会に参加したりと,仲間との連携を図りながら本格的な活動を展開する。
「人と野生動物との共存」という大きな目標を掲げ,ツキノワグマに対する正しい知識を広めたいと日々,調査や研究に励んでいる。

岐阜大学ツキノワグマ研究会

平成元年に前身となる「岐阜大学ツキノワグマ研究グループ」が結成され,大野郡白川村を拠点に平成7年まで活動を行う。その後一旦は活動休止となるが,平成11年に「岐阜大学ツキノワグマ研究会」と改名し,調査地を本巣市の根尾谷に移して活動を再開した。現在は約30名のメンバーが交代制で調査地へと定期的に足を運び,ツキノワグマの足跡や糞などの痕跡を探す。その調査結果を分析・記録し,過去のデータと照らし合わせながら,ツキノワグマの生態や生息環境などを考察。毎週火曜日の定例会で調査報告を行い,メンバー全員で情報を共有して研究を進めている。


実際に山に入り,道なき道を行く調査は大変ですが,
仲間とともに楽しみながら研究を進めています。

毎年4月末頃には、大野郡白川村で調査を行う。双眼鏡を使い、反
対側の山にいるクマを探し、その様子を観察する。また、下呂市の
岐阜大学位山(くらいやま)演習林で自動カメラによる定点観測も
実施。「実際にクマが映ると感動する」と原田さん。

山でクマの痕跡を調査し,
農作物や林業被害対策を考察。

 私は野生動物の生態に興味があり,この研究会に入りました。毎週末に参加可能なメンバーで調査地へ出掛け,定例会ではその報告を行ったり,次回の調査計画を練ったりしています。
 調査場所は,本巣市の根尾谷や福井県との県境に広がる大川原の国有林など。春先から夏には山の緑が生い茂り,道なき道を行くので,全員が地図とコンパスを必ず持って山に入ります。地図といっても地形図しかないので,常にGPSで位置を確かめながら進みます。


主な活動内容

1. 生息環境調査
 調査地へ定期的に出向いて、山の中を散策しながらどんな植物が生えているかを調べたり、クマの痕跡(糞・食痕・足跡など)を探したりします。

2. 食性調査
 調査地で採集した糞の内容物を調べて、クマがその時季に何を食べているかを分析します。

3. クマ剥ぎ調査
 クマが樹木の皮を剥ぐ「クマ剥ぎ」という林業被害の痕跡を探索し、被害が起こる条件やその対策について考察します。

 調査では主に,クマの糞を探します。見つけた糞は持ち帰り,木の実や樹皮,昆虫など,内容物を種類ごとに分別し,それぞれの重さを測ります。そういった記録を蓄積することは,実はとても大切なことです。クマがどの時季にどんな食物を利用しているかを知ることで,食物が不足するのはいつか,また,クマにとって食物がどの程度重要なものかを知ることができ,その情報がクマによる農林被害や人里への出没を抑える手がかりになることを期待しています。
 また同時に,クマが樹木の皮を剥ぐ「クマ剥ぎ」の調査も実施。その痕跡がある樹木の種類や場所などを分析し,クマ剥ぎが起こりやすい条件が分かれば,林業被害の軽減につながる効果的な対策考案の一助になるのではないかと考えています。


クマに対する正しい知識を
もっと広めていきたい。

 昨年,5つの大学の学生が東京農工大学に集まってクマに関する報告会を行いました。特にヒグマを研究する北海道大学や酪農学園大学の調査活動は規模が大きく,体力はもちろん,地図を読む技術や緻密な報告書など,どれも見習うところばかりでした。自分たちもさらに本格的な活動ができるように努力していきたいです。

 ツキノワグマは人に被害を与える害獣だと思われることが多いですが,実は,木の実や植物を主食とし,人を襲うことはほとんどありません。遭遇しても刺激しない限り,ツキノワグマの方から逃げていきます。こうしたクマに関する正しい知識をもっと広めて,野生動物と人が共生できる環境づくりを目指したい。この先の将来も,野生動物の調査研究に関わっていくことが私の夢です。


顧問を務める淺野玄准教授は,
「物静かな印象ですが,責任感が強く,みんなをまとめている。山での調査もみんなを気遣いながら進めるので,信頼も厚い」と原田さんを高く評価する。
「岐阜県はクマが多い自然豊かな場所。メンバーにはクマの生態調査を通して,自然の厳しさや素晴らしさを知ってほしいですね」。

岐阜大学応用生物科学部共同獣医学科
野生動物医学研究室
淺野 玄 准教授



調査隊長として原田さんを支える砥綿さん。
「実際にフィールドに出て調査することが楽しいです。他大学の調査に参加させていただいた経験を生かして,もっ と本格的な調査ができる体制づくりを頑張りたいです」。

岐阜大学応用生物科学部
生産環境科学課程3年
砥綿(とわた) 夕里花 さん


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