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地域の健康問題を分析し、生活の質を高める解決策を実行する力を身に付ける。

岐阜大学医学部看護学科「地域における健康問題と援助」

岐阜大学医学部看護学科
地域における健康問題と援助


【対象学生】医学部看護学科4年生  【開講学期】前期

地域社会を基盤とする保健師の活動について理解を深めることを目的に平成16年に開講。保健師を目指す学生を対象とした公衆衛生看護実習と並行して行わることが特徴です。演習や実習を通して,地域住民の健康やQOL(Qualituy of life)の向上を目指した活動の展開方法を実践的に学びます。演習は2〜3人ごとのグループに分かれて行われ,実習先地域の地域特性を事前に明らかにした上で,現地踏査を実施。実習を通して資料から分かる顕在的な問題だけでなく潜在的な問題を見出します。グループで協力し,健康問題の解決策を計画立案することで,論理的な思考力や対象地域の特徴や文化的背景を理解する力,状況に応じた看護活動を実践する専門的な能力を養います。

教員インタビュー

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岐阜大学医学部看護学科
田中 健太郎 助教(左)

岐阜大学医学部看護学科
石原 多佳子 教授(中右)

岐阜大学医学部看護学科
纐纈 朋弥 准教授(中左)

岐阜大学医学部看護学科
小林 和成 准教授(右)


 「地域における健康問題と援助」の授業が始まったのは,保健師の現場で,地域の特徴に応じて仕事を進めることが求められているためです。例えば,岐阜県においても岐阜市と郡上市では,気候や高齢者の割合,生活習慣も異なり,各地域に応じた保健活動が必要です。現場の実務をこなすだけでなく,各地域で表面化している健康問題がなぜ起きているか,その背景を理解した上で対策を講じることが求められているのです。
05.jpg  この科目は別名"地域診断"と呼ばれています。学生は,文字通り地域そのものを診断し,課題を見つける力をつけるため,まずはコミュニティ・アズ・パートナーモデルを学びます。その後は,モデル理論に沿って実習先の地域についてリサーチをするのですが,闇雲に資料を探すのではなく,効率よく有効なデータを集めることが重要です。「地域アセスメント(地域診断)シート」という様式を用い,行政のWEBサイトの情報などから,対象地域の住民特性や環境特性,実施されている保健・福祉事業をまとめます。その後,学生自身が現地踏査の計画を立案。実際に住民がどのような暮らしをしているか知るためにバスで街を回ったり,健康づくりへの意識を聞き取りしたりして,統計には表れない情報を集めます。

06.jpg  地区踏査が完了したら,グループ内でディスカッションして現地踏査の結果をフィードバック。対象地域の健康課題や特徴を書き出し,スライドや模造紙にまとめます。ここでもモデル理論に沿って,現在実施されている保健・福祉事業と調査結果を関連づけながら,健康問題の解決策を提案します。学生の発表内容は年々レベルアップしており,今年度に特に印象に残っているのは,歯磨きの習慣が定着していない人が多い地域で,大人だけでなく子どもに対しても学校や地域の保健センターと連携して生活改善指導をするプランでした。長期的な視点に立って,子どもの頃に良い習慣を身に付けさせて,地域全体の健康水準を将来的に高くするというアイデアは,とても興味をひかれるものでした。

 地域診断を始めて15年近く経ち,卒業生から「地域診断や公衆衛生看護実習は保健師の現任研修と内容が近く,授業が役に立った」との声を聞くことが増え,手応えを感じています。学生には,座学と並行して実習を行ったり,現地での地区踏査を行ったりすることで,現場の保健師に近い視点や考え方を実践的に理解し,卒業後の仕事にぜひ生かしてもらいたいと考えています。

授業の流れ

01:事前リサーチ

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3人一組のグループで、実習先地域の人口や面積などの統計を幅広く集める。また、他の地域とデータを比較し、現地踏査をする地域の特徴を事前に把握する。


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02:地区踏査

実習先地域で2日間地区踏査を行う。現地を歩いて回り、住民や関係者に聞き取りを実施。事前リサーチで不足していた情報を集め、疑問点を明確にする。


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03:ディスカッション

地区踏査によって浮かび上がった健康課題をまとめ、学内でグループ発表を行う。他のグループや先生からアドバイスを受け、取り組み内容をブラッシュアップさせる。


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04:プレゼンテーション

保健センターの職員など学外関係者を交えた学内発表会を実施。健康課題に対する現状の地域保健活動と改善案をまとめ、グループごとに発表する。


公衆衛生看護学実習とは?

地域社会の中での保健師の役割を現場で学ぶ

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学生が高齢者を対象とした健康教育(神戸町)に参加しました

 保健師を目指す医学部看護学科4年生を対象とする実習。学生は岐阜県内の保健所(岐阜保健所,飛騨保健所,岐阜市保健所)や市町保健センター(岐阜市,山県市,神戸町,郡上市)のいずれかと事業所(ブリヂストン関工場)にて5週間実習を行います。
 実習を通して,地域社会における保健所や保健センターなどの役割を学び,保健師が各組織の中で果たす役割の理解を深めます。また,地域コミュニティの関係機関と協力して地域保健の計画を立案したり,組織的な管理体制やシステムを構築したりするなど,チームワークによって地域の健康問題を解決する基礎的な力を身に付けます。

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学生インタビュー

地域の健康課題を解決するには強みを
踏まえた提案が大事だとわかりました。

岐阜大学医学部看護学科4年
牧野 奏 さん

地区踏査では服部さんと郡上市に行きました。地区踏査の結果,脳血管疾患が多い地域だとわかり,これを健康課題としました。脳血管疾患の主な原因は,食や運動などの習慣です。そこで,郡上市は3世代世帯が多く,地域住民のつながりが強いという特徴に着目。乳幼児期から生活習慣を見直す生活指導を行い,家族や地域ぐるみで健康づくりをする提案をしたところ,先生や保健師の方から良い評価をいただけました。課題というと短所に目が行きがちですが,就職後もその地域の長所にフォーカスして保健活動を行っていきたいと思います。


地域の特性を活かし住民の皆さんの
健康を支えていきたいです。

岐阜大学医学部看護学科4年
服部 香菜 さん

私が実習した郡上市は,山に囲まれた寒冷地。平均気温が低く,昔から保存食である塩分の多い食べ物を摂る人が多いことがわかりました。そこで,塩分チェックシートを活用することを提案。定期的にチェックシートを使った生活習慣診断を行い,塩分摂取量を客観的な視点から見直すことで,食生活の改善につながると考えました。卒業後は保健師になりたいと思っていますので,地域診断で学んだモデル理論や分析手法を生かし,勤務する地域の特徴を把握した上で,住民の皆さんの健康をより良くしていきたいです。

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