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「患者さんの話を真摯に聞くことの大切さを,山の診療活動で強く実感。」

奥穂高岳夏山診療所で2年にわたって学生代表の大班長を務めた永瀬裕一朗さん。
もともと登山が好きだったことが動機で参加した4回の診療活動を通して,
患者さんの表情を見て,話を聞くことの重要性を再確認した。
将来は診察から治療まで,一貫して患者さんに寄り添える医師を目指す。


山上ならではの朝日、夕日、満天の星空。感動的な景色を後輩たちにも見せたい。

診療所から絶景を望む。「1年目に見た
夕日の景色は今でも印象に残っています」
と永瀬さん。

診療所の生活は山時間。日の出とともに一 日が始まる。

 夏山診療所への参加は2年生からで, 今年で4回目になります。
 もともと父の影響で登山が好きだったので,参加の動機は山に登れるということが大きかったですね。それと患者さんの話を真摯に聞ける医師を目指していた中で, 普段は触れ合う機会の少ない患者さんと関われる点も魅力でした。診療所での学生の役割は問診や体温,血圧などの測定です。ところが1年目は患者さんが来なかったため, 翌年も参加しようと決めたところ, 大班長に任命されました。

コンロに置いた熱々の平たい石の上で肉や
野菜を焼いて食べる"石焼"は診療所の
名物料理。

 大班長の仕事は参加者の募集に始まり,班の編成,食事に必要な調味料や備品の購入,さらに診療所が所有する登山道具の修理や買い替えなどです。先輩からは「こんな感じでやればいいよ」と大まかな伝達を受けましたが, 実際に作業を始めてみると内容が膨大で(笑)。
岩稜に立つ穂高岳山荘。夏山診療所は,山荘の一角にあ
る冬季避難小屋を無償提供してもらい,利用している。
日本で一番高い場所にある診療所。
何とか一人でこなしましたが,今年は参加人数が多くなったこともあり,大班長を2人に増やしてマニュアルを作って引き継ぎました。うまく運営してくれたので,正確に伝えられたと感じています。

 診療所の一 日は日の出とともに始まります。患者さんが来るのは午後以降なので,午前中の多くは周辺の山に出掛けます。診療所から1時間ほどで着く奥穂高岳山頂では,班員全員での記念撮影が恒例行事。食事は3食とも自分たちで作るので,班の結束にも繋がります。


患者さんの話を聞くことが,今の自分の大きなテーマ。

診療所では,体温や血圧などの患者のバ
イタルチェックは主に学生が担当。その
中のひとつ,脈拍数と血中酸素濃度を計
測するためにはパルスオキシメーターを
使う。

 患者さんの約7割は高山病です。下界の病院では高山病の方を診察することはないので,良い経験になります。また,山では電気が十分に使えず検査ができないので,目で見て,手で触ってという身体診察が基本です。先生方がどのように 考えて対処されているかを間近で見られることは,本当に勉強になります。山での診療活動を通して患者さんの声に耳を傾け,何をしてほしいのかを正確に把握して対応できる医師になる,という考えが強まりました。現時点ではまだ専門を絞れていませんが,診察から治療まで一貫して行える診療科へ の関心が強いです。

 来年の参加はまだ未定ですが,これまでの経験を後輩に伝えたいですし,山でしか味わえない感動的な景色を見るためにまた登りたくなるかもしれません。

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岐阜大学医学部 奥穂高岳夏山診療所

奥穂高岳山頂直下,海抜約3,000mの雲上にある岐阜大学医学部の診療所。周辺で発生した心身トラブルへの対処を目的に,岐阜県立医科大学時代の昭和33年7月に開設。穂高岳山荘創始者で名ガイドだった故今田重太郎氏の冬季避難小屋を利用している。平成7年の改築を経て,北アルプス随一の広さを誇る診療施設になった。開設期間は7月20日頃から8月20日頃までで,診療班は医師2人,看護師1人,学生4人からなり,全7~8班が4日間交替で診療活動を行う。平成26年で57回目を数え,岐阜大学の重要な社会貢献事業の一つになっている。

夏山診療所の一日

(クリックすると拡大します)


平成25年度 診療記録

1班から順に記入する診療所日記は
製本して参加者全員に渡される。

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