大学案内

セイノーホールディングス株式会社 代表取締役社長 田口義隆氏

従来の就職のあり方が変化する中で,
インターンシップによる教育は大きな意義がある。

学長:岐阜大学では,私が学長に就任した3年前に,2025年に向けた新たなビジョンを掲げました。その柱となるのが,岐阜の地域活性化の中核拠点になること,そして,強みと特色のある分野において国際的な研究拠点を目指すことです。地域活性化の点では,県や市町村の支援を受けながら足場ができつつあると実感しています。インターンシップを通じて様々な地域と関わりを持つ中で,最近では,地方自治体や企業側からも積極的にインターンシップの場を作っていただく機会が多くなってきました。
田口社長:いいですね。インターンシップの時に必要な教育を受けてもらえれば,卒業後,社会人としてすぐにご活躍いただけるわけですから。今後は,大学が終わってから企業に勤めるという従来の就職の流れも大きく変わっていくはずです。
学長:私もそう思います。一方,研究拠点という点においては,医学,薬学,獣医学が同じキャンパス内にあることが大きな特色ですが,今年6月には学内に岐阜県中央家畜保健衛生所が新たに開設されました。
田口社長:それは大きな需要がありそうです。私たち物流企業も含め,多くのビジネスにおいて外来生物によるリスクヘッジは必須の時代になりつつありますから。
学長:おっしゃる通りです。とりわけ岐阜県においては,畜産業はとても重要な産業の一つです。ところが,飛騨牛の飼育農家が減少しているという実情もあり,担い手の育成が急務となっています。
田口社長:なるほど。例えば,そうした分野に,海外からの留学生をインターンで派遣するのはいかがですか。留学生もかなり多いようにお見受けしますが。
学長:はい。留学生に研究者などを加えると600名ほどいます。特にアジアからの留学生が多く,最近では大学近くにモスクができ,ハラール専用の食料品店も営業しているほどです。
田口社長:そうですか。ハラールは大きな市場ですね。やはり宗教の影響力は大きい。私は多様性を認める日本の文化は,仏教が根底にあると考えています。仏教は他を排除する宗教ではないですから。
学長:確かにそうかもしれません。ちなみ御社では国際的にビジネスを展開されていらっしゃるわけですが,宗教や文化,お国柄の違いなどによって,対応に苦慮されたりすることはございますか。
田口社長:私自身,駐在経験がありますが,海外では組織運営やスタッフ管理に時間が割かれ,思うようにセールスを展開できないジレンマを抱えていました。そこで15年ほど前からはドイツに本社を置き,国際輸送を手掛ける大手物流企業と提携して輸送の実務などをお任せし,その分セールスに特化できる状況を作り出しました。現在は次の段階に移行し,海外の小売企業と手を組むことを考えています。私たちのお客様は販路を求めていますから,小売企業と連携すれば物流だけでなく販売先の確保というニーズにもお応えすることが可能になるわけです。ただ,現地ではガバナンスが効かない場面もあります。特にタイやインドネシアでは,最初は赤字でもいいからいきなり全国制覇を目指すといった企業が散見され,設備投資が過剰ではないかと心配になることもあります。
学長:なるほど。私たちもタイやインドネシアは特に農業でお付き合いが深いですが,同じような印象を受けますね。
田口社長:描くビジョンが大きいですよね。そしてスピードが速い。成長著しい国のダイナミズムを感じる一方で,検証スピードが追い付いているかどうか怖くなることもあります。

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これからの日本は,メイド・イン・ジャパンではなく
マネージド・バイ・ジャパンを強みにする発想の転換を。

学長:ところで,最近はものづくりがスマート化するとよく言われます。ただ,とりわけ中小企業では,IoTやAIといった言葉だけが飛び交い,本質が理解されずに苦慮しているところが多いように感じています。この点はどのようにお感じになりますか。
田口社長:IoTは,いわばモノが喋るということです。物流でいえば,あるものが一定数を下回ったことをセンサーで認識し,自動的にオーダーするといった流れが出てきています。そうなれば,単純な発注作業は人間がやらなくてよくなる。そこで必要となるのが,日本人が得意とするマネージする力だと思います。
学長:センサーの情報を読み替えてどうマネージするのか。そこに日本の強みが発揮されると。
田口社長:そうです。かつてはメイド・イン・ジャパンがもてはやされましたが,その技術は今や海外の新興国にどんどんと流出しています。ただ,マネージする部分は,日本が絶対的に強い。新幹線の運行管理などが代表例です。「マネージド・バイ・ジャパン」へと発想を転換すれば,大きな可能性が見えてくると思います。
学長:最近では物流業界の人材不足なども叫ばれていますが,自動運転・隊列走行の実用化についてはどのように見ていらっしゃいますか。
田口社長:技術的には,すでに高速道路での実用化は可能だと思います。不確定要素の多い市街地においてどう対応するかが課題であり,当面は,高速道路のインターで荷物をピックアップするといった流れになるのではないでしょうか。ただ,人材確保という点では,それほど逼迫感はありません。当社の場合,toBの商品が大半であり,toCのように土日の配送や再配達の手間もありませんから。それでも,これはあくまで同業他社さんとの比較のお話であって,他業界に目を向けると,決して安穏とはしていられないと感じています。

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経営に必要なのは,因数分解,PDCA,フレーミング効果。
理系学生こそ,磨けば光るセンスを秘めている。

学長:御社ではスポーツの支援にも熱心です。これは創業当初からの伝統ですか。
田口社長:実のところ,労務政策の一環なのです。全国に拠点が広がる中で,社員の気持ちを一つにするため,私の父が野球部を立ち上げたのが始まりです。ただ,祖父である創業者は「球遊びしている暇があるか」と反対し,3年で全国大会に出場できなければ廃部という条件付きでした。
学長:それは初耳です。
田口社長:その後,12年連続で社会人野球の最高峰,都市対抗野球大会に出場するわけですが,私の父が野球部長を退いた後,3年間出場が途絶えた。すると「あの時の約束を覚えているか」と休部になったわけです。
学長:そうでしたか。休部になさった時には,実業団も厳しい時代なんだと想像しておりましたが,そういう約束があったわけですね。
田口社長:2014年に都市対抗で初優勝した時も,前年,前々年と2年続けて出場を逃しており,その年に出場できていなかったら休部でした。
学長:それは厳しいですね。ちなみに御社では,野球以外のスポーツも盛んですね。
田口社長:はい。空手道部では,世界空手道選手権4連覇を成し遂げた若井敦子さんに,監督をお願いしています。また,大垣市の企業10社と共にソフトボールチームも支援しており,協賛企業の社員たちが球場に応援に駆けつけ,とても盛り上がっているようです。スポーツは,みんなをまとめる大きな力があると実感しますね。
学長:なるほど。ちなみに今,ソフトボールに関連してお話が出ましたが,大垣市内には地元に強い愛着を持ち,成功されている企業がたくさんあります。御社も創業の地は萩原町(現・下呂市)で,そこから大垣市に根付き,いまだに西濃という名称を使い続けていらっしゃるわけですが,大垣市の土地柄についてはどのようにお考えですか。
田口社長:当社の創業者が大垣市に来たのは,3つの要素があったからです。まず平野であること,2つ目に水が豊かであること,3つ目が交通の要衝であること。運送業ですから,水があるところに工場ができる。すると,運ぶ荷物が自然と出るんですね。萩原町の頃は主にダムの部材などを運んでいたのですが,大垣市に来てからは,加工製品を運ぶようになりました。また,日本の中心にあり,創業者が目指す全国制覇にもちょうど良かったわけです。大垣市に他の企業さんが根付いているのも,こうした地の利への理解があってのことだと思います。岐阜市よりも人口は少ないですが,小さいからこそまとまりがいいのも利点です。
学長:最後に,岐阜大学に対するご要望があればお聞かせ下さい。
田口社長:岐阜大学は地域のトップブランドです。学術的な部分でも日本の中核を担えるだけの差別化要因がありますし,ぜひ優秀な人材をたくさん輩出してもらい,この地域を牽引していただきたいです。これからは,東京などの大都市でなく,地方からでも世界展開ができる時代です。居住もしやすく,人材の確保やコストの面でも優位性があると思います。

学長:やはり田口社長もおっしゃるように,なんとか卒業生を地元に根付かせていきたいと思います。私たちも,岐阜に何があるのかという情報をもっと提供しなければいけないと感じておりまして,一皮むけた大学のあり方を模索しているところです。また最近では,特に理系の学生たちに,経営的なセンスを身に付けてもらえるような教育をしていきたいと動いているところです。
田口社長:理系の方は絶対に経営に向いています。経営とは大雑把にいえば,因数分解,PDCA(plan-do-check-act)サイクル,フレーミング効果の3つをうまく活用することです。物事を因数分解し,それを実験の仮説検証と同じようにPDCAサイクルで回していく。そして,フレーミング効果によって「私たちはできる」と強く信じる。これができるのは,理系の方に多いのではないかと感じます。コンサルティングファームの方々にも,実は,理系出身の方がとても多いですから。
学長:そうですか。こういったお話はぜひ理系の学生たちに聞かせてあげたいですね。

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