お知らせ

ISO14001の全学認証取得をめざしています

2003年3月20日にISO14001認証を本学で最初に取得した地域科学部に加え,
2009年12月22日,大学本部と図書館が新たに認証を取得しました。
これらの認証取得および認証範囲拡大において中心となって活動しているのが,
本学地域科学部の長谷川典彦教授です。

岐阜大学は、ISO14001の全学認証取得をめざしています。

地域科学部第1期生とともに動き始めたISO14001。


長谷川典彦 地域科学部教授
     (環境対策室長)

 ISO14001と地域科学部とのかかわりは,1997年4月に入学した地域科学部第1期生にまでさかのぼります。学部生は福祉・環境・まちづくりなどに興味を持ち,全体の4分の3は文系出身,残り4分の1は理系出身,私自身も研究分野は理系という状況の中で,文系・理系の学生が融合する特性に合った研究対象を模索していました。ISO14001はコンプライアンスを重視しており,化学薬品やエネルギーなども大いに関係し,理系的なセンスが問われます。一方で,ISO14001を運用・管理していくには文系的センスも必要ということで,私自身が非常に興味を持ったのをきっかけに,学生とともに環境マネジメントシステムの研修を受けるなど,第1期生とともに動き始めたのです。
 当初はあくまでも研究対象であり,ISO14001の認証取得が目的ではありませんでした。認証取得を本格的に意識したのは,地域科学部における環境マネジメントシステムのモデル構築を第2期生の卒論で実施したころからです。これがベースとなって2002年10月1日,地域科学部でのISO14001認証取得に向けてキックオフとなりました。そこから約半年間の活動を経て,2003年3月20日に地域科学部単独での認証取得に至っています。
 キックオフ当時は,ISOといえば「お金と労力がかかる」という世間一般的なイメージがあり,岐阜大学としても同様の認識は少なからずあったかもしれませんが,地域科学部が先行して認証をめざす動きに対し協力体制を敷いてくれました。その後,地球温暖化問題が年々クローズアップされるようになり,ISOに対するイメージにも変化があったことは言うまでもありません。ここ2~3年の間に「大学として何か取り組まなければならない」「環境に配慮した活動において,大学が地域の模範になっていかなければならない」という考え方が強まり,私自身は環境対策室員としての立場からも全学への認証範囲拡大を提案し,地域科学部の環境マネジメントシステム運用の経験を生かしながら,2009年12月22日,まずは大学本部と図書館が新たに認証取得を完了したという経緯です。

学生と一丸となった取り組みを強化する。

 ISO14001についての知識を深めていくうちに,「自分たちにとって,これは数年後に必要になる」「環境マネジメントシステムにおけるPDCAサイクルは大学の運営にも活用できる」という思いが強まり,認証取得にこだわるようになりました。環境マネジメントシステムを構築するうえでは,文書作成など膨大な作業が待ち受けています。自分一人でやれると判断すれば「やります! やらせてください!」と言ってしまう性格が幸か不幸かは別として,私は「みなさんには負担をかけません」と宣言し,ゼロからすべて自分一人で,地域科学部の認証取得に向けて動き出しました。

PDCAサイクル

 しかし,やはり一人はつらいというのが正直なところでした。やがて,学部の中に委員会が発足し,若い先生方の協力を得ることになり,非常に心強かったです。2003年5月には『岐阜大学地域科学部ISO学生委員会』が立ち上がりました。現在も,講義時間外に勉強会をしたり,環境に配慮した活動に率先して取り組んでくれています。eco検定に合格した学生,ISOの経験を就職活動に生かした学生,あるいは就職先でISO14001の事務局担当に抜擢された卒業生もいます。単位にはならないにもかかわらず,こうしてISOの活動に参加してくれる学生が少しずつ増えていることは大変喜ばしいことです。

 もっともっと多くの学生がISOに興味を示し,自発的に行動を起こすようになることが今後の課題だと考えています。学生と一丸となった取り組みを強化することこそ全学でのISO14001認証取得につながるのであり,より実りあるものに発展するからです。近年の『岐阜大学環境報告書』が学生主体で編集されているのもその一環で,大学の環境配慮の取り組みを学生の目線で評価・記載している報告書は本学ならではだと思います。

環境配慮活動の鍵を握るのは人間の意識・行動。

 ISO14001に基づく環境配慮活動は,組織の業務(大学としては教育・研究)に展開されなければなりませんが,その第一歩は身近な『紙・ゴミ・電気』を減らすことです。地球温暖化の要因である温室効果ガスの排出を抑制するうえで,『紙の使用料の削減』『ゴミの減量化と再資源化の推進』『省エネルギー活動の推進』は,私たち人間の意識次第で実現できるものです。

 例えば,エアコンについては1時間のタイマー運転を推奨しています。スイッチを入れてから1時間経つと自動的にエアコンは止まりますが,しばらくの間はエアコンなしでも過ごせるでしょう。「寒い」「暑い」と感じて再びスイッチを入れ,また1時間経つと止まる,この繰り返しが結果的に空調時間の短縮になり,電気使用量の削減につながるというものです。加えて,夜の7時と10時には強制的に全館空調OFF設定にしておけば(全館空調OFF後もエアコンを使用する場合は個別で再びスイッチを入れる),タイマー運転をしていないエアコンの消し忘れ防止にもなります。こうした取り組みが大きく影響して,例えば,ISO14001認証取得後の地域科学部のH棟の年間電気使用量は年々下降線をたどり,2008年度は2003年度に比べて21%減となりました。

地域科学部電気使用量の推移

 もちろん,ハード面の環境配慮活動にもできる限り取り組んでいくことで効果は表れます。LED照明設備を採用したり,エアコンをはじめ冷凍庫などの設備を省エネタイプに順次切り替えていったり,屋上にソーラーパネルを設置して太陽光発電を活用したり,さらには壁面緑化など,本学でも計画的な導入が随所で進められています。しかし,「だから節約しなくていい」ということではありません。ハード面をいくら強化しても,使う人間の意識が不足していては効果は減ってしまいます。人間の意識・行動が環境配慮活動の鍵を握ることを,ここで改めて強調しておきます。

教職員・学生一人ひとりの『自発性』がISOに通じる。

長谷川先生

 ISO14001の認証範囲を拡大していくうえで大切なのは,教職員・学生一人ひとりの『自発性』です。「みなさんには負担をかけません」と宣言してスタートした,その原点は今も将来も変わりません。「ISOのために余分な仕事(やること)が増えた」というイメージが先行してしまうことは,最も大切な『意識・行動』の妨げとなります。これは私が一番恐れていることです。だから,取り組みを強要するようなアプローチはしませんでした。

 ひとつだけ協力をお願いしているのが,チェックシートです。温室効果ガスの排出抑制にかかわる取り組みなどについて現状確認をするもので,普段から実行しているか否かにチェックするだけです。これなら負担にはならず,みなさんしっかり答えてくれます。このチェックシートは今後も定期的に実施していきます。繰り返すうちに環境配慮活動の具体的な取り組みが意識として徐々に強まり,例えば「そういえば両面コピーを今までしていなかったな。今から始めていこう!」と次第に行動に移されることを期待しています。「両面コピーをしてください」と強要するのではなく,「両面コピーをしていますか?」と紙面で何度も問いかけ確認してもらうことで『気づき』の機会を増やしていくわけです。

 日常生活において自分が行っていることを見直す機会を与えることが『自発性』を生み,その行動がISOに通じます。この連鎖が非常に大事です。環境報告書にも明示されている通り,「業務の大きな負担増にならないようシステムのスリム化を図り,日常の業務に環境配慮の意識を持ち込むことで,環境配慮の大学運営が達成できるよう」に,今後もチェックシートを活用しながら意識づけ強化を図っていきたいと思います。

温室効果ガスの排出抑制にかかわる取り組み

何か特別なことをする必要があるわけではない。

 昨年11月27日に岐阜大学 「環境ユニバーシティ」が宣言 されました。組織の最高経営者である学長が全学でのISO14001認証取得という目標を表明したことは非常に意義があり,翌月22日に大学本部と図書館が新たに認証取得を果たしたこととも相まって,これからは『自発性』にますます拍車がかかると期待しています。一層大変にはなりますが,数年前に比べれば実績・経験も積み上げられ,ISO推進がやりやすい時代になったことは確かです。

長谷川先生

 環境への配慮とは,自分の周りを取り囲むものすべて,人と人とのかかわりも含め,それらとどう向き合い,つき合っていくかを考えることだと私自身は考えています。しかし,何か特別なことをする必要があるわけではありません。一人ひとりが『気づき』を通じて個々の行動を見直すだけで大きな効果が得られます。持続可能な社会の実現に向け,『気づき』というきっかけづくりによって教職員や学生をいかに巻き込めるか,ISO認証取得の提案者として,私はこれからもしっかり努めていきたいと思います。

2010.06.11

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