「産学ツーリズム」で 地元企業の魅力を再発見。
岐阜大学では,学長や理事ら大学執行部が地元企業を訪問し, 企業の魅力を認識する「産学ツーリズム」を行っています。 工場見学や企業トップらと情報交換を行い相互理解に尽力。 また共同研究や産官学連携なども行いながら,岐阜の産業界 とともに発展することを目的とした活動を行っています。
産官学連携推進本部
岐阜大学と産業界や公的機関との架け橋を務める部署。セミナーや展示会などの産官学交流をはじめ,産官学連携のためのマッチング支援,企業との共同研究などを促進。地域企業や生活基盤の活性化に貢献するために,地域を支える企業活動の現状を把握し,理解を深める産学ツーリズムも実施している。
産学ツーリズムとは?
産学ツーリズムは森脇久隆学長をはじめ,理事,副学長などの大学執行部が先端的な技術をもつ県内の企業を訪問し,企業トップを交えて,見学や情報交換を行う活動です。岐阜中心部,西濃地域,東濃地域など,県内を5地域に分割して一地域ずつ訪問。さらに自動車関連企業,100年以上の歴史のある企業など各回でテーマを変えて企業を選定しています。自動車関連企業訪問の際は岐阜大学出身者が中心となって自社の技術開発などを話す姿に,産官学連携推進本部長の王志剛副学長は「大学でしっかりと知識を身に付けていれば,社会で活躍できることを実感しました」と改めて大学教育の重要性をも考えるいい機会になったと話します。
この取り組みの最大の目的は,岐阜県の産業活動実勢の把握です。さらに産業がどのように地域住民の生活に関わっているのか,また国際的に発展していくために企業とどのような連携を取ればいいのか,理解を深めることです。「昨今,産業界の情勢の変化は加速しています。それを肌感覚で知り,地域貢献の方法を産業界レベルで考えることが重要」と王副学長。企業トップから具体的な要望を提案してもらうことも相互理解に繋がっています。訪問後は執行部で反省会を行い,研究や就職支援などへの活用も論議。地域との強い連携を生みだす産学ツーリズムは今後も継続的に実施していく予定です。
参加企業インタビュー
明治18年創業。豊富な埋蔵量と高品質を誇る大垣市赤坂町で採掘する石灰石を利用し,石灰の安定供給はもちろん,石灰をベース とした新材料及びナノ無機材料の開発を行っている。製鉄,建材,化学,環境対策,土木建築,IT,食品などさまざまな産業に貢献。
研究や産学ツーリズムを通じて
さらに岐阜大学との連携を深めたい
当社には昔から岐阜大学の卒業生が多く入社していることに加え,工学部の「無機材料」が専門である櫻田修教授の研究室とは新材料において共同研究を行うなど,深い関わりがあります。そのためお互いのことを知り,連携を深めることが重要だと考えています。
この大垣市赤坂町周辺の地域は日本有数の石灰の産地。またその質も世界有数であることから創業より石灰をベースに事業を展開しております。石灰は製鉄にはもちろん,化学や建材,農業などの基礎材料には必要不可欠です。その存在は地味ではありますが,人々の生活に欠かせないものであり,一同誇りを持って仕事に取り組んでいます。また昨今はパソコンやスマホの樹脂基板の耐熱性を高めるための,微細なアルミナ系化合物「ベーマイト」などの新材料やナノ材料開発に取り組んでおり,最先端の機器を取り入れた高度な研究環境で若い研究者たちが熱心に研究を行っています。こうしたことを産学ツーリズムを通して地元の大学に理解していただくことは大変喜ばしいことだと思います。
採用においても岐阜大学の卒業生は我慢強く取り組む方が多いため,学んだことを生かし,責任を持って研究や仕事に取り組める人材を今後も積極的に採用したいです。学生さんにも地元企業に目を向けてもらうことで,岐阜大学,当社ともに技術力向上へと繋がることを期待しています。
参加企業に務めるOBインタビュー
地元企業ならではの魅力と
母校との繋がりの重要さを実感
岐阜大学大学院工学研究科修了後,大企業に勤めていましたが,製品の開発から販売,ものづくりまで一貫して関わってみたいと思い転職を決意。大学時代の恩師と繋がりがあったこの会社に入社しました。石灰は鉄を製造するための重要な材料の一部であり,当社生産量の約7割を鉄鋼メーカーに納めています。日本経済を支えてきた鉄の副原料を生産する事業に誇りを感じると同時に,研究をはじめ,中小企業だからこそ携わることができる業務など,会社の重要な仕事に従事できることにやりがいと魅力があります。
入社後は3年目で開発部門に配属。世界でもメーカーの少ないアルミナ系化合物であるベーマイトの製品開発に携わりました。当初は石灰とベーマイトを掛け合わせた新材料の研究が目的でしたが,ベーマイトだけでも価値があることが分かり,製品開発を開始。製品化まで一貫して関わることができたことを嬉しく思います。現在は岐阜大学と新材料開発の共同研究を行っていますが,母校なので相談がしやすく,またとても心強いです。
産学ツーリズムを受け入れることのメリットは,大学トップの方々や学生さんに当社を知ってもらえたこと。石灰会社の幅広い可能性を認知していただけたことで,連携や共同研究がより深まり,これから就職を考える学生さんにも魅力を感じてもらえたのではないかと思います。
プラスチックを燃えにくくする材料。耐熱性が高く約400℃まで脱水が起こらない特長をもつ。河合石灰工業株式会社では平成14年に製品化。世界でも製造するのは数社の企業のみ。
産学ツーリズム参加企業・自治体等実績(開催日順)
自然科学研究機構 核融合科学研究所(大学共同利用機関法人)/㈱TYK(製造:耐火物製品供給)/太平洋工業㈱(製造:部品・製品供給)/大垣精工㈱(製造:金型・ 部品供給)/東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設(研究施設)/岐阜大学流域圏科学研究センター 高山試験地(研究施設)/イビデン㈱大垣北事業場(製 造:電子関連製品・セラミックス製品供給)/横山ダム/徳山ダム/セイノーホールディングス㈱(流通:運送業)/アピ㈱池田工場・長良川リサーチセンター(食品: 蜂産品・食品製造)/トヨタ博物館/㈱豊田中央研究所(自動車関連技術開発施設)/大白川国有林/応用生物科学部附属位山演習林/岐阜車体工業㈱(製造:部品 供給・組立)/メイラ㈱(製造:部品供給)/河合石灰工業㈱(製造:石灰加工製品供給)/㈱ナベヤ(製造:鋳物・精密治具製造)/美濃工業㈱(製造:部品供給) /㈱トキワ(製造:化粧品開発)/㈱サラダコスモ(食品:農産物製造・販売)