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RAS遺伝子を標的にしたマイクロRNA核酸医薬の開発に成功

 岐阜大学連合創薬医療情報研究科 赤尾幸博特任教授の研究グループは、多くのがん種で変異しているRAS遺伝子1) システムの機能を阻害するマイクロRNA2) 核酸医薬3) の開発に世界で初めて成功しました。これまでに5報の国際科学論文にて報告し、その効果や作用機構について明らかにしました。今回、新しい治療法が期待されている小児希少がんである横紋筋肉腫に対する効果を確認しました。
 今回の研究成果は、日本時間2020年11月10日(火)にCancers誌のオンライン版で発表されました。

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MIR143#12の標的遺伝子とK-RAS正の制御回路

本研究成果のポイント

  • ヒトのがんの約30%にRAS遺伝子の異常がみられる。
  • RAS遺伝子、RASタンパク質に対する医薬は世界中で開発されているが有効な医薬は無い。
  • RASタンパクは構造上ポケットが無いため阻害剤の創出は難しい。
  • RASタンパクは局在から抗体医薬による阻害剤は難しい。
  • RASによる増殖シグナルはネットワークを形成しており、RASのみを阻害してもRASシステムを抑えられない。従って、複数の遺伝子の機能を抑制するマイクロRNAが効果的である。
  • 我々が開発した合成マイクロRNA143は、RASシステムを構成する複数の重要な遺伝子の発現を抑え、RASシステムを不能にしてがん細胞にアポトーシスを誘導する。そのIC504) はこれまでに検証したがん細胞では1-5 nMと非常に活性が高いことが分かった。
  • 1) RAS遺伝子: がんの中で最も頻度が高く異常を示すがんドライバー遺伝子、その異常は多岐にわたる。現在、RASの機能を抑える阻害剤はなく、世界中で開発が行われている。
  • 2) マイクロRNA: 21−25merの2本鎖RNAで複数のメッセンジャーRNA(遺伝子)に結合してその翻訳を負に調節している。
  • 3) 核酸医薬: DNA,RNAを用いた医薬品。
  • 4) IC50: 細胞の増殖を半分に抑える合成マイクロRNA143の濃度。

詳しい研究内容について

RAS遺伝子を標的にしたマイクロRNA核酸医薬の開発に成功

論文情報

  • 雑誌名:Cancers
  • 論文名:
    Synthetic MIR143-3p suppresses cell growth in rhabdomyosarcoma cells by interrupting RAS pathways including PAX3-FOXO1
  • 著 者:Sugito N, Heishima K, Ito Y, Akao Y.
  • DOI番号:10.3390/cancers12113312
  • 論文公開URL:https://www.mdpi.com/2072-6694/12/11/3312/html

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2020.11.24

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