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令和7年度岐阜大学大学院入学式 学長告辞

岐阜大学大学院へのご入学おめでとうございます。

20250407-6.png  春爛漫の今日の良き日に、岐阜大学に入学された学部生1333名、大学院651名の皆様に心からお祝い申し上げます。新しく岐阜大学の仲間になった新入生の皆さんに、全学を代表して心から歓迎の意を表します。
 皆さんは、まさにコロナ禍の中で大学生活が始まり、その苦境を乗り越え、地球温暖化や国際紛争勃発などの世界的、歴史的な逆境の中で、レジリエンスを身につけた経験を生かし、そしてさらに大学院進学という高い志を貫かれましたこと、心から敬服する次第です。そして、これまで皆さんを支えてくださった、ご家族、先生そして関係者の皆様にも心からお祝いと敬意を表したいと思います。

 岐阜大学では、本年度から新たに修士課程である社会システム経営学院の設置を行い、5つの修士課程、2つの博士課程に加え、岐阜大学を基幹校とする2つの連合大学院博士課程、1つの共同大学院博士課程があります。大学院教育の機能強化のため、修士課程である自然科学技術研究科が創設され、工学、応用生物科学を融合し、とくにデザイン思考教育を付加価値とする課程であり、岐阜大学の教育で中核を形成する一つです。教職大学院、共同獣医学研究科、さらに連合教職大学院博士課程も合わせ、大学院教育の特徴ある強化が急速に進んでいます。
 本日は岐阜薬科大学と構成される連合創薬医療情報研究科入学の皆さん、静岡大学と構成される連合農学研究科入学の皆さんが、教職大学院入学の社会人の皆さんとともに出席されています。
 また、東海国立大学機構の松尾清一(まつお せいいち)機構長と連合創薬医療情報研究科の構成大学である岐阜薬科大学長の 原英彰(はら ひであき)先生もお祝いに駆けつけてくださいました。ありがとうございます。
 本年度も大学院と学部の2部構成で、さらに学部入学生を対象に、ウエルカムセレモニーを行うことといたしました。

20250407-7.png  さて、皆さんを取り巻くこれからの社会は、情報を基盤としてビッグデータやAI、ロボット、IoTが社会の重要な役割を担う超スマート社会が大きく進展していきます。多様な人材が自分の所属する組織を越えて協働し、新たな知を創出して、社会的価値の顕在化を図る、この好循環を実現することが私たちの目指すところです。
 これらの状況を背景に、岐阜大学と名古屋大学は2020年(令和2年)4月から法人を統合し、国立大学法人東海国立大学機構として両大学が連携して新たな時代の先駆けとして、教育研究等活動に取りくんでいます。「Make New Standards for The Public ― 知とイノベーションのコモンズとして、常に国立大学の新たな形を追求し、地域と人類社会の進歩に貢献し続けることを、存在意義とする」との東海機構のミッションを踏まえつつ、岐阜大学は地域に軸足を置き、日本トップクラスの地域の中核大学を目指して「学び、究め、貢献する」人材を輩出するとともに、自治体や企業と連携し、地域の課題解決に具体的に貢献するイノベーションを起こしていくことを使命としています。
 「産業・まちづくり」、「ものづくり」、「食づくり」、「医療づくり」、「人づくり」の分野でステークホルダーとの共創のもと、地域社会への教育・研究・社会貢献などから生まれる成果が地域を変えていくこの好循環を、「ぎふのミ・ラ・イ・エ構想」(Migration, Laboratory, Innovation, Education)と名づけ、岐阜大学の価値創造のモデルとして位置づけ発展してきました。「地域と世界に開かれ、愛される岐阜大学、持続可能な研究大学」への発展を目指しています。
 東海国立大学機構となって、教育・人材育成 学部学生の共通教育において、数理・データサイエンス・AI教育、英語教育などを名古屋大学と連携して単位互換制度や連携開設科目として開講することができました。さらに博士課程の学生を対象に学費免除や生活費研究費の支援が始まったことは大きな成果です。従って、大学院修士課程の皆さんの更なるキャリアパスとしても大学院博士課程への進学も魅力的な選択肢の1つです。また学生自らが目標とする学修レベルに対する達成で状況を自己評価できる学生ステータスシステムの運用を開始しました。教育成果、学修成果を可視化する取り組みを先進的に行っております。

 「ぎふ地域創発人材育成プログラム」(SPARC)事業では、2024年3月に、大学等連携推進法人として認定を受け、中部学院大学、岐阜市立女子短期大学とともに連携開設科目を開講できるようになり、大学間連携による教育改革を推進しています。今後さらに参加校が増えることが期待されます。
 また、岐阜大学では、おおくの外国人留学生や研究者がキャンパス生活を送っています。岐阜大学が学術交流協定を締結した大学は欧米からアジア、オセアニアまで50大学ありますし、海外での研修を支援する制度もあります。また、協定校のインド工科大学グワハティ校(IITG)およびマレーシア国民大学(UKM)と協働して、ジョイント・ディグリープログラムとして4つの国際連携専攻を開設しています。
 これからの日本は一層のグローバル化が求められていますが、そのためには双方向の交流が必須です。岐阜大学を足場に、ぜひグローバルな経験を積んでいただきたいと思います。
 研究面では、社会課題・人類課題の解決に貢献し得る有望なテーマとして、「ライフサイエンス」、「ものづくり」、「環境・エネルギー」の3つの分野に特に力を注いでいます。糖鎖生命コア研究拠点(iG-CORE)、One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点、航空宇宙研究教育拠点、健康医療ライフデザイン統合研究教育拠点、低温プラズマ総合科学研究拠点、量子フロンティア産業創出拠点など6つの拠点が、岐阜大学と名古屋大学の強みを集結した東海国立大学機構連携拠点支援事業として、発展を目指しています。
 2024年5月には糖鎖研究の新たな拠点となる岐阜研究棟が竣工し、世界トップレベルの研究が展開されています。また産学連携のシンボルとして、2024年2月に開所した地域の産学連携オープンイノベーション拠点「Tokai Open Innovation Complex 岐阜サイト」において新たなイノベーション創出に取り組んでいます。アントレプレナーシップ教育では、岐阜大学公認の起業部の学生がビジネスコンテストなどで2024年までに文部科学大臣賞をはじめいくつもの賞を受賞するなど実績を重ねています。
 また、これまで岐阜薬科大学と岐阜大学は密接に連携、共同研究等を進めてまいりました。本年度から法人化された岐阜薬科大学のキャンパスの全面移転も計画されており、これにより、岐阜大学との連携が一層強化され、医学と薬学のみならず、獣医学、農学、工学との協力が深まり、多職種連携教育の充実がさらに期待されます。今後も両大学の連携を加速し、地域の発展に貢献する取り組みを進めてまいります。
 さらに、東海環状自動車道の岐阜インターが開通し、地域の交通利便性が大幅に向上するでしょう。これにより、黒野地区は学術・研究拠点、ライフサイエンスやものづくりの拠点として、地域社会全体の発展に大きく寄与するものと確信しております。
 我が国や今後のアジア諸国では、少子高齢化が益々進みます。世界情勢や世界規模での物価高騰などの影響により、依然として厳しい状況が続くでしょう。我が国が国際社会でさらに活躍し世界をリードし、誰もが安心して豊かに暮らせる社会を実現するためには、科学技術・イノベーションの力で行うことが不可欠です。それには、社会からの要請を意識した研究や社会実装を目指し、大学などアカデミアと自治体や産業界との連携をさらに強化する必要があります。岐阜大学も「世界屈指の共創型社会実装大学」として、さらに発展する覚悟です。大学院生として研究を始めるに当たって、まずは与えられた課題研究を究めることと、さらにそこから生み出されるソーシャルインパクトをいかに作り出すのかという目線での研究を是非とも進めるよう努力してください。

20250407-8.png  慶應義塾大学を創設した福沢諭吉先生の言葉に、「学者たるもの国家の奴雁(どがん)となれ」ということばがございます。水鳥としてよく知られている「雁(がん)」というものは多くの群れで行動します。そして、羽を休めて広い湿地帯でえさをついばみます。多くの仲間の中でただ1羽だけは、首を長くして常に周りを見回し、警戒し、天敵から群れを守るべく、役割を果たすものがいます。

 皆さんは、岐阜大学で学び、奴雁(どがん)のように、他とは異なった見方、姿勢、注意深く、他の人たちの先見の明、将来を照らす目となって我が国の未来を担う人材として、活躍してもらいたいと思います。 大学院へ進学される皆さんは、是非とも「高い人徳と総合知」を身につけた上で、次の時代の「先導者」として育ってください。私どもも精一杯その支援をさせて頂きます。

 それでは本日から皆さん一人一人にとりまして実り多いキャンパス生活が送れますよう心からお祈りして、学長の告辞とさせていただきます。

令和7年(2025年)4月7日
岐阜大学長 吉田和弘