生体分子モーターで動く人工筋肉、光で自在に作製可能 ―マイクロ・ソフトロボットの3Dプリントの実現に期待―
岐阜大学・工学部の新田高洋准教授は、北陸先端科学技術大学院大学・先端科学技術研究科 生命機能工学領域の平塚祐一准教授(研究代表者)、大阪大学・大学院工学研究科 機械工学専攻の森島圭祐教授らとの共同研究で、筋肉のような収縮性のファイバー(以下、人工筋肉)を、光照射した場所に自在に形成させることに成功しました。この人工筋肉は、生物の動きに関わるタンパク質である生体分子モーターを遺伝子工学的に改変することにより実現しました。光の照射形状を変えることで自由な形状・大きさの人工筋肉が造形でき、ミリメートルスケールの微小機械の動力に利用できることを実証しました。この成果は将来、これまで困難であったマイクロロボットやソフトロボットの3Dプリンタによる製造への応用が期待されます。
本研究成果は、2021年4月19日(英国時間)に科学雑誌「Nature Materials」誌のオンライン版で公開されました。

人工筋肉の応用例
大きさ数ミリメートルのシリコンゴム製の微小構造の周囲に、光照射により人工筋肉を形成させ、その構造を駆動させた。
右上)マイクログリッパ:光照射後に人工筋肉(オレンジ色)が形成し、20秒後にグリッパが閉じる。
右下)昆虫型デバイス:人工筋肉により左右に動く。
左上)ロボットアーム型デバイス。左中)微小歯車の組み立て。左下)細胞サイズの微小ビーズの集積。
大きさ数ミリメートルのシリコンゴム製の微小構造の周囲に、光照射により人工筋肉を形成させ、その構造を駆動させた。
右上)マイクログリッパ:光照射後に人工筋肉(オレンジ色)が形成し、20秒後にグリッパが閉じる。
右下)昆虫型デバイス:人工筋肉により左右に動く。
左上)ロボットアーム型デバイス。左中)微小歯車の組み立て。左下)細胞サイズの微小ビーズの集積。
本研究成果のポイント
- 光照射した場所に自在な形状に作製できる人工筋肉の開発に成功
- 遺伝子工学的に改変した生体分子モーターからなる光応答性の分子システムを開発
- ミリメートルスケールの微小機械の駆動を実証
- マイクロロボットやソフトロボットの3Dプリントの実現に期待
詳しい研究内容について
生体分子モーターで動く人工筋肉、光で自在に作製可能
―マイクロ・ソフトロボットの3Dプリントの実現に期待―
論文情報
- 雑誌名:Nature Materials
- 論文名:A printable active network actuator built from an engineered biomolecular motor
- 著 者:Takahiro Nitta, Yingzhe Wang, Zhao Du, Keisuke Morishima and Yuichi Hiratsuka*
- DOI番号:10.1038/s41563-021-00969-6