お知らせ

令和6年度岐阜大学シンポジウム「ポジティブな学校文化をつくるエビデンスの活用」を開催

 2025年2月3日(月)、岐阜大学シンポジウム「ポジティブな学校文化をつくるエビデンスの活用」をオンラインで開催しました。本シンポジウムには、全国の大学関係者、教育委員会や学校関係者、市民の方々など264名が参加しました。
 今日、不登校やいじめ、特別な支援を必要とする子どもの増加を受けて、管理職が教職員と協働して、多様な子どもが安心して学べるポジティブな学校文化を構築することが緊喫の課題となっています。その課題を解決するために、全ての子どものよさ(望ましい行動)に注目し、それを引き出し、認め合う仕組みをつくるスクールワイドPBS(ポジティブ行動支援)注1)のエビデンスが注目されています。本シンポジウムでは、管理職がエビデンスを学び活用する研修開発事業報告を行い、ポジティブな学校文化をつくるエビデンスの活用について考えました。
 第1部では、⽂部科学省総合教育政策局⻑の茂里毅氏から「管理職研修の高度化と教職大学院の役割」について、今日の公教育の在り方や課題を踏まえて、子どもの主体的な学びを支える教師、それを支える管理職に関する講演がありました。参加者から、「教育環境整備の課題を含み、あらためて学校教育の在り方、学校の教育力を高める管理職の在り方について、学び、考えた」などの感想が多く寄せられました。

第1部基調講演の様子
第1部基調講演の様子 ⽂部科学省総合教育政策局⻑の茂里毅氏

 第2部の事業報告では、本学教職大学院が現職の校長先生とともに開発した「ポジティブな学校文化をつくるエビデンスを活用する管理職研修」について報告が行われました。校長先生からは「自校の子どもや教職員の状況を踏まえて、取り組み方針を明示し、進めた結果、子どもの主体的な取り組みが増え、教職員が褒め上手になり、学校が楽しい生徒が増えた」などの報告がありました。また、教育長からは「エビデンスの教育政策上の価値を明確にし、管理職の学びを支える基盤をつくることで、子どもと教師が幸せになる」などの報告がありました。管理職研修として、エビデンスとともに、その教育的価値を認識し、学校経営の中でどのように進めるかを各自が明らかにする研修内容が重要であること、エビデンスを入手し、活用する体制をつくる必要があることが明らかにされました。

第2部事業報告の様子
第2部事業報告の様子
(上から) 岐阜大学教職大学院教授 平澤紀子、山県市教育長 服部和也氏、美山小学校校長 早川秀樹氏、美山中学校校長 高橋広美氏

 第3部の参加者交流では、基調講演や事業報告を受けて、参加者同士で意見交換を行いました。本シンポジウムを通じて、「学校が既に取り組んでいることをエビデンスの視点から可視化することが重要である」「校長が教職員や子どもに方針を伝え、進めることが学校の教育力を向上させる」などの意見交換がなされ、多くの学びを得る機会となりました。
 本学は今後もさまざまな教育機関と連携し、学校教育の充実に向けた活動を展開していきます。

注1)スクールワイドPBS:
全ての子どもを対象として、学校を安全で効果的な学習環境とするために必要な社会的文化や個別の行動支援を確立するシステムアプローチで、学校組織がエビデンスを活用する枠組みです(Sugai & Horner, 2009)。教育制度(IDEA)に位置づけた米国を中心として世界的に拡大し、日本でも徳島県や宮崎県、山県市では教育振興基本計画に位置づけて取り組んでいます。スクールワイドPBSの中心的な要素は、子どもの良さに注目し、それを引き出す環境を整え、認め合う仕組みをつくるものであり、それにより子どもの社会的行動や学業、学校文化が向上し、問題行動が減少することが明らかにされています。わが国の学校教育への親和性も高く、安心して学べる学校づくりに資することが明らかにされています。