「背圧絞り加工法」により,低荷重でボス付筐体を成形することに成功【工学部・王教授ら】
受賞研究のポイント
板鍛造(たんぞう)において,新しい成形法として背圧絞り加工法を検討したところ,以下の成果が得られました。
- 絞り加工において自然生成される引張応力をボス(打出し突起部)成形の補助力として活用し,従来法の後方押出し加工の約半分のパンチ荷重で成形可能。
- 成形荷重の増大および成形欠陥の生成を抑制する片面潤滑法を考案し,高いボスをもつ薄肉筐体(きょうたい)を成形可能にしました。
受賞内容
平成25年6月7日,本学工学部・王志剛教授の研究グループの成果が,日本塑性加工学会(1961 年設立,会員約3700名,日本学術会議協力学術研究団体)の学会誌論文賞を受賞しました。
研究の特徴
現在,電気・電子機器,モバイル機器を中心に小型化,軽量化,低コスト化の要求が強くなっています。その中で筐体や外装の質量は,製品全体の質量に対して割合が高く軽量化に対し重要な要素であり,薄肉化や部品数削減の要求は強い。そのような部品に一体型のボス部を成形すると,位置決めや締結が容易となり,さらに部品数の削減につながります。薄板に対してボス部を成形する加工法として後方押出し加工法が多用されています。しかし,材料を後方へ押し出す際に,材料底面に抵抗力が働くため,後方押出し加工法は非常に大きな加工荷重が必要であるという欠点があります。
そこで,新たな加工法として"背圧絞り加工法"を提案しました。背圧絞り加工法とは通常の絞り加工中に,パンチと対向するカウンターパンチにより背圧をブランクに負荷し,ブランク底面に対し圧縮力を作用させ,絞りによる筐体成形と同時にボス部を成形する加工法です。絞り過程によって成形品の壁面および底面には張力が作用し,底部材料の降伏面圧が低下します。さらに,面圧低下に伴い摩擦抵抗が低減され,加工荷重の低下が予測されます。荷重低減が可能となれば,高強度材料の加工が可能となることや,低出力プレスでの加工が可能となるなどのメリットが期待できます。
今回の受賞研究では,その背圧絞り加工法の効果が検証されました。
受賞論文
- 論文タイトル:背圧絞り法による中実ボスの成形
- 論文著者:王 志剛,森下 圭一,安藤 透
- 論文巻号:日本塑性加工学会誌「塑性と加工」Vol.53(2012) No.616 P429-433
- 論文URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sosei/53/616/53_429/_article/-char/ja/
2013.07.04
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