研究成果

新しいtRNA修飾酵素を発見 無酸素環境下で鉄と硫黄を含む酵素が関わる反応機構を解明

 岐阜大学工学部の横川隆志教授らの研究グループは,愛媛大学と共同でタンパク質が作られる際に重要な働きをするトランスファーRNA(tRNA)とよばれる生体高分子に含まれるアーケオシンという化合物がどのように作られるかを、世界で初めて分子レベルで解明しました。
 本研究成果は,英国の国際誌「Nature Chemical Biology」(電子版)2019年11月19日付(日本時間午前1時)に掲載されました。

本研究で明らかとなったアーケオシンの生合成経路
本研究で明らかとなったアーケオシンの生合成経路

本研究成果のポイント

  • アーキア1) 由来のtRNA2) 中に見出されるアーケオシン3) という修飾ヌクレオシドが作られる際の反応中間体となる新奇の修飾ヌクレオシドを発見した。
  • 従来アーケオシンを合成すると考えられていた酵素(ArcS)は、実は反応中間体を生成する酵素であることを明らかにした。
  • 反応中間体の化学構造を質量分析法4) 等で決定した。
  • 複数のアーキアのゲノム情報を比較することによって、反応中間体からアーケオシンを合成する酵素の遺伝子を発見した。
  • 上記の遺伝子産物であるタンパク質(RaSEA)が鉄硫黄クラスター5) を含むことを明らかにした。
  • RaSEAがArcSと複合体を形成し,無酸素環境下でのみ,アーケオシンを合成することを証明した。
  • 本研究は,tRNAが細胞内でどのように成熟するか,を理解することに貢献する。

1) アーキア:
古細菌や始原菌とよばれることもある。地球上に生息する生物は,バクテリア(細菌),アーキア,真核生物の3つのドメインに分類することができる。アーキアは形態こそバクテリアに似ているが,生命を維持するために必須な複製,転写,翻訳などの装置は真核生物に似ているため,近年,真核生物の起源はアーキアであると考えられるようになってきている。また,アーキアは炭素や窒素の地球規模の循環に関わっていると考えられることから,地球の環境研究面からも興味深い研究対象である。ただし,純粋培養が困難な種が多いため,生命現象を司るRNAやタンパク質の研究はバクテリアや真核生物に比べて大きく遅れている。
2) tRNA:
トランスファーRNA。分子量 約25,000と比較的低分子量のRNAで,タンパク質が作られる際,重要な働きをする。tRNAの末端にはアミノ酸が結合し,アミノ酸を活性化した状態でリボソームへと運搬する。リボソーム内でtRNAは,遺伝子DNAのコピーであるメッセンジャーRNAと結合することで遺伝子の塩基配列をタンパク質のアミノ酸配列へと変換するアダプター分子として働く。
3) アーケオシン:
アーキアに存在するtRNAに特異的に見られる修飾ヌクレオシド。塩基部に正電荷をもつデアザグアニン誘導体をもち,tRNAの立体構造の中心部に位置することから,tRNAの立体構造の安定化に重要な役割を担うと考えられている。
4) 質量分析法:
分子をイオン化し,質量電荷比によって分離することで,その分子の質量を正確に測定することができる分析法。分子の質量変化を調べることで反応を追跡したり,分析中に分子がどのように壊れるか調べることで,分子の構造を推定したりすることができる。
5) 鉄硫黄クラスター:
複数の鉄原子と硫黄原子が結合した構造で,一般的には,タンパク質中のシステイン残基と結合している。本研究で発見された酵素RaSEAでは,四つの鉄原子と四つの硫黄原子が三つのシステイン残基に結合した構造をもち,反応に直接関わると推定される。

詳しい研究内容について

新しいtRNA修飾酵素を発見
   無酸素環境下で鉄と硫黄を含む酵素が関わる反応機構を解明

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2019.11.19

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