世界初!岩石風化の'年輪'判読に成功 ~岩石の風化・劣化速度推定に応用可能~
名古屋大学博物館の 吉田 英一 教授,同大学大学院環境学研究科の城野 信一 准教授,岐阜大学教育学部の勝田 長貴 准教授,名古屋市科学館の西本 昌司 主任学芸員および英国地質調査所の研究グループは,岩石中に風化によってできる「年輪状の縞模様」の形成プロセスを解明し,その「年輪」から縞模様の形成時間を読み取ることに初めて成功しました。
同研究グループは,これまでに様々な球状炭酸塩コンクリーション(注1)の研究を展開し,その形成が非常に速いことを世界で初めて解き明かすなどの成果を示してきました。今回,その研究手法を,岐阜県長良川の河川礫から採取した流紋岩質岩石に応用し,岩石中に見られる年輪状のリズミカルな鉄バンドは,雨水や地下水中に溶け込んだ鉄イオンの岩石中への浸透と沈殿によって,これまでの推定より非常に速く形成されること,形成条件は時間を含む簡単な数式として定式化でき,鉄バンドから逆に形成時間を判読できることを世界で初めて示すことに成功しました。
今回の成果は,欧州(オランダ)国際誌 Elsevier の「Chemical Geology」2020 年7月 16 日付の電子版に掲載されました。
(注1)球状炭酸塩コンクリーション:炭酸カルシウムを主成分とする地層中(堆積岩のみ)で見出すことのできる球状の岩塊

本研究発表のポイント
- 岩石中の「年輪状縞模様」の成因を解き明かすことに成功した。
- そのメカニズムを簡略化した時間を含む数式で一般化できることを示し,時間の判読が可能となった。
- これまで,非常に遅い(数万年程度はかかる)と考えられていた「年輪状縞模様」の形成速度は,これまでの概念を覆し,1本の'年輪'(鉄バンド)が1年〜数年という非常に速い速度で形成されることを示した。
詳しい研究内容について
世界初!岩石風化の'年輪'判読に成功
~岩石の風化・劣化速度推定に応用可能~
論文情報
- 雑誌名:Chemical Geology
- 論文名: Concentric Fe-oxyhydroxide bands in dacite cobbles: rates of buffering chemical reactions
- 著 者:
H.Yoshida, N.Katsuta, S.Sirono, S.Nishimoto, H.Kawahara & R.Metcalfe - DOI: 10.1016/j.chemgeo.2020.119786