令和8年度岐阜大学大学院入学式 学長告辞
新入生の皆さん。入学おめでとうございます。
春爛漫の今日の良き日に、岐阜大学に入学された学部生1,356名、大学院700名の皆さんに、心よりお祝い申し上げます。新しく岐阜大学の一員となられた新入生の皆さんを、全学を代表して心から歓迎いたします。
皆さんは、コロナ禍という未曽有の状況の中で大学生活をスタートさせ、その困難を乗り越えてこられました。さらに地球温暖化や国際紛争の勃発など、世界的、歴史的な逆境に直面する中で、レジリエンスを身につけ、その経験を糧として、大学院進学という高い志を貫かれました。その努力と挑戦に、心から敬意を表します。
また、これまで皆さんを支えてこられたご家族、指導教員をはじめとする関係者の皆様に対しましても、深く感謝と敬意を表します。
岐阜大学では、新たに社会システム経営学院を設置するとともに、本学を基幹校とする2つの連合大学院、1つの共同大学院を含め、9つの研究科を有しています。大学院教育の機能強化を目的として、修士課程である自然科学技術研究科を創設し、工学と応用生物科学を融合するとともに、デザイン思考教育を付加価値とする教育課程を整備しました。本研究科は、岐阜大学の大学院教育において中核を成す存在の一つです。
さらに、教職大学院、共同獣医学研究科、連合教職大学院博士課程を含め、大学院教育の特色ある強化が着実に進んでいます。
連合大学院のうち、本日は、岐阜薬科大学と構成する連合創薬医療情報研究科に入学された皆さんと、教職大学院入学の社会人学生の皆さんが出席されています。また本日は、同研究科の構成大学である岐阜薬科大学長の原 英彰先生にもお祝いにお越しいただいております。誠にありがとうございます。
本年度も、大学院と学部の2部構成で入学式を挙行いたします。
この数年間、社会はかつてない速さで変化してきました。生成AIの急速な普及、気候変動問題の深刻化、国際情勢の不安定化など、いずれも私たちの生活や将来に大きく影響を及ぼす重要な課題です。
本学は、東海国立大学機構が掲げる「Make New Standards for the Public」というミッションを共有し、「学び、究め、貢献する」という理念のもと、「地域共創、特色ある研究、イノベーション、教育を戦略的に推進し、地域と人類の課題解決に貢献する『地域活性化の中核拠点』となる」ことをビジョンとして掲げ、着実に歩みを進めてまいりました。
多様な人材が、所属する組織を越えて協働し、新たな知を創出するとともに、その成果を社会的価値として顕在化させていく―――この好循環の実現こそが、私たちの目指すところです。
その成果として、Times Higher Educationが実施する、「世界大学ランキング」において、本学は2019年以降、大きく順位を伸ばしてまいりました。また、成果に基づく運営費交付金の配分においてもトップレベルの評価を受けています。教育・研究・社会貢献の各分野において本学の取り組みは高く評価されており、これらは、本学の教育・研究環境が着実に発展していることの証でもあります。
東海国立大学機構の発足以降、教育・人材育成の分野では、学部学生の共通教育として、数理・データサイエンス・AI教育や英語教育を、名古屋大学と連携し、単位互換制度や連携開設科目として展開することが可能となりました。さらに、博士課程の学生を対象とした生活費・研究費の支援や授業料免除が開始されたことは、大きな成果の一つです。
加えて、学生自らが目標を立てた上で、達成状況を自己評価できる「学生ステータスシステム」の運用を開始するなど、教育成果、学修成果の可視化に関する先進的な取り組みも進めています。
教育面においては、教育学部における教員養成改革、社会システム経営学院の新設、工学部における情報系人材育成の強化、応用生物科学部の改組などを進め、次世代を担う人材育成に向けて大きな前進を遂げてまいりました。
研究面では、糖鎖生命科学分野における国際的に高い評価を受ける成果をはじめ、医学・薬学・獣医学が連携するOne Medicine研究の進展、航空宇宙分野における産学連携コンソーシアムの形成、さらには水素エネルギーやCO₂リサイクルなど、環境・エネルギー分野における国家プロジェクトの採択など、地球規模の課題解決に貢献する研究が着実に成果を上げています。
地域連携の面においても、地域連携推進本部の設置や「経営者の会」の発足、岐阜県との連携強化などを通じて、大学と地域社会が共に未来を創るための基盤が着実に整いつつあります。
また、岐阜大学には、多くの外国人留学生や研究者が集い、日々キャンパス生活を送っています。本学が学術交流協定を締結している大学は、欧米からアジア、オセアニアに至るまで51大学に及び、海外での研修を支援する制度も整備されています。さらに、協定校であるインド工科大学グワハティ校(IITG)およびマレーシア国民大学(UKM)とは、ジョイント・ディグリープログラムとして、4つの国際連携専攻を開設しています。
これからの日本社会には、より一層のグローバル化が求められています。そのためには、一方的ではなく、双方向の交流が不可欠です。岐阜大学を足場として、ぜひ積極的に世界へと視野を広げ、グローバルな経験を積んでいただきたいと願っています。
さらに、東海環状自動車道の岐阜インターチェンジが開通したことにより、地域の交通利便性は大幅に向上しました。これを契機として、黒野地区は、学術・研究拠点、さらにはライフサイエンスやものづくりの拠点として、地域社会全体の発展に大きく寄与するものと確信しております。
現在、本学は「共創型社会実装大学」という新たな大学モデルへの挑戦を進めています。多様な分野を横断し、社会課題の解決と新たな価値創出を目指すこの取り組みにおいて、皆さんは、その変革期をともに歩み、大学の新しい姿を共に形づくっていただく、極めて重要な存在です。
皆さんは、これまでの大学生活において、多くの学びに挑戦し、課題解決に向けて、恩師や仲間と議論を重ねながら、専門性を磨いてこられました。
その過程で培われた「学び続ける力」、「変化に柔軟に向き合う姿勢」、そして「多様な価値観を尊重する態度」は、社会が急速に変化する現代において、これまで以上に重要な意味を持つものです。これからは大学院生として、自らの未来を、恐れることなく選び取り続けてほしいと願っています。
これから大学院生として本学で学ぶ皆さんに、ぜひ心に深く刻んでいただきたい言葉があります。
それは、「Art, Science, Humanity」という言葉です。これは、私自身が40年余りにわたり、臨床医、そして外科医として多くの患者さんと向き合う中で、常に大切にしてきた指針でもあります。
Artとは、単なる技術や技能にとどまるものではありません。物事を多面的に捉え、既存の枠にとらわれることなく発想し、新たな価値を生み出していく力です。
それの土台となるのが、科学的思考に基づき、真理を粘り強く探究する Scienceです。
そして、人として、研究者として、何より欠かすことのできないものが、真の心をもって人を思いやり、多様な価値観を尊重し、社会と誠実に向き合う Humanityです。
岐阜大学が長い歴史の中で一貫して大切にしてきたのは、専門性を深く究めることと同時に、こうした人間としての総合的な力を育むことにあります。皆さんの大学生活は、決して教室や実験室の中だけで完結するものではありません。学問に没頭し、仲間と語り合い、時には意見がぶつかり合い、地域や社会と関わるなかで、迷い、悩み、そして失敗を経験することもあるでしょう。しかし、その一つひとつの経験こそが、皆さん自身の Art, Science, Humanity を磨き、揺るぎない軸を育てていくのです。
新入生の皆さん。
清流と緑に囲まれた、この美しい岐阜大学のキャンパスで、のびのびと学び、心身を鍛え、多くの友と出会い、人生を語りあってください。そして、「Art, Science, Humanity」 を胸に刻みながら、岐阜大学での学びを通して、自らの可能性を大きく広げていってほしいと願っています。
私ども教職員一同も、皆さんの挑戦と成長が実を結ぶよう、全力で支援してまいります。
本日から始まる皆さんの新たなキャンパス生活が、希望に満ち、実り多いものになりますよう心から祈念しまして、学長の告辞とさせていただきます。
令和8年4月7日
国立大学法人 東海国立大学機構
岐阜大学長 吉田和弘