大学案内

岐阜県観光連盟 会長 岸野 吉晃氏

外国人観光客も増加し,盛り上がりを見せる飛騨地域。
一方で,長良川周辺をいかに活性化していくかが課題。

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学長:岐阜大学は,機械工学や建築・土木,農畜産業などの分野には割と明るいですが,その反面,岐阜県の主要産業の一つである観光業には疎い面があります。ただ最近は,卒業後を見据えた人材育成という観点からも,岐阜県の観光業をきちんと理解する必要があるだろうと強く感じます。そこで今回は,岐阜県観光連盟会長を務める岐阜乗合自動車の岸野社長に,観光業を取り巻く最近の動向などについて詳しくお聞きできればと考えております。
岸野会長:私どももこうした機会を設けていただき大変光栄です。観光業については近年,日本政府が積極的に後押ししています。これは,国内の労働生産人口が減少し,経済規模が縮小する中で,外国人観光客を誘致して経済を活性化させるのが狙いです。
学長:当初,政府が掲げた数値目標には驚きましたが,その後,順調に推移していますね。
岸野会長:ええ。2020年の4000万人突破が目標でしたが,おそらく達成するだろうと見ています。このように観光業全体が盛り上がりを見せる中,岐阜県では先進的な取り組みを以前から進めてきました。「観光の基幹産業化」を掲げて積極的にPR活動などを展開しており,現在では県下に白川郷をはじめ7つの世界遺産があります。
学長:岐阜市でも,労働者の90%が広義のサービス業に従事しているという数字が出ています。ものづくりが盛んな一部の地域を除けば,岐阜県にとって観光が大きなキーワードであることは間違いありません。
岸野会長:おっしゃる通りです。全国的に見ても岐阜県の観光の知名度は上昇し続けています。また,海外からのお客様も増え,ユダヤ系の外国人観光客の間では,中部国際空港から八百津町の杉原千畝記念館を訪れ,白川郷や高山,金沢に向かうルートが定着化しているようです。ただ,県全体では,観光業の中心は飛騨地区であり,長良川地区は手薄です。岐阜市の旅館も部屋の稼働率は高いものの,実際には愛知県で予約が取れない方が利用されるケースが多いです。今後は長良川周辺をいかに盛り上げていくかが課題だと思います。
学長:岐阜大学でコンベンションを誘致する際,ネックとなるのが宿泊先です。特に若い方は,多少狭くても一人部屋を希望されるため,ビジネスホテルから順に埋まり,一宮や名古屋のホテルに流れてしまうことも少なくないようです。
岸野会長:岐阜市内で宿泊し,地域でお金を使っていただくからこそ,地域経済が潤います。学長からご指摘を受けた宿泊施設の改善を含め,やれることはたくさんあるだろうと感じています。

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観光の柱となる「食」での岐阜大学ブランドの確立に期待。
キャンパス内の植物や美術品も,魅力的な観光資源に。

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学長:最近では人手不足を訴える業界が多いですが,観光業も相当厳しいでしょうか。
岸野会長:ええ。深刻です。ホテル・旅館業は拘束時間が長く,土日も休めない場合が多いですから,どうしても人が集まりにくい。かといってロボットやAIで代替できる仕事ではありません。すでに仲居さんが足りずに予約を受けられない旅館も出てきているようです。岐阜大学の学生さんたちにも,観光業に関心を持って頂けるとありがたいです。
学長:まだ一部ではありますが,工学部の中にも観光業に興味を持つ学生が徐々に出てきています。先日も産学金官連携のプロジェクトで,外国人がSNSで発信する情報をもとに顧客満足度を調べるアイデアを発表した学生がいました。
岸野会長:そういえば先日,応用生物科学部の学生さんが飛騨の天領酒造さんと産学連携で甘酒を開発されたとお聞きしました。
学長:ええ。岐阜大学のキャンパス内に2019年,醸造や発酵なども研究できる岐阜県食品科学研究所が竣工予定です。そこで,様々な連携の話が進んでいます。
岸野会長:観光業にとって「食」は大切な柱です。今後も色々なコラボ商品が生まれることを期待しています。近い将来,岐阜大学ブランドが確立されるといいですね。
学長:少しずつ手掛けていきたいと思います。今のところは,大学内の農場で栽培している果物のジャムが人気でしょうか。中でも珍しいのがバラのジャムです。
岸野会長:バラですか。それは面白いですね。こうした商品は学内で販売されないのですか。
学長:もちろんできますが,常時提供できないのがネックでして。確実に販売できるのは,大学祭で行われる秋のバザーぐらいです。
岸野会長:これは前々からお願いしてみたいと考えていたのですが,例えば,大学祭で岐阜県の地場産品を学生さんに販売していただくのはどうですか。そうすれば,地域の方々を巻き込んでより一層盛り上がると思いますが。
学長:確かに面白そうですね。ちなみに,岐阜バスさんでは「食」を柱にしたツアーなどを数多く企画されていますが,こうしたアイデアは社内の方が考えられるわけですか。
岸野会長:そうです。ただ最近はマンネリ化していると感じています。例えば,岐阜大学の学生さんと一緒に,SNSを絡めた体験型の旅行商品を企画できれば面白いかもしれませんね。また,岐阜大学のキャンパス内にも色々な観光資源が眠っている気がしています。
学長:私たちも今それを精査しているところです。来年迎える創立70周年の取り組みの一つとして,タブレット端末の案内を見ながら,キャンパス内を散策してもらう企画を構想中です。
岸野会長:最近は各地で産業観光が人気を集めていますし,大学内の様々な研究施設を見て回るツアーはとても面白いと思います。
学長:学内には研究の一環で40種類以上の珍しい花や木を植えています。また,教育学部では,教員や学生の制作した美術作品がたくさん残されています。絵や書については室内で保管していますが,彫刻などは芝生の広場に野外展示されており,こうした植物や美術品を見学してもらうためのパンフレットも制作中です。
岸野会長:医学部や工学部のイメージが強い岐阜大学ですが,そのほかにも,魅力のあるものがたくさん眠っているわけですね。
学長:ええ。医学部でも,岐阜インターチェンジの完成を機に,アジア全体に通用する医療施設を作り上げ,メディカルツーリズムの拠点を目指す計画を検討しているところです。

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大学時代を岐阜で過ごす学生のみなさんに,
岐阜の観光に興味を持ち,良き理解者になってもらいたい。

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学長:岐阜バスさんには,学生たちの大切な足としてお世話になっております。入学試験の際には,岐阜バスの車両がずらりと待機している様子が壮観でした。特に2つのボディを連結器で繋いだ「清流ライナー」は,多くの学生が一度に乗車できて大変助かっています。
岸野会長:おかげさまで「清流ライナー」は,遠方から見学に訪れる方がたくさんいらっしゃるほど注目を集めています。大学の路線に連節バスを導入するのは,岐阜大学が全国で2番目ですが,学生さんの輸送にはうってつけの車両だと思います。
学長:私もそう思います。ただ,愛知県などから通学する学生の割合が多いため,朝の時間はどうしても混雑します。そこで通学時間を分散させるため,岐阜駅近くにサテライトキャンパスを設置しました。ここで1時間目が受講でき,1日平均200名ほどが利用しています。
岸野会長:愛知県からの通学が多いんですね。せっかく岐阜で学生生活を過ごすわけですから,岐阜の観光資源に興味を持ち,良き理解者になってもらえるとうれしいですが。
学長:私たちもそう感じています。岐阜城は知っていても,川原町を知らない学生は多いようですから。こうした状況は就職先についても同じです。岐阜県と連携して県下企業のインターンシップを実施したところ,学生たちからは「こんないい企業があるなんて知らなかった」といった声が聞かれました。こうした面は本当に手薄だったと反省しているところです。
岸野会長:例えば,大学の教養課程で,岐阜の伝統文化を学ぶ講座などはあるのですか。
学長:「岐阜学」という講義群があります。全学年を対象に25コースが用意されています。
岸野会長:必須科目にして頂いてもいいのではないですか。
学長:そうですね。そこで平成25年には「地域協学センター」を設置するなど,地元に関連した教育をできる限り充実させていこうと準備を進めています。
岸野会長:せっかく岐阜で学ぶわけですから,この地域の伝統文化にも触れてもらいたいです。例えば,最近では東濃の地歌舞伎が人気です。岐阜大学にも地歌舞伎研究会のようなサークルがあるといいですね。
学長:外国人留学生については,日本文化に触れる機会を積極的に設けるようにしています。これまでも郡上おどりや大相撲名古屋場所,能楽を見学したり,十二単の着付け体験を行ったりしてきました。昨年からは東濃の地歌舞伎も加えています。日本人学生よりも留学生の方が手厚いかもしれません。
岸野会長:先日,金沢大学の新卒の女性が金沢の芸妓さんとして活躍されているという話を耳にしました。岐阜の芸妓さんも伝統文化の象徴の一つです。岐阜大学からこうした世界に入る方がいてもいいと思います。バスに乗車される様子を見ていると,岐阜大学の学生さんは総じて真面目で大人しい。逆に言えばもう少し個性豊かな方が育ってきてもいいのではないでしょうか。
学長:おっしゃる通り,そういった印象が強いかもしれません。

岸野会長:最近では大学時代から起業する学生さんもいらっしゃるようですが,岐阜大学ではあまりこうした話を聞かない気がします。
学長:確かにそうですが,素質は十分にあると思います。先日もNTTさんが主催するアプリ開発コンテストで優勝した学生がいました。あいさつに来た時に聞いたところ,将来の目標はあくまで企業への就職。自分で起業するという考えはないようでした。これは,岐阜大学に限らず,東海地区において学生ベンチャーを支援する体制が十分に整っていないのも一因だと感じています。ただ,今後はこうした活動を支援する動きも徐々に活発化していくはずです。
岸野会長:そうですか。期待しています。実は先日,テレビ番組で他大学の学生が開発した「しゃべるバス停」が紹介されているのを見ました。岐阜大学の学生のみなさんにも,私たちでは思い付かないような画期的なアイデアで,ぜひ岐阜県の観光業を盛り上げて頂けるとうれしいですね。

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