大学案内

株式会社十六銀行 取締役頭取 村瀬幸雄 氏

地域で働きたいと願う若者たちが 魅力を感じられる産業を共に創造していきたい。

学長:現在,岐阜大学では県内の人口減少に歯止めをかけるため,5年後の地元定着率20%アップを目標に掲げ,卒業生に岐阜県下で就職してもらう取り組みを進めています。ただ,こうした取り組みは大学単独では難しいものがあります。そこで,地元の企業や金融機関,さらには県内外の大学と連携しながら進めていきたいと考えています。
村瀬頭取:大学は最高学府であり,学問の追究が一番の目的であることは今も昔も変わらないと思います。とりわけ以前の大学は,世の中の流れや地域の情勢に左右されず,学問の真理を深く探究する場という印象が色濃かった。ところが最近では,こうした大学のイメージも様変わりし,人材の育成と自分の研究に加え,地域の活性化という点に重きが置かれるようになったと強く感じていますが,こうした流れには私たちも感謝しています。
学長:岐阜大学の大きなテーマも,地域といかに連携し,岐阜を活性化していくかという点にあります。岐阜大学には医学部があり,隣の岐阜薬科大学や,鳥取大学と設置した共同獣医学科と連携しながら医薬獣を広くカバーする研究を進めていける環境がありますし,金型や炭素繊維といったものづくりに関する分野において優位性を発揮しています。さらに,岐阜大学には日本で唯一となる医学教育開発研究センターが置かれており,医学教育の分野でも大きな使命を果たしています。このように様々な分野に強みを持つ岐阜大学ですが,いくら大学側がシーズを持っていても,企業が抱えるニーズにマッチしなければ意味がありません。いかに産学連携に結び付けていくのかが大事でして,その点では十六銀行さんのお力に大いに期待しています。
村瀬頭取:日本は東京一極集中だと言われて久しいですが,そろそろこの経済構造に疑問を投げかけ,国全体で解決策を見出していく時期に来ていると痛切に感じます。ただ,大学を卒業した後にこの地域で働いていただくには,私たち産業界が学生たちの期待に応えていく必要がある。地方にいながらきちんとしたキャリアが積める社会を構築していかないといけないわけです。幸い,岐阜県内には優良な地場産業がたくさんあります。繊維,陶磁器や刃物,木工といった伝統産業は,より付加価値を高めた産業へと転換し,若者を惹きつける魅力を創出していく必要があるでしょうし,航空機などのものづくりについても,ますます強くしていかないといけない。そこに岐阜大学が大きな役割を果たしてくれればと願っています。
学長:大学にはさまざまな研究機能がありますので,シーズはたくさん生み出されています。毎月,シーズを基にした発明届けが提出され,その書類に目を通し決裁しています。ただ,実際のビジネスへとつながるものは非常に少ないわけです。せっかくのシーズを活かしきれない。まさしく宝の持ち腐れの状態になっています。
村瀬頭取:岐阜大学は医学部や工学部,応用生物科学部などもあり,産業のリサーチパークとして大きな機能を発揮できる素地を備えている。これからはそういった拠点として,岐阜の魅力を掘り起こし,地域の目玉となる産業を育成していけるような大学に発展できるよう,私たちも応援していきたいと思っています。

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岐阜の中小企業には,地元にいながら
グローバルに活躍できる会社がたくさんある。

村瀬頭取:世界を見渡してみると,大都会にある大学ではなくても,地域の特色を前面に押し出し,地場産業とうまく連携しながら,高いレベルの技術や知識を集積している大学がたくさんあります。
学長:おっしゃる通りです。ドイツやフランスの地方都市では,人口5万人程度の街でありながら,特定の分野において確かな存在感を発揮している大学が多いです。
村瀬頭取:翻って岐阜大学を見てみれば,首都圏と比べて地価が安いですし,物価などのコスト面でも優位な点がたくさんあります。大掛かりな研究を進める上で恵まれた条件が揃っているわけで,今後はこうした首都圏にはない部分が大きな強みになるはずです。だからこそ,まずは岐阜大学で学んだ学生たちが地元で就職したいという気持ちを高めてもらえるような方策を考えていきたいと思います。
学長:この部分に関しては,金融機関である十六銀行さんがどのような投資をしてくださるかにもかかってくると思います。今,岐阜大学の学生に話を聞いてみても,岐阜県下に優良な地場産業があるのを知らない人が少なくありません。それぞれの産業が培ってきた伝統や文化,技術に魅力があるのはもちろんですが,給与などの待遇,福利厚生などの条件を見てみても,全国のトップ企業に全く引けを取らない企業もたくさんあります。そのことを学生に伝えると,「え,そうなんですか?」と驚かれることがとても多いです。
村瀬頭取:産業界からのアピ―ル不足もあるかもしれませんが,地場で頑張る中小企業の中には,小さくても世界を相手にビジネスを展開されている会社がたくさんありますし,海外進出をされている企業も非常に多いです。岐阜にいながらにしてグローバルな人材として活躍することは十分に可能です。
学長:先日,岐阜県下のある製造業の社長さんとお話しする機会がありましたが,すでに今は海外展開がかなり進んでいて,今後は現地法人のトップは,日本の文化や商習慣を熟知した現地の社員に任せたいとおっしゃっていまして,「岐阜大学では留学生をこうした方向できちんと育成していますか?」とご質問を受けました。
村瀬頭取:私どもの上海駐在員事務所の副所長は中国人ですが,10年ほど岐阜に住んでいましたから,単に日本語を話せる中国人というわけではなく,岐阜の文化や歴史を理解している。それがコミュニケーションにとても有効なわけです。
学長:そうですか。岐阜の地で5年,10年としっかり教育を受ける機会があった上で,お墨付きで現地に帰されたのですね。私もさまざまな企業のトップから同じようなお話しをお聞きしますが,やはり今後はこうした流れになるのが必然なのでしょうね。
村瀬頭取:今年の4月からは,日本の大学を卒業した中国人の方が,日本人と同じ就職試験を受け,結果的に内定を得て入行することになりました。今後は日本人と外国人とが同じ土俵で勝負する時代になってきたと感じます。岐阜大学で学ぶ留学生の皆さんにもぜひチャレンジしてもらいですね。

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産業構造が様変わりする中,旧来の価値観に縛られず,
時代の変化に柔軟に対応できる人材を育成してほしい。

村瀬頭取:岐阜の産業を見てみると,地場産業を含めてその大半がファミリービジネスです。現在の日本の大学では,アメリカのMBAに相当するような教育はなされていますが,地元で家業を継ぐ人や,企業を継続していく使命を持った人からすると,ギャップがあると感じます。そこで,例えば「ファミリービジネス学科」みたいなものが岐阜大学で創設できれば,全国から学生を呼び込めると思うのですが。
学長:実は大学の経営協議会の中でも,同様のご指摘を頂戴しています。そこで現在,経営やマネジメントをテーマに学べる部門を立ち上げるためのワーキンググループを準備しました。もちろんMBAを否定するわけではありませんが,中小企業の経営や事業承継,さらに最近増えているMBO(マネジメント・バイアウト/経営陣による買収)など,企業のマネジメントを網羅的に学べる場を作ってはどうかと検討を始めています。
村瀬頭取:欧州では家業をいかに継いでいくのかが大事な学問になりつつありますし,ぜひ岐阜大学でも人文系の学びを充実していただきたいですね。岐阜はものづくりが盛んですが,商業・観光も大切な産業ですから,そのあたりを学べる場を設けてほしいです。
学長:とりわけ西濃・中濃地区はものづくりの印象が強いですが,就労人口を見てみるとサービス業が非常に多い。岐阜市は8割ほどがサービス業の従事者という見方もあるそうで,地元の大学としてはこの部分も決して見逃せないと感じています。
村瀬頭取:今の若い世代の人たちが高齢者になる頃には,日本の人口が9,000万人を割り込むといわれていますが,そうなると世の中が相当変わってくるはずです。私たちの幼少時代は,1964年の東京オリンピックの開催によって新幹線や高速道路などのインフラが整備され,自動車も徐々に増えていきました。私の家庭でも冷蔵庫,洗濯機,テレビのいわゆる三種の神器が揃いましたし,国全体が高度成長期で盛り上がっていた時代でした。そんな前回と比べて2020年の東京オリンピックの後はどうなるだろうかと。私はおそらく地方にまで国際化が浸透し,岐阜の街にも当たり前のように外国人が訪れ,住み始めるような社会が到来すると予感しています。
学長:最近では人間とのコミュニケーションが可能なロボットやAI(人工知能),自動車の自動運転など,新たな技術が次々と登場してきており,2020年には産業のあり方も大きく変わっていきそうですね。
村瀬頭取:今,産業界で一番の脅威になっているのが,業界の境界線が曖昧になっていることです。例えば,百貨店の競合は今や隣の百貨店ではなく,アマゾンなどのネット企業になりつつある。家電量販店なども同じです。また,そのうちトヨタ自動車のライバルが,自動運転技術で先行するグーグルになる可能性だって十分に考えられます。銀行業界でも金融とITを融合させた「フィンテック」という造語が生まれ,ビットコインやクラウドファンディングなど,今までの銀行の仕組みを脅かすような新技術が普及し始めています。何が脅威になるか分からない。そんな時代に突入するこれからは,最高学府を卒業していい企業に就職するという旧来の成功体験にしがみついても意味がなくなるはずです。大学は,自らが目指す分野の専門性を高め,地域でキラリと光る企業を見つけることで,自分なりの価値観で活躍できるような人材を育成する必要があると思います。
学長:そうですね。私たちもそうした時代の変化に対応した教育機関でなければならないと感じます。
村瀬頭取:これからは「何が幸せか」という価値観も変わってくるでしょう。そのうち今のような東京一極集中の文化も終わりを告げるはずです。こうした新しい価値観に見合った地域を作っていくことこそ,私たちが岐阜大学と手を携えてやっていくべきことだろうと思います。きっとこの地域にはそれだけの魅力があるはずですから。

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