2026年 年頭のご挨拶
皆さん明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
現在、我が国では、再び科学技術と経済発展で世界を牽引するリーダーとなるため、国力の源泉である「科学」の重要性が見直され、「科学の再興」を目指した議論が進められています。
気候変動や人口減少社会を迎えるなかで、「科学とビジネスの近接化」が進んでおり、地域における大学の研究力向上と地域の産業界・自治体・金融界とのさらなる連携・共創・協働こそが、地域創生や人口増加につながる重要な視点となっています。
2025年は、岐阜大学にとって、これまでの3年半を振り返り、次の10年に向けた方向性を考える事ができた、意義深い年となりました。
最初の3年間で良いスタートを切ることができ、制度づくりや教育研究環境の整備など、基礎固めが着実に進みました。具体的には、「ぎふのミ・ラ・イ・エ構想」に基づき、特に強みを発揮できる分野として、ライフサイエンス、ものづくり、環境・エネルギーの3つの領域を中心に戦略を推進し、その実現に向けた基盤的な補助金を獲得しました。特に、令和7年度「戦略的大学改革・イノベーション創出環境強化事業(実証事業)」に採択され、研究力強化と産学連携の基盤整備に向けて、大きな一歩を踏み出すことができました。
THE世界ランキングにおいて、国公私立大学を含む国内順位は、本学は2019年には52位でしたが、2026年は27位へと着実に上昇しました。医学部附属病院を有する地方国立大学28大学の中では、毎年ランクを上げ、現在は5位です。また、成果を中心とする実績状況に基づいて配分される運営費交付金の令和7年度配分額においても、同28大学の中では1位となりました。
さらに、科学研究費、受託研究費、共同研究費、そして寄付金の獲得も過去最高を記録しました。これも、皆さんの日々のご努力の賜物であると、心より感謝申し上げます。
各部局においても、さまざまな進捗がありました。すべてをご紹介する時間はありませんが、教育面では、応用生物科学部の改組、社会システム経営学院の設置、工学部での情報系人材の定員増などがありました。教育学部では、地域教員希望枠を活用した「教員養成大学・学部の機能強化事業」に採択され、未来の教育人材育成に貢献しています。地域科学部では高い公務員就職率を維持しています。また学生チームが、「Tongaliビジネスプランコンテスト2025」で入賞し、起業家精神を発揮しました。
さらに、ぎふハイスクールサットでは、本学の工学部などの教員・大学院生の指導のもと、県内高校生が製作した超小型人工衛星「らいちょう」が国際宇宙ステーションから軌道に放出されました。これらの活動を通して、高大連携プロジェクトが成功し、工学部の入試改革にも寄与しました。
特筆すべき点として、2024年パリオリンピックで走り高跳び5位入賞を果たした、本学出身の赤松諒一選手が、東京2025世界陸上競技選手権大会においても活躍したこと、また、医学部消化器外科講師の畑中勇治先生が内視鏡外科手技を競う大会で日本一、そして世界一に輝いたことなど、大変多くの実績がありました。
社会連携・産学連携では、「地域連携推進本部」を設置し、産学官の協働を一層強化しました。また、「岐阜大学経営者の会」を発足し、産学官金が一体となって、社会課題の解決に取り組む体制が整いました。さらに、大藪副学長が代表を務める「消費者ネットワーク岐阜」が消費者庁の「ベスト消費者サポーター賞」を受賞したこと、岐阜県と「若者のライフデザインおよびキャリア形成に関する覚書」を締結したことなど、地域社会との絆を深めることができました。SPARC事業も順調に展開しており、次のステップへの準備段階に入っています。
研究・価値創造では、創発的研究支援事業や医学系研究支援プログラムへの採択に加え、多くの科学研究費、JSTの「さきがけ」、NEDO事業の採択など、世界に誇る研究力を示しました。
ライフサイエンス分野では、糖鎖研究が着実に実績をあげ、Natureクラスの学術論文をコンスタントに発表してます。 One Medicineトランスレーショナルリサーチセンターでは、大手企業との連携や、AMED採択、次世代に向けたiPS財団との連携が進展しております。
ものづくり分野では、航空宇宙生産技術の教育・研究開発拠点として、ボーイング社、川崎重工業、三菱重工、SUBARUと連携し、「持続可能な航空機生産のためのコンソーシアム(cSAP)」を発足しました。また、最新のセンシング技術を活用したスマート金型による次世代型生産システムの開発が進み、社会実装も始まりました。
さらに、環境・エネルギー分野では、プラズマを用いたアンモニアから水素への転換事業や二酸化炭素のリサイクルがNEDOの国家プロジェクトとなり、社会実装レベルを目指すものとなっております。
高齢化が進む我が国においては、海外からの優秀な留学生を確保し、地域に定着させることが極めて重要です。岐阜大学でもキャンパスグローバル化に向けた取り組みを着実に進めています。
インド工科大学やマレーシア国民大学とのジョイント・ディグリー・プログラムを基盤に、地域産業界との連携も強化され、現在、コンソーシアムの参加企業は45社に達しております。これまで文部科学省の「世界展開力強化事業」により支援を受けてきましたが、今回さらに5年間の支援をいただけることとなり、AI・ロボット人材の育成を目的に、社会人大学院生も視野に入れたマイクロクレデンシャルの普及を、東海地域の大学や企業とともに目指してまいります。また、アメリカの南フロリダ大学、フランスのリール大学、リトアニア、モロッコ、ウズベキスタンとの連携も順調に進んでいます。
さて、文部科学省は、「国立大学法人等改革基本方針」を発表し、2040年を見据えた機能強化の視点を明確化しました。18歳人口の減少に伴い、大学の連携・統合を含め、人事戦略や財務戦略を含む大学改革を進めるよう求めています。
そして、国立大学のミッションを3つに分類し、改革を推進する方針です。その3つのミッションとは、
① 世界最高水準の研究の展開とイノベーションの牽引
② 変化する社会ニーズに応じた高度専門職業人材の育成
③ 地域社会を先導する人材の育成と地域産業振興
です、岐阜大学は、③や②に重点を置くことになると思います。
そこで、私たちは岐阜大学の改革として、「共創型社会実装大学へのフルモデルチェンジ」という目標を掲げ、新たな改革に挑戦する覚悟です。
その基盤となるのは、AI、ロボット技術などを核とし、航空宇宙生産技術センター、スマート金型拠点、3次元積層造形活用技術開発センター、Guコンポジットセンターといった、ものづくり拠点を中心に、この分野で世界を目指し、社会実装を実現し、イノベーションを起こす新たな大学の姿として、社会課題解決の「イネーブラー(実現促進者)」たる第4世代としての大学を目指すということです。グローバルに活躍する企業でも解決できなかった課題を、大学が連携して解決し、イノベーションを創出する、それが新たな基礎研究分野を開発し、スタートアップや人材育成と併せて、研究の好循環と地域創生につなげるという構想です。
さらに、この取り組みはものづくりにとどまらず、医療、ライフサイエンス、食品、農業の分野にも広げます。そこにEthical, Legal, Social Issue、すなわちELSIの概念を組み合わせ、「総合知」をもって発展させるプランです。
岐阜大学の発展が、東海環状道岐阜インターの開通により、さらなる地域の発展につながり、ライフサイエンス・ものづくりの学術研究拠点として、変革できればと思っております。
岐阜大学の教職員、学生、そしてステークホルダーの皆さまと一致団結し、この夢の実現に向けて、さらなる発展に挑戦を続けてまいります。どうぞご支援を賜りますようお願い申し上げます。
本年が本学の皆さんにとって、素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
2026年(令和8年)1月5日
岐阜大学長 吉田和弘