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令和4年度岐阜大学大学院入学式 学長告辞

 岐阜大学大学院へのご入学おめでとうございます。本日、596名の令和4年度大学院入学者を迎えることは、私どもにとってこれ以上ない喜びであり、岐阜大学教職員を代表して心から歓迎します。
 皆さんは、2年におよぶ新型コロナ感染症の世界的、歴史的な逆境のなか、学生として社会人として模範となって勉学に励み、見事に志しを貫かれ岐阜大学大学院に入学されました。そして各分野の研究におけるさらなる高みに向かって、夢を描いておられることと思います。これまで皆さんを支えてくださった、ご家族、先生そして関係者の皆様にも心からお祝いと敬意を表したいと思います。

 私ども岐阜大学大学院には教職大学院を含む4つの大学院修士課程、2つの大学院博士課程に加え、岐阜大学大学院を基幹校とする2つの連合大学院、1つの共同大学院があります。大学院教育の機能強化のため創設された、大学院修士課程である自然科学技術研究科は、工学、応用生物科学を融合し、とくにデザイン思考教育を付加価値とする課程であり、岐阜大学の大学院教育で中核を形成する一つです。教職大学院、共同獣医学研究科、さらに構成大学として参加している兵庫教育大学の連合学校教育学研究科も合わせ、大学院教育の特徴ある強化が急速に進んでいます。
 なお、本日は、連合大学院のうち岐阜薬科大学と構成される連合創薬医療情報研究科へ入学の皆さんも、出席されています。この為、原英彰(はら ひであき)岐阜薬科大学長もご臨席下さっています。

 さてコロナ新時代では、DX(デジタルトランスフォーメーション) やグローバル化の進展、Society 5.0 の到来等、急速に変化し、社会産業構造は資本集約型から知識集約型へと移り変わってきています。
 岐阜大学が地域の中核的な拠点となる上では、教育研究を通じていかに「社会的な実践」を行っていくことができるかが鍵であり、地域のために大学が貢献するとともに、地域も大学と一緒になって取組を進めていく、そのような大学と地域の関係こそが「魅力ある地域中核大学」の前提となります。
 一方で、「グローバルに活躍できる人材こそ、地域に貢献できる人材」と考えます。視野を広く持ち常に世界を意識した研究を行うことが必要です。
 本日入学した皆さんには、イノベーション創出など研究・社会実装機能の強化や質の高い人材として育ち、将来は地域との密接な連携、社会貢献ができる人材として活躍されることを期待しています。岐阜大学の大学院生としての誇りと自信を持って研究に励んでください。この姿こそが、私ども岐阜大学の理念である、「学び、極め、貢献する」「人が育つ場所」であると考えます。
 我が国では研究力を更に強化し、世界トップレベルの大学と地域変革を駆動する大学の育成を目指しています。すなわち、国際卓越研究大学と地域中核大学です。従って、修士課程修了後、コースによっては博士課程への進学も大変魅力的な進路です。私共もその支援を最大限に行う覚悟です。
 専門知識を身につけることは重要ですが、それだけでは十分とは言えません。コロナ禍をはじめとして気候変動、自然災害、貧困、国際紛争などの危機に直面する世界は、今まさにパラダイムシフトを迫られています。かつて経験したことがない課題や革新的な取組に対し、従来の細分化された知識で対応することは困難であると言わざるを得ません。これまでと同様に、「リベラルアーツ」という観点からの研鑽も積んでください。

 また大学院生の時に行った基礎研究は時代を経て、20年、30年後にようやく社会に貢献することが多いのも事実です。私自身も大学院生の時に、癌の分子生物学的研究を行いました。当時は癌遺伝子や、癌抑制遺伝子の発見など相次ぎ、発癌のメカニズムが明らかになり、癌撲滅も夢ではないと、毎日わくわくする思いで研究に励んだ日々を思い出します。しかしながら、やればやるほど未知の部分が明らかになり、途方に暮れたこともありました。それが、30年たった今、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤という新たな創薬につながり、医学の大きな進歩につながっているのは、感無量であります。

 皆さんもこれから研究をする上で、必ず越えなくてはならない壁や難題に遭遇すると思います。そのときは、決して諦めず「初志貫徹」を目指して努力してください。何事も継続こそが物事を成就させてくれる秘訣です。

 中国の故事から端を発し禅の言葉で、「木鶏鳴子夜(もっけい しやになく)」という言葉があります。木鶏とは木彫りの鳥です。子夜とは真夜中のことです。木に彫った鳥のように、どんなときもじっと構えて、夜中にでも鳴き続ける、努力し続ける姿を現しています。若い人はとかくゴールが見えないとなかなか進めない部分もありますが、目前にある仕事・学問を黙々とこなし、人知れず努力を続けること、人徳を積むこと、そうすれば思いもよらず新たな展開が待っていると思います。

 さて、皆さんご存知の様に、岐阜大学と名古屋大学は2020年(令和2年)4月から法人を統合し、国立大学法人東海国立大学機構となり3回目の春を迎えます。
 新たに発足した東海国立大学機構として管理・運営を行う一つの法人のもとに、両大学が連携して教育研究等活動に取りくむことになりました。そして、本年4月からは中期目標期間における第4期の6年が始まり、名古屋大学と岐阜大学が有機的な連携をとりながら「世界に伍する研究大学」と日本有数の「地域中核大学」をめざして、その発展に努力しているところです。
 現在最も力を入れている東海国立大学機構としての取り組みを最後にお話しします。
 岐阜大学と名古屋大学の強みのある分野を中心に、世界最高水準の研究を展開し、「知の中核拠点」化を目指しています。

 まず1番目に、糖鎖生命コア研究拠点は、世界トップクラスの糖鎖研究「ヒューマングライコームプロジェクト」を主導することとしており、文部科学省の「共同利用・共同研究拠点」:糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点に認定されました。様々な研究者との融合を推進し生命・医科学研究のゲームチェンジを実現します。   
 2つ目は、航空宇宙研究教育拠点です。我が国の航空宇宙産業の約50%が集中する東海地区において、内閣府と岐阜県の支援を受けて世界をリードする航空宇宙産業クラスター形成に向けた研究開発と人材育成が強みです。
 3つ目は健康医療データ統合研究教育拠点です。高齢化が進むなか、病気の原因の探索や治療の開発、さらに病気の予防などの研究や創薬開発など期待されます。
 4つめの農学教育研究拠点も現在進行中です。
 岐阜大学の得意とする、「ひとづくり」、「食づくり」、「ものづくり」、「産業や町づくり」、「新たな医療づくり」を「岐阜・東海のミ・ラ・イ・エ構想」 (Migration, Laboratory, Innovation, Education) として教育・研究・社会貢献を発展させる事ができればと考えます。 岐阜大学が、皆さんと一緒に、高齢化社会に向け、若者と高齢者が生き生きと豊かに暮らせる、町作り社会づくりに貢献できればと考えております。

 皆さんは本日から、大学院生です。選挙権を持った成人であり社会人です。
 冒頭申し上げましたが、「大学で何を学ぶか、何のために学ぶか、学んだものをどう社会で活かすのか」、この問いを常に考えながら研究に励んでください。私共も皆さんと一緒に考えたいと思います。

 それでは本日から皆さん一人一人において実り多いキャンパス生活が送れますよう心からお祈りして、学長の告辞とさせていただきます。

2022年(令和4年)4月7日
岐阜大学長 吉田和弘

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