お知らせ

新型コロナウイルス感染症の取組について有識者と鼎談を行いました

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 本学は,9月24日(木)に村上啓雄名誉教授(一般社団法人ぎふ綜合健診センター所長,岐阜県新型コロナウイルス感染症対策調整本部座長)を招き、森脇学長及び福井副学長(企画・教育・評価・基金担当)と鼎談を行いました。
 本学は,対面授業や学生同士のコミュニケーションの重要性を考慮し,なるべく対面授業が実施できるよう授業実施方針や課外活動の活動指針を示し,6月から対面授業を一部開始しています。しかし,新型コロナウイルスに関する多くの情報に惑わされて,登校することを躊躇している学生の存在があることも認識しています。そこで,新型コロナウイルスに関する知識を持ち,「正しく恐れ,正しい対策をとる」ことの重要性を理解していただき,学生だけでなく保護者や教職員の不安解消につなげたいと考えて本鼎談を企画しました。 以下が鼎談の内容となります。

岐阜大学の授業実施方針について

各自の体調管理,マスクの着用,手指消毒の徹底が大切です。

司会者(福井副学長):前学期において対面授業開始に踏み切った本学の教育に対する考え方や当時のお気持ちをお聞かせください。

20200924_2.jpg 森脇学長:大学教育は知識習得のみを目的とするものではなく,事象に対する判断や考え方などを学ぶことができ,それを学べる対面授業は大学教育の根幹を成すものだと考えています。また,授業にe-Learningを導入する場合においても,その質を担保することが重要です。
岐阜大学は,大学教育の質の保証を担保しながらe-Learningと対面教育のベストマッチに取り組むという理念のもと,まずはe-Learningを全面的に導入し徐々に対面教育に移行してきました。10月からの後学期においても,対面教育を重視し拡充していく方針です。

司会者:本学は前学期から授業実施方針を定め,新型コロナウイルスの感染拡大防止に留意しながら授業を行ってきました。本学の対応をご紹介ください。

森脇学長:マスク着用や手指消毒の徹底を呼び掛けるとともに,通学の混雑緩和のため授業時間を変更しました。e-Learning形式の授業においては,学生のネットワーク環境や課題提出への配慮を行うとともに,機器購入の支援等を行いました。
また,大学に登校する学生の数が50%程度になるよう授業を調整するとともに,教室内の着席位置の把握や教室の換気,学生間の距離の確保などに取り組んできました。

司会者:本学の授業実施方針に対してどのような感想をお持ちでしょうか。

村上名誉教授:多くの大学が人と人の接触を避けるためe-Learningを中心に考えている中,岐阜大学は対面教育の重要性を考慮し両者をうまく連携している点は大変素晴らしいと思います。
まずはマスクをしっかり着用させること,手指衛生を正しく徹底させること,また,体調管理を徹底したうえで,授業を実施する必要があります。併せて,着座位置の確認や換気など,対面授業を実施したとしても感染が生じない対策が取られていると思います。

司会者:前学期は登校する学生数を50%程度に抑制していましたが,後学期は60%程度とするよう規制を緩和しました。その点についてはいかがでしょうか?

村上名誉教授:プロスポーツの収容人数も緩和されおり,少しでも緩和の方向に向かうために60%にされたものと推測しています。全面的な緩和に向けて気持ちの面で少しずつステップを上げるという面では,60%に緩和したことはよいのではないかと思います。

司会者:保健所の指導によれば,教室の学生間の距離を1m以上開けることが望ましいと言われており,本学でも対応していますが,教室の収容人数等を考慮すると必ずしも1m開けられない教室も見受けられるようです。その点はいかがでしょうか?

村上名誉教授:それはマスクを着用していない状況での距離であり,マスクを全員着用している状況であれば飛沫やエアロゾルは発生せず,飛沫感染のリスクは生じません。マスクを着用したうえで,1m程度以上の間隔を取りましょうということだと思います。

司会者:前学期から体調管理の徹底や着座位置の記録などに取り組んできています。後学期もこのまま継続すればよろしいでしょうか?

村上名誉教授:教室内でクラスターが発生することはないと思われますが,感染者の近しい友人などが接触者検診の対象になる可能性があります。接触者を正確に把握するには行動履歴や着座記録などは重要であり,感染拡大の防止のため,継続して取り組んでいただきたいです。

森脇学長:学生に対しては行動履歴を記録するためのシートを配付しています。また,食堂でも,座席数を削減するなど周密状態を避ける工夫を行っています

バスや電車での感染予防について

マスクを着用し,会話は最小限にしましょう。

司会者:バスや電車を利用して通学している学生から,通学時が不安であるといった声が届いていますが,それらに対する本学の取組をご紹介ください。

森脇学長:バスの混雑が不安であるという声を踏まえ,バスの増便を行い,前学期では朝6便夕方4便を増便しました。前学期の乗車率を考慮し,後学期には夕方のみ6便増便することとしています。
また,学生も含めた乗客に対する注意喚起として,時差通学の推奨,マスク着用の促進,車内会話の自粛をお願いするアナウンスを私の声で作成し流す予定です。また,接触確認アプリCOCOAの利用推奨も予定しています。

20200924_3.jpg 司会者:JRやバスなどの公共交通機関を利用して通学する学生が注意すべき点や,不安解消につながるアドバイス等があればお聞かせください。

村上名誉教授:マスクを着用すること,車内での会話を最小限とすることを守れば感染リスクを抑えることができます。感染しているけれども症状が無い者が存在しているなかで,誰しもが感染している可能性を考慮して全員がマスクを着用していれば,飛沫やエアロゾルは発生せず,新型コロナウイルスには感染しません。ただ,接触感染もあり得るため,電車やバスのつり革などを触った手を口や顔に持ってこないことや乗車前後に手指衛生を行うことなどにも留意してほしいですね。
たとえマスクを着用していない乗客がいたとしても,バスは十分な換気を行っていることや自身がマスクを着用していること,会話は最小限とすることを守れば,ある程度密の状況でも感染リスクの不安を持つ必要はありません。

サークル活動時の留意事項について

会食や飲食を伴う長時間の話し合いなどは避けましょう。

司会者:学生にとっては,サークル活動などの課外活動は大学生生活の中で有意義な活動の一つであると思いますが,課外活動に対する本学の現在の対応状況をご紹介ください。

森脇学長:サークル活動を再開したいという声は早い段階から聞こえてきていました。また,サークル活動は大学教育や大学生活にとって重要であると認識しています。9月14日付で,課外活動の活動指針レベルを3から2に下げ,感染防止策を講じたうえで屋内でも課外活動をできるようにしたところです。ただし,会食を伴うものや密閉空間,密集場所,密接場面となる行事等は,中止としています。

村上名誉教授:活動指針の内容はすべて適切だと思います。特に,会食や合宿の中止を継続した点は重要です。他の事例を見ると,スポーツ中ではなく会食やコンパなどで感染していることが多いです。活動指針レベルを下げたことで感染リスクが高まったわけではなく,会食や合宿の禁止をしばらく継続することで安全に活動できると思います。

PCR検査の実施やインフルエンザ予防について

まずは感染予防策を徹底。新型コロナウイルスの感染予防策は,インフルエンザの予防にも有効です。

司会者:PCR検査の実効性についてはどのようにお考えでしょうか。また,インフルエンザの流行時期も近づいており,気を付けることなど専門家からのアドバイスをいただけないでしょうか

20200924_4.jpg 村上名誉教授:PCR検査が陽性であればウイルスを保有していることになりますが,ウイルスを保有していても陰性と判定されるいわゆる偽陰性が最大3割程度存在しています。また,偽陰性に加え,新型コロナウイルスの潜伏期間等を踏まえると,感染当初の時期は陽性にならないこと,PCR検査で陰性であったとしても数日後も陰性であり続ける保証はないことがPCR検査の限界であると考えます。このことから,PCR検査が陰性であったとしても遅れて陽性になる場合もあり,保健所は濃厚接触者に対して14日間の自宅待機と健康観察を要請しています。
仮に対面授業の再開時にすべての学生に対してPCR検査を行って陰性であったとしても,偽陰性の疑いがあるため,何も対応せずとも良いのかという問題があります。インフルエンザの際も,偽陰性の方から感染が広まった事例があります。
体調管理やマスクの着用などを徹底していれば感染が拡大することはないと考えられるため,全員へのPCR検査の実施よりも感染予防策の徹底の方がより現実的な方策だと思います。全員がマスクを着用する環境であれば,やみくもにPCR検査を行う必要はありません。

インフルエンザは新型コロナウイルスよりも比較的接触感染が目立ちますが,現在の感染防止措置が継続する以上はインフルエンザの感染が爆発的に増えることはないと思われます。現に,夏場に流行する他の感染性疾患も激減しています。体調不良時の安静,マスクの着用,手指消毒の徹底など,引き続き感染防止措置に取り組めばインフルエンザの感染者も減少するのではないかと期待しています。

第3波,第4波が起こった場合の対応について

現在と同じく,まずは感染予防策を徹底しましょう。

司会者:今後,もしコロナウイルス第3波,第4波が起こった場合の本学の対応についてお聞かせください。

森脇学長:警戒は怠らず,感染防止措置を含んだ取組を維持していきたいと思っています。もし第3波,第4波が起こった場合は,大学内に限った問題ではなく,社会の状況を常に注視していく必要があります。岐阜県や岐阜市などの関係機関と連携し,早めに対応していきます。併せて,村上先生にもご指導いただきたいと思っています。

司会者:今後,もしコロナウイルス第3波,第4波が起こった場合の心構えやアドバイスがあればお願いします。

村上名誉教授:ウイルスはある一定の期間で活動が収束する傾向にありますが,人に感染すれば増殖してしまいます。第3波,第4波が起こったとしても,新たな取り組みを行うわけではなく,現在と同じ感染防止策に取り組む必要があります。ほどんどの方がマスクを着用していれば感染は拡大しません。

今後の大学教育などについて

対面授業とe-Learning授業のベストミックスを求めていきます。

司会者:いわゆる「ポストコロナ時代」を見据えた本学の教育方針や大学教育の在り方などお聞かせください。

森脇学長:大学教育の基本は対面授業です。一方,本年度に初めて大規模なe-Learning教育の導入を経験し,e-Learning教育の良さもわかってきたところです。科目によってはe-Learning教育による教育効果の向上も想定でき,それぞれの良さを活かした対面授業とe-Learning授業のベストミックスを求めていきたいと考えています。コロナの危機を乗り越えて新たな教育を目指していきます。

司会者:コロナウイルス流行以前のような平穏な日々は訪れるのでしょうか。

村上名誉教授:国際的なデータを見ても,再び増加傾向にあります。ただ,日本では感染者数は確実に減少しており,この事実にある程度自信を持ちつつ感染防止策を実施していくことで,一定の期間を過ぎれば感染状況も落ち着いていくのではないでしょうか。一人一人が感染予防策を徹底することにより,感染防止策と日常の楽しみとの両立もできつつあるのではないかと感じています。将来的な状況はまだ見通せるわけではありませんが,夜明けは来るものと思っています。

司会者:「正しく恐れ,正しい対策をとる」ことを習慣づけることで,将来の平穏な日々に近づいていくと理解しました。 本日はお忙しい中,ありがとうございました。


参考情報

  • 1. 昼食時においては,全学共通教育棟の一部教室を開放するとともに,岐阜大学生協第一食堂のパーティションを増設し食事に利用できる席を増やします。
  • 2. バスの混雑緩和のため,帰宅時の時間帯において,岐阜大学からJR岐阜駅に直通するバスを増便します。
  • 3. 本学保健管理センターのホームページにて、「岐阜大学における新型コロナウイルス感染症対策について」を公表しています。


2020.09.30

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