お知らせ

教育学部理科教育講座 仲澤和馬 シニア教授が 「2020年度(第66回)仁科記念賞」を受賞しました

受賞の概要

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 令和2年11月9日(月)に、岐阜大学教育学部理科教育講座 仲澤和馬シニア教授の「2020年度(第66回)仁科記念賞」の受賞が発表されました。
 仁科記念賞とは、故仁科芳雄博士の功績を記念して、わが国で原子物理学とその応用に関して優れた研究業績をあげた研究者を表彰するために1955年に創設され、毎年3件以内の研究業績が選ばれます( 仁科記念賞)。
 今年度、仲澤シニア教授の「原子核乾板を用いたダブルストレンジネス原子核の研究」に対して、受賞が決まりました。

研究内容

 身近な万物(ヒトも含め)は原子でできており、原子はわずか3つの粒子(電子、陽子、中性子)の組み合わせで多種多様な性質を帯びます。原子の中心にある原子核を構成する陽子・中性子は、さらに小さいアップ、ダウンという2種類のクォークで作られます。ストレンジネスはアップ・ダウンと異なる3番目のクォークの名前で、そのストレンジクォークを二つ持つ原子核(ダブルストレンジネス原子核)を特殊な写真乾板(原子核乾板)中に作ろうと実験を重ねてきました。

 2001年、原子核乾板を顕微鏡で観察しながらヘリウム原子核にストレンジクォークを一つ持つ(ラムダ*1)粒子を二つ閉じ込めた原子核 ( 長良イベント[NAGARA event]図1と命名)を世界で初めて発見しました。そして2018年には、やはりラムダ粒子を二つ持つベリリウム原子核 ( 美濃イベント[MINO event]図2と命名)を発見しました。さらに2015年、ストレンジクォークを二つ持つグザイ*1粒子を窒素原子核に閉じ込めたグザイ原子核 ( 木曽イベント[KISO event]図3と命名)の世界初の検出に成功しました。原子核物理学は新種の原子核の発見により発展してきましたが、今後ストレンジクォークを二つ含むいろいろな種類の原子核の発見が期待されます。また、ラムダ粒子は電気的に中性ですが、中性子同士のように二つのラムダ粒子の間に引力がはたらくことも判明しました。グザイ粒子と原子核との間も引力であることが分かりました。このような力は、原子核固有の性質を明らかにするだけでなく、超新星爆発後に作られる高温・高密度な中性子星の構造の理解を促すと期待されています。特に最近発見されている、太陽質量の2倍(半径は約10 km)もある中性子星の存在と、ラムダ粒子間やグザイと原子核との間にはたらく引力は相いれないとする「ハイペロンクライシス」と呼ばれる状況*2に、多くの研究者が解決に向けて取り組んでいます。
 仲澤シニア教授は、高エネルギー加速器研究機構および大強度陽子加速器(J-PARC)を基盤とする上記実験を、双方の施設、京大、東北大や阪大など国内外24大学・施設の約100名の学生・研究者との共同研究として主導するとともに、本学の学生・若手研究者らと長良、木曽や美濃イベントなどの検出を進めてきました。

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図1.長良イベント(クリックすると拡大します)

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図2.美濃イベント(クリックすると拡大します)

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図3.木曽イベント(クリックすると拡大します)

  • *1) ラムダ粒子とグザイ粒子は、それぞれ陽子より1.2倍および1.4倍重く、それらを加速器で作っても、100憶分の一秒で寿命が尽きてしまう。
  • *2) 仲澤和馬、高塚龍之「超巨大ハイパー核としての中性子星―混在ハイペロンの謎―」、丸善出版、パリティ、Vol.31 No.04 (2016) p.12

2020.11.13

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