研究・採択情報

雪害で失われた木材収入を山菜資源が補う可能性

雪害スギ人工林で生じる「木材生産」と「山菜生産」のトレードオフを解明

 岐阜大学高等研究院・環境社会共生体研究センターの斎藤琢教授、森部絢嗣准教授、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球環境研究部門の永井信主任研究員らの研究グループは、岐阜県高山市の雪害を受けたスギ人工林を対象に、木材生産と山菜生産の経済的価値を比較評価しました。
 その結果、2014年の雪害によって失われた木材収入の一部が、雪害後に自然増加したタラノキ、コシアブラ、ハリギリなどの山菜の収穫・販売によって補完される可能性があることを明らかにしました(下図)。近年、我々は、気候変動による自然撹乱の増加と林業従事者の減少という複合的な環境・社会課題に直面しています。本研究は、このような課題を解決するための一助として、雪害を受けたスギ人工林における新たな森林利用・管理戦略の可能性を提示するものです。
 本研究成果は、2026年10月21日に森林生態学の国際誌であるForest Ecology and Management誌のオンライン版で発表されました。

図
雪害による木材価値の損失と山菜資源のトレードオフ

本研究のポイント

  • 岐阜県高山市の雪害を受けたスギ人工林を対象に、木材と山菜の経済的価値を比較評価しました。
  • 2014年の雪害により、スギ人工林の木材価値は約44.3万円/ha減少すると推定されました。
  • 一方、雪害後の森林ではタラノキ、コシアブラ、ハリギリなどの山菜資源が増加しました。
  • 増加した山菜資源の潜在的な販売価値は年間約8.4万円/haと推定されました。
  • 雪害は木材生産に損失をもたらす一方で、山菜資源の増加を通じて森林の新たな価値を創出する可能性が示されました。

詳しい研究内容について

雪害で失われた木材収入を山菜資源が補う可能性
~雪害スギ人工林で生じる「木材生産」と「山菜生産」のトレードオフを解明~

論文情報

  • 雑誌名:Forest Ecology and Management
  • 論文名:Trade-offs between timber and edible wild plant provisioning: A case study of a snow-disturbed Japanese cedar planted forest
  • 著 者:Taku M. Saitoh, Nagai Shin, Junji Moribe
  • DOI:10.1016/j.foreco.2026.124347

用語解説

  • 1) 雪害
    積雪や着雪によって樹木に生じる被害。幹折れ、倒伏、根返り、樹冠損傷などが含まれる。
  • 2) 山菜
    森林や草地などに自生し、食用として利用される植物。日本ではタラノキ(タラノメ)、コシアブラ、ワラビなどが代表的である。
  • 3) 自然撹乱
    台風・火災・洪水・土砂崩れ・病害虫の発生などの自然現象によって生態系の構造や環境が変化すること。