大マゼラン雲で巨大な「分子雲ジェット」を発見
ガンマ線連星のエネルギー生成メカニズムの解明に大きな一歩
名古屋大学大学院理学研究科の福井 康雄 名誉教授、岐阜大学大学院自然科学技術研究科の佐野 栄俊 准教授、同大学高等研究院のブヴァナ・ガディケレ・ラジェンドラ 研究員、柘植 紀節 特任助教らの研究チームは、大マゼラン雲注1)のガンマ線連星「LMC P3」が高エネルギージェットを噴出する天体であることを世界で初めて示しました。
同チームは、南米チリの大型電波望遠鏡アルマ(アルマ望遠鏡)注2)を用いて大マゼラン雲の星間雲の高分解能観測を実施し、観測結果を詳細に解析しました。その結果、ガンマ線連星LMC P3に付随する分子雲ジェットが発見されました。この発見によって、同連星がブラックホール、あるいは中性子星注3)に降着するガス円盤によって加速された高エネルギージェットを噴き出しており、周囲の星間ガスを衝撃波圧縮してジェット状分子雲を形成したことが明らかになりました。
このジェットは既知の銀河系内最強のジェット天体SS433注4)に匹敵する強力なものであり、ブラックホール等のコンパクト天体が駆動する降着円盤注5)の存在が確実になりました。また、この天体は強力なガンマ線源でもあり、ジェット加速とならんで宇宙線源としても大マゼラン雲で最強であるとみられ、大マゼラン雲における宇宙線の起源と銀河進化の解明に大きな影響を与えるとみられます。
本研究成果は、2026年10月30日午前0時(日本時間)付の天文学術雑誌「アストロフィジカルジャーナル」誌にて掲載されました。

大マゼラン雲のガンマ線連星系「LMC P3」周辺で発見された分子雲ジェット
(左)大マゼラン雲の超新星残骸 DEM L241 と高エネルギー連星 LMC P3。赤はX 線、緑・青は可視光、黄線は分子ガスを示す。
(右)白枠内をアルマ望遠鏡で拡大した画像。色は分子ガスの電波強度を表す。
本研究のポイント
- 大マゼラン雲にあるガンマ線連星「LMC P3」から伸びる、分子ガスの流れを大型電波望遠鏡アルマ(アルマ望遠鏡)で発見。大マゼラン雲で、このような高エネルギー現象に伴う分子ガスのジェットが捉えられたのは初めて。
- 観測された分子ガスのジェットは、LMC P3から放出された、光速に近い高速ジェットによってつくられた可能性を示した。 これにより、ブラックホールや中性子星の周囲に形成される「降着円盤」が、巨大なエネルギーを生み出している可能性が示された。
- LMC P3は、ガンマ線連星の中でも非常に明るい天体。本成果は、ガンマ線連星がどのように高エネルギーの粒子や放射を生み出しているのか、その仕組みを解明する重要な手掛かりとなる。
詳しい研究内容について
大マゼラン雲で巨大な「分子雲ジェット」を発見
~ガンマ線連星のエネルギー生成メカニズムの解明に大きな一歩~
論文情報
用語解説
天の川銀河の近くにある伴銀河の一つ。
南米チリのアタカマ高地に設置された大型電波望遠鏡。10m級の高精度パラボラアンテナ60基余から構成され、ミリ波-サブミリ波帯で宇宙を観測する。日米欧の国際共同によって2010年に建設され、これまでの運用によって多くの研究成果があげられている。
星の進化の最後につくられる超高密度天体。サイズは10kmと小さいが、質量は太陽の 1.4~2.2倍程度。これよりも重くなるとブラックホールになる。
降着円盤によって加速された高エネルギージェットを持つ最もよく知られた高エネルギー天体。マイクロクエイサーの代表格。
ブラックホールなどの周囲に、物質が回転しながら落ち込むことで形成される円盤状の構造。