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産業界とも連携し,「太陽光発電」は実用化の時代へ

研究分野の垣根を超えて共同研究

7つの研究部門がそろい太陽光発電を研究開発

 当センターは工学部の各学科や地域科学部,応用生物科学部など,異なる分野の研究室が集まって7つの研究部門を構成し,太陽光発電の新しいシステムの研究開発を行っています。その中のひとつ,薄膜シリコン系太陽電池のアモルファスシリコンを主材料とする電池は,日本では岐阜大学が初めて研究し,世界でも3番目の研究開発です。アモルファスシリコンとは厚さ200ナノメートル(※)の極薄のシリコンのこと。量産性が高く,軽くて柔らかいため,屋根や壁など多彩な形状の場所で使えます。現在はより高性能な材料開発にも取り組んでいます。

 また,これらの薄膜シリコン系太陽電池の性能を原子構造で評価できる技術の開発や,色素が太陽光を吸収し,電気に変換する色素増感太陽電池の研究も行っています。さらに天気予報を解析して日射量を計算し,太陽光発電量を予測する研究も海外と共同で進めています。

※ナノメートル...国際単位系の長さの単位。1ナノメートルは0.000001mm。

地域や農業への応用など実用化で社会貢献へ

 太陽電池は研究開発から実用化の時代を迎えました。大手メーカーは低価格化実現に向けて努力をし,自動車メーカーは各家庭での太陽光発電システムの蓄電により,より多くの走行が可能となる電気自動車の開発を進めています。将来的には複数の村や町ごとにメガソーラーを配置して蓄電し,電気や自動車をシェアできるようになれば地域の再生や活性 化にも繋がると思います。さらにセンターでは農業への応用を始め,例えば低コストで養鶏場に冷房設備を整えるなど,新しい太陽電池の用途を模索し始めています。

 このような多くの研究や活動ができるのも,研究室間の横の繋がりがあるからこそ。また,各研究を束縛せずに任せることで,よりうまく進んでいると思います。今後も社会貢献できる開発に取り組みたいと思っています。

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未来型太陽光発電システム研究センターで取り組む研究開発

低価格で量産性の高い 「薄膜シリコン系太陽電池」

(左)ソーラーシミュレーター(中央)ボール状シリコン太陽電池搭載ソーラーカー
(右)軽くて柔らかい薄膜シリコン系太陽電池
四層分離型薄膜シリコン太陽電池製造装置

「アモルファスシリコン」や「微結晶シリコン」などを主材料とする薄膜シリコン系太陽電池。プラズマ技術などを用いる主材料の作製や,作製した薄膜シリコン系太陽電池について構造や電気的,光学的な性質を調べる研究を行い,さらなる高効率化を目指している。


岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 電気電子コース
(薄膜シリコン系太陽電池研究開発部門)
野々村 修一 教授

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ごく細い探針を使うことで,太陽光パネルの
局所的な特性を評価する「光起電力顕微鏡」。

「微結晶シリコン太陽電池」の性能を評価する
「光起電力顕微鏡」

微結晶シリコン太陽電池の局所的な特性を評価するために「光起電力顕微鏡」を開発。20ナノメートル(※)の細い針を使って微結晶シリコンの表面をなぞり,形状を観察。そこに電気を流し,また光を当てて電流の動作状況を見ながら,局所的な性能を評価する仕組みを企業と共同開発している。


岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 電気電子コース
(薄膜シリコン系太陽電池研究開発部門)
伊藤 貴司 准教授


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1メートル角の太陽電池モジュール(パネル)の構造を評価
「エリプソメトリー」による評価技術

HIT太陽電池用プラズマCVD薄膜シリコン成膜装置

物質の表面で偏光した光が反射するときの偏光状態を観測し,その物質に関する情報を集める方法「エリプソメトリー」。これを用いて,1メートル角程度の大きな太陽光パネルを評価する新技術を企業と研究開発している。薄膜シリコン系太陽電池に光を照射し,光反射から物質の光学的特性や厚みを観測することで薄膜構造の評価を行っている。


岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 電気電子コース
(太陽電池モジュール評価技術研究開発部門)
藤原 裕之 教授

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発電効率がアップする新材料「シリコンクラスレート」

シリコンクラスレートの構造模型

ダイヤモンド構造のシリコン原子にナトリウムを内包させてできる,かご状の結晶構造「シリコンクラスレート」。これを太陽光パネルの新材料として開発。シリコンクラスレートは内包物質によって性質を変え,シリコンの用途を大幅に広げる。構造が変化した後にナトリウムを抜くと,新しい半導体シリコンクラスレートとなり,発電効率のアップが期待される。


岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科
電気電子コース
(薄膜シリコン系太陽電池研究開発部門)
久米 徹二 准教授

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大学施設の屋上に設置された太陽電池。小型カメラ
(右上)で雲の動きを観測したり,赤外線カメラ(左上)
で温度を計測して不良を確認したりして,それらが発電
量に与える影響を研究している。

電力の需要供給を賢くバランス制御するシステム
「スマートグリッド(次世代電力網)」

太陽電池による発電量は,雲の動きや日射量,気温などの気象データ,パネルの角度や経年劣化などに影響を受ける。そのため発電量を正確に推定する研究や,燃料電池や蓄電池などと組み合わせて最適な電気供給システムを確立する研究に取り組んでいる。また,そうした電力供給と電力需要のバランスをコンピューターネットワークで制御する「スマートグリッド(次世代電力網)」の実証システムを開発し,可児市の花フェスタ記念公園で運用している。


岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 電気電子コース
(ハイブリッドエネルギーシステム研究開発部門)
吉田 弘樹 准教授


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赤や黄,緑,無色透明の太陽光パネル
「色素増感太陽電池」

無色透明の「シースルー太陽電池」。
発電量は少ないが,窓に貼るなど様々な場所への応
用が期待される。

太陽光を吸収する色素を使って電気を発生させる色素増感太陽電池を研究。中でも太陽光に半分以上含まれる赤外線のみを吸収するという,無色透明に近い色素を太陽電池に利用する「シースルー太陽電池」を開発。窓などに貼ると可視光を通し,赤外線のみを電気に変える。


岐阜大学工学部 化学・生命工学科 物質化学コース
(色素増感太陽電池研究開発部門)
船曳 一正 准教授


※( )内部門は,併任または兼務している研究推進・社会連携機構 未来型太陽光発電システム研究センターでの所属部門。

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