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熊本地震での救助活動に関する調査分析に協力。研究の経験をソフト面での防災インフラ整備に生かす。

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【警察庁警備局長感謝状が贈られました】
熊本地震での警察の救助活動に関する調査
分析に協力した功績が認められ、平成29年
6月2日、警察庁警備局長感謝状を受けま
した。

阪神・淡路大震災では,救助活動の詳細が把握できず

 私が防災に興味を持ち始めたのは、大学在学中に発生した阪神・淡路大震災がきっかけでした。未曾有の大災害を目の当たりにし、私にも何か貢献できることがないかと、防災関係の研究室を選択したのです。防災には、建築物の耐震補強などのハード面と防災訓練などのソフト面があります。私はソフト面に注目し、死傷者が発生するメカニズムの解明とそれに基づいた減災対策に関する研究を進めてきました。

熊本地震の倒壊家屋

 地震の救助活動の中心となる倒壊家屋において、状況に応じた救助ができれば、人の命を助けられる可能性が高まります。ところが、阪神・淡路大震災の救助記録を調べたところ、家屋の倒壊や閉じ込め状況、救助方法などについて、詳細な調査が行われた事例はごくわずかでした。そのため、十分な調査データがなく、救助の体系化ができていない状況が続いていたのです。
 平成27年には、警察庁において倒壊家屋からの救助訓練プログラムが開発され、倒壊現場を再現した訓練ユニットが製作されました。ただ、前述の通り、大規模災害時の救出状況を伝える情報はほとんどありません。そのため、建物の倒壊を再現してはいるものの、災害時の実態を反映するまでには至っていませんでした。そんな折、熊本地震が発生したのです。すると、私の元に連絡が入りました。災害現場を詳しく調査する必要性を感じていた警察庁の訓練担当者から、倒壊家屋における救助活動の調査協力を要請されたのです。

小山准教授が協力した熊本地震における救出救助活動の調査分析結果は、すでに警察の訓練プログラムにフィードバックされている。熊本地震後の訓練では、瓦礫など現場周辺の状況を再現しているほか、家屋に閉じ込められた人を運び出す開口部の緊急補強の訓練などが行われるようになった。

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詳細な調査分析を踏まえて,訓練を実態に即した内容に

熊本地震の前は、建物の倒壊状況と訓練設定の関連がやや分かりに
くい状況だったことから、熊本地震以後は、ユニットの前に救助プ
ロセスに関する情報をパネル掲示し、訓練の想定をあらかじめ理解
しやすいように工夫がなされている。

  熊本地震の調査は,警察庁の担当者が聞き取りを行った救助者に対し,改めて調査シートに記入してもらう形で進めました。絵を用いて倒壊家屋の状況をパターン化して示すなど,閉じ込め状況を詳しく知るために調査シートにも工夫を凝らしました。そして,収集した情報を分析した結果,阪神・淡路大震災との共通点や相違点などが浮き彫りになりました。
 熊本地震では,震度7の前震が起こったため,本震発生時にはすでに多くの救助隊が現場に駆けつけていた稀なケースです。また,余震が続き,避難所や屋外に避難していた人やすぐに屋外に避難できる準備をしていた人が多かったことで,倒壊建物数に比べると死傷者が少なく抑えられたと推測されています。救助については,柱・梁などの構造部材によって圧迫を受けている場合,救助にかかる時間が長くなる傾向などが明らかになってきました。
 こうして得た,熊本地震の救助状況の情報は,すでに訓練ユニットを用いた救助訓練に活かされています。平成29年2月,岐阜県で訓練が行われた時にも,熊本地震での倒壊家屋からの救助状況を再現するなど,調査を踏まえてより実態に即した形に進化しているのです。

防災をネガティブに捉えず,もっと明るい活動に変えたい



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  地震発生時の多くは,地域住民の手で救助活動を行う必要があります。阪神・淡路大震災においても,何千人もの方々が近隣住民の協力で救助されたと推察されています。そのため,地域防災の現場では「みなさんが助けないといけない」と言われるわけですが,地域の方々は何の訓練も受けていません。これは,二次災害を誘発させることにも繋がりかねないわけで,今回の調査を通じて救助の際の安全確保の重要性やその方法など,ソフト面での防災インフラの整備が,改めて重要だと痛感しました。
 岐阜大学では平成27年に「清流の国ぎふ 防災・減災センター」を立ち上げ,防災リーダー育成講座などを通じて地域防災を担う人材の育成に努めています。防災というと,トップダウンで動く体育会系の集団といったイメージを抱く方もいるかもしれませんが,むしろそれでは限界があります。防災には多角的な視点が不可欠です。自分ができることをやりながら多くの人を巻き込んでいく方ができることは多く,多領域に広がると思っています。またそこにイノベーションがあると思います。そして,ネガティブな印象がある防災を,もっと明るく前向きに捉え,みんなが楽しんで取り組めるものにしていければと考えています。

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