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自律滑空機をゼロから企画・設計・製作して飛ばす。名大と連携した、全国でも類を見ない科目。

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東海国立大学機構 航空宇宙研究教育拠点 航空宇宙生産技術開発センター
航空宇宙生産技術(機械工学概論Ⅱ)


【対象学生】:工学部全学科(選択科目)   【履修期間】:4年次前期(全15回)

自律滑空機(グライダー)の企画から設計・製作・飛行・性能評価までを行い、ものづくりの現場で必要とされる総論的視点を養う授業。東海国立大学機構航空宇宙研究教育拠点 航空宇宙生産技術開発センターが学部生・大学院生向けに提供する人材育成プログラム「航空宇宙生産技術科目群」の一つとして、令和2年度より開講。令和3年度には、機械工学科を中心に35名が履修。

 自律滑空機とは、動力を持たず、ゴムで初速を与えて飛ばす滑空機に、飛行を安定化する制御機能を持たせたものです。「航空宇宙生産技術(機械工学概論Ⅱ)」では、学生が4~5名のグループに分かれ、限られた時間の中で1台の自律滑空機をゼロから企画・設計・製作し、飛ばすことで評価します。
 飛行距離を狙うのか、滞空時間を追求するのか、それとも機体が上下を繰り返すような変わった飛び方をさせるのか、目標設定は自由です。独自の発想で面白い機体が出てくることを期待しています。
 目標設定ができたら、それに沿って主翼や尾翼、空気抵抗を考えた機体頭部の形状をCADで設計。専門機関の研究成果などから着想を得たオリジナルのアイデアを加えたり、部品に穴を開けて軽量化したりといった工夫を盛り込みます。製作は、3Dプリンターやレーザーカッターなどを用いて行い、設計した制御系を機体に搭載します。風洞実験などを経て、最終的には学内発表会にて実際に機体を飛ばし、滑空の様子を飛行距離・滞空時間・飛行姿勢などで評価します。
 また、名古屋大学の同様の授業を受けた学生たちと自律滑空機の性能を競う「東海クライマックスシリーズ」も開催しました。他に類を見ない県をまたいだ連携は、東海国立大学機構だからこそ実現したもの。学生には交流を深めながらも競争心を持ち、刺激を得てほしいと思っています。
 学生たちは、授業で材料・機械・熱・流体の「4力学」や制御工学など、各分野の専門知識を深く学んでいますが、実際のものづくりは多分野の知識を組み合わせなければできません。そのために必要な俯瞰的な視点を得ることが授業の目的です。一般的な実験科目が教科書の理論を決まった手順通りに確かめる授業なのに対して、この授業には正解がなく、チームワークが必要となる点も実社会でのものづくりと同じです。
 ものづくりの苦労や大切さ、楽しさを味わえるこの授業が学生にとって進路選びの一助となり、社会で羽ばたくきっかけになればと願っています。
   ※風洞実験...空気の流れをつくる風洞設備のなかに機体を設置し、飛行の状態を確認し改善するための実験

授業の流れ

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グループで話し合って機体の構想を練る。サイズや使える材料の制約内で、どう飛ばしたいかに応じて、主翼や尾翼、頭部、胴体の形状や材質などを決定。 主翼面積や尾翼容積、重心位置などを計算式から導き出して、詳細な形状や寸法を決定していき、3D CADで設計図を描く。制御アルゴリズムも設計。 レーザーカッターで板をカットし、3Dプリンターで立体的なパーツを成形。機体を組み上 げ制御プログラムを搭載したら、風洞試験を行って動作を確認。 学内発表会や名古屋大学との飛行競技会で実際に飛ばす。成績評価は、飛行距離や滞空時 間、飛行時の姿勢のほか、企画~製作の計画やプロセスも加味する。

飛行発表会

05.jpg 06.jpg 発表会の概要
授業の集大成として行われるのが、全2回の発表の機会。令和3年7月16日に岐阜メモリアルセンター(ふれ愛ドーム)で実施された学内発表会は、完成した機体を発射台から飛ばして想定通り飛ぶかを確かめ、自分たちの企画・設計における仮説が正しかったかを検証。その後9月29日には、名古屋大学で同様の授業を受けた学生のチームと競う「東海クライマックスシリーズ」が初開催された(令和2年度はコロナ禍により中止)。

東海国立大学機構 航空宇宙研究教育拠点
航空宇宙生産技術開発センターとは

機構直轄拠点の1つである航空宇宙研究教育拠点の下、令和2年に設置された、国内初の航空宇宙生産技術に関する教育・研究機関。岐阜県の主要産業の一つでもある航空機産業だが、1機あたり数百万点にのぼる航空機部品の生産は、自動車部品と 違って多品種小ロットのため、自動化が困難。アジア諸国の参入により競争が激化する中、日本の航空機産業が今後も持続的に発展するためには、「いいものを安くつくる」生産技術の開発が急務となっている。そのためセンターでは、企業と共同して生産技術の研究開発をAIやIoTなどの「サイバー分野」と、高度加工技術や自律ロボットなどの「フィジカル分野」の両面から行う。また、東海国立大学機構として岐阜大学が持つ航空宇宙生産技術と名古屋大学が持つ航空宇宙設計技術の互いの強みを活かした教育・研究、地域企業との連携を行っている。

学生インタビュー

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岐阜大学工学部
機械工学科知能機械コース
4年 天藤てんどう 翔保 かほ さん

 グライダーやドローンを飛ばす経験はなかなかできるものではないと思い、この授業を履修しました。所属する班では、知能機械コースでソフトウェアについて学んできた経験を生かして、グライダーの制御を担当。IMU(慣性計測ユニット)を使って軸センターの傾きをモーターで補正し、飛行時の挙動を安定させるプログラムを組んでいます。なかなか思い通りにいかないことも多いですが、上手く飛んだ時の達成感は格別です。

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