第15回教養講演会(NHK大学セミナー)を開催しました

令和6年6月24日(月)に、岐阜大学教育推進・学生支援機構基盤教育センターとNHK岐阜放送局の共催により、第15回教養講演会を開催しました。今回の教養講演会は、2003年度からNHK(日本放送協会)が実施している、番組制作者や出演者を各大学に講師として派遣し、講演を行う「NHK大学セミナー」の一環として催されました。対面・オンラインの併用で行われた今回の講演会には、学生・教職員ら167名が参加しました。
開催にあたっては、NHK岐阜放送局の全面的な協力のもと、NHKエンタープライズ(NEP)エグゼクティブ・プロデューサー堅達京子氏をお迎えし、「持続可能な社会を目指すには-将来のエネルギー供給体制、世界規模の環境問題・気候変動について考える-」というテーマで講演が行われました。
堅達氏は、NHK在籍時から長年環境問題に取り組み、気候変動問題を中心とした多くのテーマ番組を制作されてきたプロデューサーです。講演では、近年プロデュースされたNHKスペシャル「2030 未来への分岐点」、NHK・民放6局連動の環境特番「1.5 ℃の約束 いますぐ動こう、気温上昇を止めるために」などを踏まえ、世界規模で発生している温暖化の現状、またそれによって引き起こされる危機について話されました。
近年、地球全体の平均気温の上昇により、海面上昇や大雨による洪水などが発生し、他方で別の地域では干ばつが起こるなど、地球環境の大きな変動が起こっています。今後、仮に平均気温が2.0℃以上上昇した場合の試算では、こうした事象がより大規模に、より頻繁に起こるだろうと言われています。しかし、これを1.5℃に抑えることで、この変動を最低限にとどめることが可能になります。また、気候変動については後戻りすることができない転換点(Tipping Point)が存在し、一度この分岐点を超えてしまえばもはや地球はそれ以前の状態に回帰することができません。現在、この気候変動はそのラインに迫っており、堅達氏は、この10年に行う私たちの選択や対策が、今後数千年の地球環境、ひいては人類の幸福に影響するということを、強く訴えられました。そして、こうした危機的な状況の回避には、私たちの一人一人が自分自身に何ができるかを考え、実行し、さらに呼びかけていくことが重要である、という認識も示されました。
また、堅達氏は、地球の温暖化が驚異的な速さで進んでいるということを映像や図などを用いて学生にもわかりやすく解説しました。そのインパクトは非常に大きく、学生はもちろん、一般参加者や教職員にとっても、今後自分たちがどう行動していくべきか、次世代へどのように繋げていくかを深く考える機会となりました。
講演後の学生からの意見や感想には、「環境問題はなんとなく聞いてはいたがこれほどまでに危機的状況であるという認識がなく、今後の我々自身が行動していかなければならないということがよく分かった」、「先進国が化石燃料の恩恵を受け、途上国は貧しくその恩恵を受けていないにもかかわらず水面上昇や異常気象による大洪水などで多くの犠牲をこうむっているなどの公平性が大きな問題である。日本も先進国として責任を果たさなければいけない」、「私たちのような若い世代でも諦めないで訴え続け、まずは行動することが大事だと思った」といった内容があり、堅達氏の講演内容がしっかりと学生に伝わっていました。
今回、講師としてお招きした堅達氏の知識の深さ・経験の広さに裏打ちされたお話をうかがうことができ、また多くの未来ある学生に地球規模の問題について真摯に考えてもらう機会となり、たいへん有意義な講演会となりました。今後も岐阜大学は、こうした講演会などを通じて、学生や地域社会の皆様と共に地球環境の保全と持続可能な社会の構築に向けた取り組みを進めてまいります。

