10月3日は「糖鎖の日」~糖鎖をもっと身近なものに!~
本学と名古屋大学が連携して活動する糖鎖生命コア研究所(以下、iGCORE)は、研究者、リサーチ・アドミニストレーター、事務職員が協働し、「糖鎖」研究の推進と「糖鎖」に関する研究・知識の普及を目指しています。このたび、10月3日が一般社団法人 日本記念日協会から、「糖鎖(とうさ)の日」に認定されました。これを契機に、本学と名古屋大学は、「糖鎖」研究の推進と「糖鎖」に関する研究・知識の普及の重要性についてさらなる啓発活動を幅広く行っていきます。
「糖鎖の日」制定の背景
「糖鎖」は、我々の全ての細胞の表面を覆い、個々の細胞の個性を決め、細胞と外界(他の細胞や病原体など)とのコミュニケーションを制御していることから、特に、免疫や神経の機能、老化、また感染症、がん化、認知症など、多くの生命現象や疾患に密接に関わっています。さらに、タミフル等の「糖鎖」を標的とした医薬品が有効であることや、最近ではがん治療などに用いられる抗体医薬の効果が「糖鎖」を変えることによって100倍程度に高まるなど、糖鎖研究が医療へ応用できることがわかってきています。
iGCOREは、世界トップレベルの糖鎖合成・糖鎖イメージング(岐阜大学)、糖鎖生物・糖鎖医学(名古屋大学)分野のほか、糖鎖分析、糖鎖数理モデルを含むさまざまな分野の両大学の研究者が集結する世界で無二の統合的糖鎖拠点を形成し、世界の糖鎖研究をリードしています。
iGCOREは、「糖鎖」をもっと身近なものにするため、10月3日を10(とう)3(さ)の語呂を踏まえて、「糖鎖の日」と制定しました。「糖鎖」に関する研究・知識の普及とその重要性について啓発活動を幅広く行っていきたいと考えております。
iGCOREの主な活動
iGCOREは、2022年4月から国内外の研究者の学際的連携を支援する「糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点(J-GlycoNet)」を他機関と共に形成し、文部科学大臣による共同利用・共同研究拠点として認定を受けています。
さらに、2023年4月には生命科学領域として初となる、文部科学省「大規模学術フロンティア促進事業」として、オールジャパン体制で「ヒューマングライコームプロジェクト(HGA)」を本格的にスタートさせています。
本事業では、岐阜大学と名古屋大学が連携し、東海国立大学機構が実施する連携拠点支援事業(糖鎖生命コア研究拠点)としての支援を得ながら、世界と伍する研究拠点を目指しています。
糖鎖とは?
「糖鎖」は、糖が鎖のようにつながった構造の⽣体物質です。その糖の種類・つながり⽅の組み合わせは膨⼤で(図1)、様々な性質・形を持つこと、様々な情報を詰め込むことができます。このことから、糖鎖は核酸、タンパク質と並んで「第3の⽣命鎖」と呼ばれています。
図 1
我々の⾝体は37兆個もの細胞からなります。神経、筋⾁、肝臓、腎臓、⾎管...様々な種類の細胞が連絡を取り合い、協調して我々の⾝体を動かし、⾝体を維持しています。
すべての細胞の表⾯は、糖鎖に覆われています(図2)。しかしすべての細胞が同じ形の糖鎖を持っているわけではありません。細胞は、種類に応じて必要な形の糖鎖を作り出しています。神経に特徴的な糖鎖、肝臓に特徴的な糖鎖...あたかも、細胞の「顔」のように個性を持っています。
細胞が⾃分の役割を果たすとき、お互いの細胞を⾒分けるとき...様々な場⾯でその特徴的な糖鎖構造が活躍します。
図 2
【糖鎖の例:ABO の⾎液型】
私たちの⾎液のABO式⾎液型。じつは「糖鎖」のわずかな形の違いで決まっています。⾚⾎球の表⾯にある糖鎖の形が、A型、B型、O型の⼈では違うのです。その違いはわずか糖1個。この糖鎖の違いで、私たちの⾝体は⾃分の⾎液かどうかを⾒分けています(図3)。
図 3
【糖鎖の例:ウィルス感染と糖鎖】
毎年流⾏するインフルエンザウィルス。インフルエンザウィルスは、細胞の「糖鎖」を⾒極め、接着し、侵⼊して感染します。インフルエンザウィルスに効くオセルタミビルなどの薬は糖鎖研究から開発されました。