研究成果

北海道の降水量に対するアジアモンスーンの影響を実証 ー北海道南西部・大沼の過去350年間の湖底堆積物の解析ー

 岐阜大学教育学部の勝田長貴准教授,教育学研究科の内藤さゆり修了生,池田久士修了生,北海道教育大学函館校教育学部の田中邦明名誉教授,金沢大学環日本海域環境研究センターの落合伸也助教,同センター長の長尾誠也教授,岐阜聖徳学園大学教育学部の川上紳一教授(岐阜大学教育学部名誉教授)らの研究グループは,北海道南西部の大沼の湖底堆積物と水質の研究を行い,北海道駒ヶ岳の1640年以降における噴火活動の歴史を克明に記録していること,1640年以降の北海道の夏の気候は大陸性の夏のアジアモンスーンの影響を強く受けてきたことを明らかにしました。また,大沼の湖底堆積物にはマンガン1, 2)に富む律動的な縞状構造が認められ,水文学的調査によって,この堆積構造が夏季の貧酸素化した深層水塊で形成された年縞堆積物(1年毎の縞が刻まれた堆積物)であり,その形成は夏のアジアモンスーンの降水強度を反映していることが明らかとなりました。
 本研究成果は,2020年10月2日(金)に国際誌Quaternary Science Reviews誌に掲載されました。

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北海道南西部の古気候復元図。大沼の湖底堆積物中のマンガン含有量は小氷期に増加し,1900年ごろに減少する。それと反比例するように,降水指標を示すTi/Si比やハンノキ属の花粉数は,小氷期に減少,1900年ごろに最大となることが分かり,大沼におけるマンガンの沈殿は,降水量の少ない夏季のアジアモンスーンの強度に起因していることが明らかとなった。これらの時期は,韓国や中国で復元された夏季アジアモンスーン強度指標の変動と対応しており,その一方で,これらの変動は,中海(島根県)の貝形虫の記録から復元された夏季アジアモンスーン強度とは逆位相であることが分かり,北海道の数十年規模の夏の降水変動は,中国を中心とした大陸性気候の変動を強く受けていることが明らかなった。(クリックすると拡大します)

本研究成果のポイント

  • 1640年,1929年,1996年に発生した北海道駒ヶ岳の噴火に伴う火山灰は,大沼まで到達した。
  • 大沼の堆積物には,1640年~1935年にかけて大陸性の夏の東アジアモンスーンの記録が克明に残されている。
  • 水質調査によると,菱マンガン鉱(MnCO₃)が夏季の貧酸素化した深層水塊で沈殿しており,1年に1枚の年輪として湖底堆積物に刻まれている。
  • 菱マンガン鉱の縞模様が形成された時期は,夏の東アジアモンスーンに伴う降水量と地表水の流入量が低下したことが示唆された。すなわち,この縞模様の形成は,湖の鉛直循環が安定化する期間に生じるものである。
  • 1) 菱マンガン鉱(MnCO₃): マンガンの炭酸塩鉱物。
  • 2) 大沼のマンガン: 大沼の湖底堆積物には、菱マンガン鉱できた年縞が挟まれているが、大沼へのマンガンの供給源としては、駒ヶ岳西麓の赤井川上流に位置するマンガン鉱泉が考えられる(Hariya and Kikuchi 1964)。

詳しい研究内容について

北海道の降水量に対するアジアモンスーンの影響を実証
   北海道南西部・大沼の過去350年間の湖底堆積物の解析

論文情報

  • 雑誌名:Quaternary Science Reviews
  • 論文名:
    Sedimentary rhythm of Mn-carbonate laminae induced by East Asian summer monsoon variability and human activity in Lake Ohnuma, southwest Hokkaido, northern Japan
  • 著 者:
    Nagayoshi Katsuta¹, Sayuri Naito¹, Hisashi Ikeda¹, Kuniaki Tanaka², Takuma Murakami³,⁴, Shinya Ochiai³, Yoshiki Miyata³, Mayuko Shimizu⁵, Asuka Hayano¹, Konami Fukui¹, Hitoshi Hasegawa⁶, Seiya Nagao³, Mayuko Nakagawa⁷, Kana Nagashima⁸, Masakazu Niwa⁵, Masafumi Murayama⁹, Masako Kagawa¹, Shin-ichi Kawakami¹,¹⁰
    ¹Faculty of Education, Gifu University, 1-1 Yanagido, Gifu 501-1193, Japan
    ²Hokkaido University of Education, Hakodate Campus, Hachiman-cho 1-2, Hakodate, Hokkaido 040-8567, Japan
    ³Low Level Radioactivity Laboratory, Institute of Nature and Environmental Technology, Kanazawa University, Wake, Nomi, Ishikawa 92301224, Japan
    ⁴Horonobe Research Institute for the Subsurface Environment, 5-3 Sakaemachi, Horonobe-cho, Teshio-gun, Hokkaido 098-3221, Japan
    ⁵Tono Geoscience Center, Japan Atomic Energy Agency, Toki, Gifu 509-5102, Japan
    ⁶Department of Global Environment and Disaster Prevention, Faculty of Science and Technology, Kochi University, Akebono-cho 2-5-1, Kochi 780-8520, Japan
    ⁷Earth Life Science Institute, Tokyo Institute of Technology, Meguro-ku, Tokyo 152-8551, Japan
    ⁸Research and Development Center for Global Change, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 2-15 Natushima-cho, Yokosuka 237-0061, Japan
    ⁹Center for Advanced Marine Core Research, Kochi University, B200 Monobe, Nankoku, 783-8502, Japan
    ¹⁰Faculty of Education, Gifu Shotoku Gakuen University, Takakuwanishi, Yanaizu-cho, Gifu 501-6194, Japan
  • DOI番号:https://doi.org/10.1016/j.quascirev.2020.106576
  • 論文公開URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0277379120305382?dgcid=author

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2020.10.07

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