研究・採択情報

細胞外におけるヒアルロン酸分解の新たな制御機構を解明

 岐阜大学医学部附属病院泌尿器科の飛澤 悠葵准教授、矢野 文彬臨床助教、富岡 莉紗医員、古家 琢也教授らの研究グループは、米国カリフォルニアのSanford Burnham Prebys Medical Discovery Instituteの山口 祐教授らとの共同研究で、細胞膜貫通型ヒアルロン酸分解酵素である「Transmembrane protein-2(TMEM2)」の新たな活性制御機構を解明しました。
 肌のハリや保湿の有効成分として知られるヒアルロン酸※1は、細胞と細胞の間隙を満たす細胞外マトリクスの主要成分であり、組織の柔軟性、粘弾性を保つ重要な役割を担っています。ヒアルロン酸は、組織内において絶えず合成と分解が繰り返され、わずか3日ですべてが入れ替わるほど高速に代謝回転します。しかし、細胞外におけるヒアルロン酸分解がどのように調節されているかについては、十分に分かっていませんでした。
 本研究では、TMEM2の酵素活性には空間的に制御されたメカニズムが存在すること、そのメカニズムにおいて、「CD44※2」または「LYVE-1※3」を介した細胞表面でのヒアルロン酸の捕捉が効率的なヒアルロン酸分解に寄与することを明らかにしました。
 本成果は、TMEM2によるヒアルロン酸分解が細胞周囲のグリコカリックス層および細胞外マトリクスの恒常性維持に重要な役割を担っている可能性を示すとともに、これらが関与するがんや希少疾患の新たな治療法開発へつながることが期待されます。
 本研究成果は、日本時間2026年8月12日にFrontiers in Molecular Biosciences誌のオンライン版で発表されました。

研究概要

本研究のポイント

  • 細胞外でヒアルロン酸を分解する酵素「TMEM2」の働きを調節する新たな仕組みを解明しました。
  • ヒアルロン酸合成酵素「HAS」が同一細胞上に発現するときにTMEM2の分解活性は高くなり、他の細胞が発現するヒアルロン酸や細胞から遊離したヒアルロン酸に対する分解活性は限定的であることが明らかになりました。
  • TMEM2の遊離ヒアルロン酸に対する活性制御には、ヒアルロン酸結合タンパク質である「CD44」と「LYVE-1」が関与することを明らかにしました。

詳しい研究内容について

細胞外におけるヒアルロン酸分解の新たな制御機構を解明

論文情報

  • 雑誌名:Frontiers in Molecular Biosciences
  • 論文名:Regulation of TMEM2-mediated hyaluronan degradation by CD44 and LYVE-1
  • 著 者:Yuki Tobisawa, Fumiakira Yano, Risa Tomioka-Inagawa, Fumitoshi Irie, Takuya Koie, Yu Yamaguchi
  • DOI:10.3389/fmolb.2026.1852012

用語解説

  • ※1 ヒアルロン酸
    肌の保湿を促す成分として化粧水などに配合されるヒアルロン酸は2つの単糖(N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸)を1ユニットとして繰り返し連結した直鎖の糖鎖です。大量の水を保持し粘弾性を持つため全身の組織を支える機能を有しています。一方でその機能が物質の拡散や細胞の移動を制御する物理的な障壁となり、薬剤の効果や生体反応に影響を及ぼすことがわかっています。
  • ※2 CD44
    ヒアルロン酸に結合することが確認されている細胞接着分子の一つで、一部のがんではがん幹細胞マーカーとして使用されるなど、がんの進展や遊走に関与する膜貫通型タンパク質です。生体の多くの細胞で発現が見られ、組織に応じて分子量や結合親和性の異なるフォームを有することも特徴の一つです。
  • ※3 LYVE-1
    CD44と並んでヒアルロン酸結合が確認されている膜貫通型タンパク質です。主にリンパ節やリンパ管で発現し免疫細胞の遊走に関与します。