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樹種や場所に関係なく,伐採せずに樹木の重さを推定できる式を作ることに成功【応生 小見山教授・加藤准教授ら】

受賞研究のポイント 】                ・  【 受賞内容
受賞研究の特徴 】                 ・  【 受賞論文

受賞研究のポイント

 いままで森林のバイオマスを計測するときに,樹木の個体の重さをどのように推定するかが問題でした。
 今回,樹形理論に基づいて作成した個体重の推測式を考案したことにより,

  • 森林伐採せずに,樹木の現存量や成長量を推測することを可能としました。この式は場所にかかわらず,ブナ帯など冷温帯に生える樹木に適用できます。
  • 従来の経験的方法よりも推定誤差が小さく,より精度が高くなりました。

受賞内容

 本学応用生物科学部・小見山章教授,加藤正吾准教授の研究グループの成果が,日本森林学会(1914年設立,会長:井出 雄二・東京大学教授,会員約3000名,日本学術会議協力学術研究団体)の学会誌論文賞を受賞し,2013年3月開催の第124回日本森林学会大会にて表彰式が行われました。

受賞研究の特徴

 森林のバイオマスの推定は,木材など森林資源量の推定そして環境保全機能の評価にとってとても重要な指標です。しかし,樹木は巨大な生物であり,地下の根部分も含めた個体重を測定することはなかなか困難です。いままで,幹の直径と樹木の高さなどを実測した上で,樹種・場所毎に個体重を推測する方法(相対成長式)が利用されていました。ところが,この相対成長式は,林分(区別できるひとまとまりの森林)や樹種によって異なる場合が多く,しかも,この式を作成するために数十本の樹木を伐採する必要がありました。根の重量はとくに推定が困難でした。
 受賞した論文では,樹木の体が作られている生物的な大原則をもとに,幹の直径と比重から個体重を推定しようとしました。実測した数百本の樹木のデータをもとにして,生態学の樹形理論から相対成長式を誘導しました。樹木が光合成のために根から葉へと水を運ぶパイプが束ねられたものが幹であるとする「パイプモデル」,また,これを発展させた「静力学モデル」を使って,樹木の幹の断面積あたりにかかる荷重(応力)は,幹のどの高さでも一定である性質を利用して個体重が推定できました。
 本研究の優れた点は,樹形理論と樹木の個体重の推測を結びつけることにより,冷温帯に生育する落葉広葉樹と針葉樹,植栽された針葉樹のように,多様な樹木群に適用可能な汎用性の高い推測が可能になる点です。具体的には,パイプモデルで根系の個体重を,そして静力学モデルで地上系の個体重を推測するための式を作成し,岐阜大学演習林の20種81本の樹木を伐採した結果と他の研究者が報告している他地区の結果(地上部重:22種157本,根重:13種33本)を照合しました。その結果,樹形理論に基づいて作成した個体重の推測式は,従来の方法よりも精度の高い推測式であることが示されました。
 樹形理論が個体重の推測に応用可能であることを広域の森林で示した点,実用的な推測方法を提案した点が高く評価され,今回の受賞へとつながりました。
 この研究で提案された推測式は,従来推測が困難だった冷温帯林で,落葉広葉樹・針葉樹(ヒノキ・アカマツ),植栽された針葉樹(スギ・カラマツ)などの現存量や成長量を求める際に,推測性と汎用性の高い手段となることが考えられます。この式を使えば,樹木の個体重を推定するために樹木を伐採する必要はもう無くなります。

受賞論文



2013.05.30

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