お知らせ

【研究成果】永田知里 教授(医学系研究科)の研究成果が米国の臨床栄養学雑誌『Am J Clin Nutr』(H29.2.1版)に掲載されました

 永田 知里 教授(医学系研究科,疫学・予防医学分野)らの研究チームは,納豆をよく食べる食習慣を持つ人はそうでない人に比べて,脳卒中で亡くなるリスクが約3割低いとする研究成果を発表しました。(米国の臨床栄養学雑誌『Am J Clin Nutr』(H29.2.1版)に掲載。)

永田 知里 教授

 納豆をはじめとする大豆製品に含まれる酵素などが,脳卒中の死亡リスクを減らす可能性についてはこれまで言及されてきましたが,実際の研究成果として明確に示されることはありませんでした。
 永田教授らの研究チームは,1992年に岐阜県高山市在住の男女約3万人の食習慣などを詳細に調査し,その後16年間追跡調査を行って食習慣と死亡リスクとの関係を調べました。すると,納豆を日頃からよく食べる人はそうでない人に比べて,脳卒中で亡くなるリスクが約3割低いことを示すデータが得られ,このたび研究成果として論文発表しました。

 この成果について,岐阜大学広報企画室において永田教授へインタビューを行いました。

【Q1】高山市をフィールドとして実施した16年間の調査について教えてください。

1992年に実施した生活習慣調査
の表紙

 私たちはコホート研究と呼ばれる手法を用いました。
 コホート研究は,特定の要因を持つ集団とそうでない集団を一定期間追跡し,例えば脳卒中で亡くなった割合はどうであったかを比較することで,その要因と死亡リスクとの関連を調査するという方法です。今回は,1992年に高山市に在住する約3万人に生活習慣を詳細に尋ねるアンケート調査を行い,その後16年間に渡って追跡し,様々な死亡リスクとの関連を調べました。(高山スタディと呼んでいます)
 様々なデータが得られましたが,その中でも特に顕著であったのが,今回発表した納豆摂取と脳卒中死亡リスクの関連でした。



【Q2】なぜ高山市で調査を行ったのですか。

生活習慣調査の1ページ
(あらゆる食品について,「昨年どのくらいの頻度で食べたか」を
問う質問がずらりと並びます)

 まず,特殊な集団ではなく,様々な生活習慣を持つ一般の方々を対象としたい,また,高山市は人口移動が少ない地域であることから,従来から当研究室においてコホート研究の対象地域としており,私も継続的に研究に関わってきました。
 1992年に実施した生活習慣を尋ねるアンケートは膨大な質問数からなる調査ですので,ご協力いただいた方には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。






【Q3】長期間にわたる調査に,どんな気持ちで取り組んでいますか。

 コホート研究全般に言えることですが,いわゆるメカニズムを明らかにする実験等とは違い,数十年に渡って地道な作業を繰り返すこととなります。今回の16年間の追跡調査は(コホート研究としては)決して長期間ではありませんが,皆さんにアンケート調査にご協力をいただいて成り立っている研究ですので,膨大なデータの中から何か役に立つ知見を得られればという気持ちで,毎日取り組み続けています。


【Q4】今後の研究の展望や,Webサイト閲覧者へのメッセージをお願いします。

 私たちの研究は本当に地味な作業ですが,「人のライフスタイルと病気との関係が直接的に分かること」が最大の魅力だと思っています。
 高山スタディで得られたデータについては,今後も研究室をあげて分析を行います。追跡は16年間で一区切りとしますが,皆さんのご協力があって得られたデータを,引き続き責任もって分析したいと考えています。
 今後も疫学の発展に少しでも貢献できるよう,取り組んでいきます。


2017.02.24

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