研究成果

超高温Au-Cu合金の硬化と軟化 固体とプラズマの中間相「Warm Dense Matter」の不思議

 物質は、温度や圧力に依存して4つの状態「固体」「液体」「気体」「プラズマ」をとります。フェムト秒パルスレーザーを物質に照射すると、固体とプラズマの中間相である「Warm Dense Matter」と呼ばれる特異な状態が発現します。岐阜大学工学部応用物理コースの小野頌太助教と同コース修士1年の小林大悟は、物質の性質を精密に予測する第一原理計算1)の手法を用いて、Warm Dense Matter状態にある金(Au)と銅(Cu)の合金の安定性を明らかにしました。さらに、格子振動に関する解析的な理論を適用し、AuCu合金の構造が不安定化するメカニズムを解明しました。この理論は、様々な結晶構造を持つ合金の安定性を理解するための基礎となり得ます。
 本研究成果は、日本時間2021年3月26日(金)に米国物理学会発行のPhysical Review B誌のオンライン版で発表されました。

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図.状態と温度との関係、Warm Dense Matter状態の概念図、Au-Cu規則合金の結晶構造(クリックすると拡大します)

本研究成果のポイント

  • Warm Dense Matter状態のAuCu合金の安定性を詳細に調べた結果、
    ・CuAu3、AuCu3(L12構造)は硬くなる。
    ・AuCu(L10構造)は不安定である。
    ことが明らかになりました。
  • AuCuの安定性の起源を考察した結果、
    ・固体状態では、Au-Au、Cu-Cu、Au-Cu間に作用する「長距離力」のおかげでL10構造が安定化する。
    ・Warm Dense Matter 状態では、原子間に作用する「長距離力」が弱くなるため、不安定化する。
    ことが明らかになりました。
  • Warm Dense Matter 状態において金属が硬くなる原因は、原子間に作用する「短距離力」の増大として理解できることがわかりました2)
  • 1) 第一原理計算:原子種類と原子位置の情報だけを用いて量子力学の多粒子系の問題を解き、物質の電子状態を予測する計算手法。「第一原理」とは、実験データや経験則を用いることなく、物理学の基本法則のみを用いて物性を予測する、という意味。本研究では、第一原理計算手法が実装されたQuantum Espresso というプログラムを用いて、Au-Cu規則合金のエネルギーや原子に作用する力を計算した。
  • 2) 物質中の原子間に作用する力:電磁気学に基づくイオン-イオン間のクーロン斥力と、電子が糊(のり)のような役割をすることで生じるイオン-電子-イオン間の引力の和。この2つの力が複雑に相殺することで、固体状態では原子間力の短距離部分は斥力、長距離部分は引力が優勢となる。Warm Dense Matter状態では、電子の糊としての力が弱くなり長距離部分の引力がほぼ消失する。

詳しい研究内容について

超高温Au-Cu合金の硬化と軟化
 固体とプラズマの中間相「Warm Dense Matter」の不思議

論文情報

  • 雑誌名:Physical Review B誌
  • 論文名:Lattice stability of ordered Au-Cu alloys in the warm dense matter regime
        (Warm Dense Matter 状態にあるAu-Cu規則合金の格子安定性)
  • 著 者:Shota Ono and Daigo Kobayashi
  • DOI番号:10.1103/PhysRevB.103.094114
  • 論文公開URL:https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevB.103.094114

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2021.03.30

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