研究・採択情報

ペロブスカイト太陽電池向け新材料 ~同じ結晶相の酸化チタンが創る「エネルギーの階段」が高性能化に有効~

 近年、再生可能エネルギー分野において、「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。新たな材料開発や界面設計が進む中、酸化スズや酸化チタン等の金属酸化物半導体は、ペロブスカイト層が光を吸収することで生じた電子の取り出しや輸送を担う代表的な材料として知られ、その高機能化は現在も重要な研究課題です。これまで、薄膜を形成するこれらの酸化物の微細構造や電子物性(エネルギー準位等)を制御する研究が数多く行われてきました。
 岐阜大学工学部の萬関一広准教授の研究グループでは、独自の化学合成をもとに、酸化チタンをエネルギー創出技術へ応用する研究に取り組んでいます。今回、低温化学合成(50~60 ℃)と熱処理を組み合わせ、形状と電子物性の異なる酸化チタン微粒子を作り分けました。特に重要な成果は、2種類のルチル型酸化チタンが示す比較的小さなエネルギー準位の差を利用し、これらを薄膜として積み重ねて「エネルギーの階段」を創る材料設計です。
 異なる半導体材料や結晶相のエネルギー準位の違いを利用する材料設計は、ペロブスカイト太陽電池を含む様々な研究分野で検討されてきました。今回、この積層構造をペロブスカイト太陽電池に導入したところ、積層する順序によって発電性能が変化し、適切な積層構造では他の構造と比較して高い発電性能を示しました。これは、異なる酸化物半導体(酸化スズ/酸化チタン等)や異なる結晶相(アナターゼ型/ルチル型酸化チタン等)の組み合わせを利用せず、同じ結晶相の酸化チタンを積み重ねてエネルギー配置を設計するペロブスカイト太陽電池用の独自技術です。
 本研究成果は、日本時間2026年9月22日に英国の国際学術誌『Journal of Materials Chemistry C』のオンライン版で発表されました。

図
ペロブスカイト太陽電池用酸化チタン薄膜材料の設計概念

本研究のポイント

  • ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層(光で生じた電子を効率よく電極へ運ぶ膜)として、エネルギー準位の異なる2種類の酸化チタンを積層し、電子輸送に適した「エネルギーの階段」を形成しました。
  • 異なる材料や結晶相を組み合わせることなく、同じルチル相注)の酸化チタンを積層して「エネルギーの階段」を創る新たな材料設計です。
  • 技術の要は、50 ℃と60 ℃のわずかな合成温度の違いによって微細構造と電子物性の異なる酸化チタンを作り分ける低温化学合成と、それらの分散液をスピンコート法で塗布・熱処理して積層膜を形成する連続プロセスです。
  • 作り分けた分散液の塗布順を変え、高性能化につながる条件を見いだしました。単層構造や逆の積層構造と比べて発電効率が相対的に約10~14%向上しました。

詳しい研究内容について

ペロブスカイト太陽電池向け新材料
~同じ結晶相の酸化チタンが創る「エネルギーの階段」が高性能化に有効~

論文情報

  • 雑誌名:Journal of Materials Chemistry C
  • 論文名:Spatially Modulated Energy Alignment in Single-Phase Rutile TiO₂ Bilayer Electron Transport Layers for Perovskite Solar Cells
  • 著 者:Kazuhiro Manseki*, Shinapol Toranathumkul, So Yokoyama, Daisuke Takemoto
    (*)Corresponding Author
  • DOI:10.1039/D6TC01828A

用語解説

  • 注) ルチル
    酸化チタン(TiO₂)の代表的な結晶構造の一つ。他にアナターゼやブルッカイト等が知られている。