治療困難である脳梗塞に対する 『末梢血単核球を用いた新しい細胞療法』の開発
岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野の下畑享良教授は,新潟大学と共同で末梢血液中に存在し,脳梗塞後の病態に関与する単核球※が,薬剤を用いない簡単な低酸素低糖刺激で,組織を修復する能力を活性化することを初めて見出しました。この細胞を脳梗塞ラットに投与したところ,その後遺症が大幅に改善しました。本発見は,脳梗塞の画期的な治療法につながるものと期待されます。
治療困難である脳梗塞に対する,この"末梢血単核球を用いた新しい細胞療法"についての研究成果が,Scientific Reports誌に2019年11月14日(木)午後7時(日本時間)に掲載されました。
※単核球:血液中にある白血球の一分画。通常は炎症に関与する細胞
本研究成果のポイント
- 酸素とブドウ糖の濃度を短時間低下させる簡単な刺激により,単核球が組織を修復する能力を活性化することを初めて明らかにした。
- 現在研究されているiPS細胞や培養した幹細胞を用いた細胞療法と比べ,発症早期からの治療ができる点,がん化のリスクがない点で,有効で安全な臨床応用が可能である。
- 専門の細胞培養施設を必要としないため,再生医療を格段に低コスト化することが可能である。
詳しい研究内容について
治療困難である脳梗塞に対する『末梢血単核球を用いた新しい細胞療法』の開発
論文情報
- 雑誌名:Scientific Reports
- 論文名:A novel therapeutic approach using peripheral blood mononuclear cells preconditioned by oxygen-glucose deprivation
- 著 者:
Masahiro Hatakeyama, Masato Kanazawa, Itaru Ninomiya, Kaoru Omae, Yasuko Kimura,
Tetsuya Takahashi, Osamu Onodera, Masanori Fukushima, and Takayoshi Shimohata - DOI:10.1038/s41598-019-53418-5
- 論文公開URL:https://www.nature.com/articles/s41598-019-53418-5