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株式会社インフォファーム 取締役会長 辻 正氏

IT化の波に乗り事業拡大を続ける一方で,要職を歴任。
戦争での悲惨な体験から,何事も断らない姿勢を貫く。

学長:これまでも様々な分野の方のお話をお聞きしてきましたが,今後ますますITが大事な時代に突入していくことを踏まえ,辻会長にぜひご登場いただければと対談をお願いした次第です。対談に先立ちまして辻会長のご著書を拝読しましたが,相当早い段階からIT化への舵を切られたようですね。
辻会長:実は「インフォファーム」という今の社名に変更するときは,梶原拓前岐阜県知事にもご相談しました。創業時はタイプライターなどの機器の販売と保守が事業の柱だったのですが,梶原さんが「これからはITの時代だ」と早くからおっしゃっておりまして,本当にあの方は先見の明がおありでした。
学長:そうでしたか。中部タイプさんについては,かつての医学部(岐阜市司町)の隣にあり私もよく記憶しております。あの頃タイプライターが不可欠の時代でしたから,学会発表の時期が近づくと,優秀な社員さんを押さえられるかどうかが一番の懸案事項でした。
辻会長:そうでしたか。そんな昔から私どものことをご存知だったとは驚きです。
学長:ええ。あの当時は本当に助けられました。
辻会長:確かにあの近辺は白衣を着た病院関係の方がたくさんおられました。私にとっても思い出深い場所ですが,最近,医学部があったことを記した石碑ができたとお聞きしました。
学長:そうです。2017年6月に石碑の完成を記念して除幕式も執り行いました。それにしても,当時と比べるとITの広がりは隔世の感がいたします。
辻会長:本当にそうです。ITの時代が到来するということで,コンピュータ部門を独立させ,情報関連部門とファシリティ部門を引き受けて設立したのが当社です。
学長:本当に時代の先端を走り続けていらっしゃいますね。ご著書を拝見しても,時流に即して実に適切な判断を下しておられ,驚きました。また同時に,数多くの団体の要職も務めてこられました。
辻会長:全国地域情報産業団体連合会の会長を12年,岐阜県中小企業団体中央会の会長を20年,岐阜流通センター協同組合連合会の会長に至っては35年務めております。岐阜県中小企業団体中央会でベトナム・ハノイを視察した際には色々なご縁ができましたし,現地の大手IT企業のトップとも親交を深め,最近も「ぜひ岐阜に足を運びたい」と言ってくれています。
学長:いつも辻会長のお話をお聞きすると,人との繋がりを大切にされ,頼まれたことはできる限り引き受けられて来ましたね。やはりこれは戦争で大変なご苦労をされたことが根底にあるのでしょうか。
辻会長:左様です。私の父は当時のソ連軍に殺されました。42歳の若さでした。私の手を握りしめながら「痛い,痛い」と言いながら死んでいったのです。こうした経験から,何かを頼まれると嫌と言えずにやってきたわけです。今振り返ってみても本当に良かったと感謝しています。

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話題の「AI」「IoT」に安易に飛びつくのは危険。
まずは目的を明確化し,じっくり取り組むことが大切。


学長:最近ITの分野では,「AI」「IoT(モノのインターネット)」といった言葉だけが先行し,何か物事を安易に考えてすぎているのではないかと危惧しているのですが,辻会長はいかがお考えですか。
辻会長:全くその通りです。私どもは本業ですから日々ITと向き合い続けているわけですが,昨今はあらゆる業種でIT化に取り組まざるを得なくなった。ただ,重要なのは決して慌てないということです。最近ではマスコミが連日のように「AI」「IoT」などと囃し立てています。あまりに「IT」という言葉が氾濫しているので「喫茶店でコーヒーじゃなくてアイスティーが来た」なんて冗談も出るくらいです。だからといって,導入を急いでもうまくいきません。
学長:私は様々な業種の方とお会いしますが,多くの方がITというカセットをポンと入れれば動き出すというような考え方をしている気がするのです。最近でも「AIがトップ棋士に勝った」と話題になりましたが,そのプログラムで囲碁ができるわけではないわけですから。
辻会長:私たちは専業ですから,慌てずじっくり作り込まないと危ないことを経験的に理解しています。急げば大変なことになる。そういう性質のものです。私たちはIT化をサポートする立場ですが,本来,システムの構築自体はお客様自身でできてしまう。例えば,外科のシステムを作るには,外科の先生が作るのが一番なのであって,勝手が分からず作ってしまうとダメになるわけです。経営が分かっている人は,遅かれ早かれIT化に必ず取り組むと思いますが,まずは経営を理解しないといけない。だから時間がかかるのです。
学長:そうですよね。経営が理解できていてフローが書ける人だからこそ使いこなせるのであって。
辻会長:そうなんです。バランスシートも分からず,闇雲にシステムだけを導入しても良い効果は出てきません。私の会社が行っているのはあくまでサポート。私たちが机上で考えたものを持っていっても成功しませんし,余計に人員が必要になるだけですよ。
学長:専門家である辻会長からこうしたお話が聞けて自信になりました。「危ない」と私からお伝えしてもなかなかご納得いただけないもので。
辻会長:学長に本質的な部分をご理解いただけていると思うと,こちらもうれしいですね。
学長:どういう場面で使いたいかという部分は,自分たちで見つけないと。目的を明確化することが第一ですよね。
辻会長:そうです。単純に「コンピュータをどう使うのか」と,「IoTやAIをどう活用するのか」というのは全く次元の違う話です。急いでも無駄なお金を使うだけですから,ぜひともゆっくり腰を据えて取り組んでもらいたいです。

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中小企業にとって,岐阜大学の学生は「高嶺の花」。
まずは地元の優良企業を知る機会を作ってもらいたい。


学長:私たちは岐阜に立地する大学ですから,地域活性化の中核拠点であることを第一に考えております。その中でも大きなテーマの一つが,卒業生を地元に定着させることです。
辻会長:それはぜひお願いしたいです。
学長:私たちも学生たちに,地元の優良企業を知る機会を増やしたいと考えています。現在,単に会社見学をするのではなく,インターンシップ期間を設けて実際の仕事を見て体験できる試みを進めていまして,2016年には80人だった参加者が2017年には140人まで増加し,学生からも「地元にこんないい企業があったのか」と喜んでもらっています。
辻会長:当社では,取引先の大手企業から「定年後に使ってくれないか」とお願いされることがよくあります。ただ,本音を言えば「なぜ最初から当社に来てくれないのか」と。そもそも当社であれば,ずっと長く働き続けられるわけですから。確かに大企業は魅力的に映るかもしれません。ただ,その一方で厳しい面もあることを知っていただきたいです。
学長:若いうちに東京に目が行くのはよく分かります。ただ,東京に行って大企業に勤めるのと,岐阜県にある会社に勤めるのと,どちらがいいのか。先々のことも見据えて考えてほしいものです。
辻会長:私どもの会社でも,東京に事務所があります。東京で活躍することを希望されるのではあれば,当社でも叶うわけですから。
学長:そうなんです。今やほとんどの会社が,東京や海外に営業所を持っていらっしゃる。だから働く場所は選択できるんだと。地元の企業を選んだからといって,活躍の場が制限されるわけではありません。最近ではやっと学生たちもそのことに気付き始めてきました。
辻会長:実は先日,岐阜県中小企業団体中央会の役員に聞き取り調査をしましたが,「岐阜大学は関係ない」と話す方が大半でした。それは,岐阜大学の学生には「どうせ来てもらえない」と最初から諦めているから。ただ,宝のような企業が地元にたくさんあるわけです。
学長:そうです。岐阜にはそういう会社がとても多い。また,地元を基点にして素晴らしい国際展開をされている企業も少なくありません。
辻会長:俗な言い方ですが,「田舎の金持ち」と言いますか,岐阜は地味ですが力はある会社が多い。そこに飛び込んでいただいて,ぜひとも自分を磨いてほしいです。たとえ同族会社であっても,最近の経営者は「子どもを必ず後継者に」なんて決めつけていませんよ。本当にやってくれる人材ならやらせる。今の経営者は割り切っています。
学長:ここにきて地元を希望する学生がぐっと増えたのも,そのあたりが見え始めたのかなと。東京本社の大企業に入社できたとしても,50代後半に差し掛かった段階で,次はどうするんだとなりますから。
辻会長:そう。そんなことになる前に見極めて欲しいです。今の経営者は,優秀な人材が来てくれるなら「将来の副社長や社長を約束してもいい」というくらいの気持ちだと思います。社長たちに話を聞いても,誰しも優秀な人材を渇望しています。ところが,岐阜大学の入口に行きますと,どうしても尻込みしてしまう。私たちにとっては高嶺の花なんです。
学長:インターンシップも本格的に動き出しましたし,今後は窓口を見えるようにするなど,地元企業からの声を受け取れる体制を整備していきます。
辻会長:そうしていただけるとありがたいです。
学長:最近では,工学部を卒業した学生が,「宮大工の仕事がしたい」と中津川にある工務店に就職し,岐阜公園の三重塔の修復に来ていたりします。学生たちも,単純に大企業を目指すのではなく,自分がやりたいことを定めたうえで,どんな会社があるのかを調べているようです。

辻会長:そうですか。岐阜大学と地元の中小企業がもっと近づき,中小企業の窓口みたいなものができれば,「うちにもぜひ来て欲しい」と皆さん手を挙げるのではないでしょうか。
学生さんたちにとっても,先行きが不安定な時代ですし,安定した地元企業に就職するという選択肢をぜひ知ってもらいたいです。最近では金融機関ですら大変な時代ですからね。
学長:それでなくても銀行は定年が早いですからね。
辻会長:そうです。人生100年と言われる時代です。当社であれば希望さえあれば60歳を超えても働けます(現在13名)。大企業で早く定年を迎えるのと,どちらが良い選択なのかぜひ見定めてもらいたいですし,岐阜大学にはそのための道を開いてほしいと思います。私たちも,学生さんたちのために包み隠さず本当のことをしっかりお伝えしますから。

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