研究成果

周期表の金属元素の新しい同素体を理論予測 金属同士の相性に基づく合金構造探索に新たな道

 計算物質科学1)は、計算機を利用して新物質の存在を予言し、その物性を予測する学問です。岐阜大学工学部応用物理コースの小野頌太助教は、計算物質科学の手法に基づき、周期表の金属元素(リチウムから鉛までとポロニウム)が「原子層」として安定に存在することを理論予測しました。また、安定な原子層金属を積層させることで安定な3次元結晶が形成されることを示し、この考えに基づき新しい合金の構造を予測する方法を提案しました。
 本研究成果は、日本時間 2020年10月27日(火)に米国物理学会発行の Physical Review B 誌のオンライン版で発表されました。なお、原子番号84のポロニウムの原子層を「ポロニウメン(poloniumene)」と名付けた研究成果については、日本時間 2020年7月16日(木)に Scientific Reports誌のオンライン版で発表されました。

安定構造に関する相関関係の例。三角格子を積層することで,面心立方格子または六方最密構造が作られる。この考えを合金構造の理論予測に応用することができる(右図はWC構造の概念図)。

本研究成果のポイント

  • 周期表のリチウムから鉛までの金属元素が原子層として安定に存在するかどうかを,力定数行列2)を計算する手法が実装された第一原理計算ソフト(Quantum ESPRESSO)を用いて調べました。
  • 安定な原子層の積層構造が安定な3次元結晶に一致することがわかりました。
  • この関係を、2種類以上の金属元素からなる合金系に応用しました(歪んだ蜂の巣格子構造を安定構造に持つアルミニウム(Al)と銅(Cu)に注目)。歪んだ蜂の巣格子は2つの三角格子を積層させたものであり、積層方向に周期的境界条件を課すとタングステンカーバイド(WC)構造が形成されます(上図)。そこで WC構造の合金 AlCu の格子振動3)計算を行い、この構造が安定に存在し得ることを確認しました。
  • 相対論効果を取り入れた格子振動計算を行うことで、正方格子構造のポロニウムが安定に存在することを予言し、この原子層をポロニウメン(poloniumene)と名付けました。
  • 1) 計算物質科学: 原子種類と原子位置の情報だけから物質の電子状態を計算する第一原理的手法を用いて、新物質予測(マテリアルデザイン)やその物性解明を目的とする学問。近年の計算機性能の向上に伴い、物質中の電子が従う方程式を短時間で解くことが可能になり、計算に基づく物質科学の研究が活発に行われている。
  • 2) 力定数行列: 結晶の全エネルギーを原子位置に関して2階微分することで得られる行列のこと。この行列の固有ベクトルと固有値は、それぞれ格子振動パターンとその振動数の2乗に対応する。ある固有振動に対応する固有値が負の場合、結晶はその格子振動に対して不安定であり、エネルギー的により安定な別の結晶構造に転移する。
  • 3) 格子振動: 結晶中の原子が近くにいる他の原子と力を及ぼし合うために生じる集団的な振動のこと。結晶中では格子振動は「波」のように振舞い、縦波や横波、波長の大きさなどにより振動パターンが分類される。

詳しい研究内容について

周期表の金属元素の新しい同素体を理論予測
  金属同士の相性に基づく合金構造探索に新たな道

論文情報

(1) ポロニウメン:原子番号 84 のポロニウムの原子層



  • 雑誌名:Scientific Reports
  • 論文名:Two-dimensional square lattice polonium stabilized by the spin-orbit coupling
  • 著 者:Shota Ono
  • DOI番号:10.1038/s41598-020-68877-4
  • 論文公開URL:https://www.nature.com/articles/s41598-020-68877-4

(2) 原子層金属の動的安定性



【関連リンク】

2020.10.30

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