星が爆発した現場において、生まれたばかりの星を包む多様な有機分子含んだゆりかごを世界で初めて発見
宇宙における有機分子の多様性や太陽系形成環境への新たな知見がもたらされることを期待
星が爆発した現場で、多様な有機分子を含む星のゆりかごが初めて発見されました。
新潟大学理学部の下西隆准教授、岐阜大学の佐野栄俊准教授、理化学研究所開拓研究所の古家健次研究員、京都大学の大屋瑶子講師は、アルマ望遠鏡注1を用いて、約1600年前に重たい星が爆発した領域を観測し、星の赤ちゃんを包む暖かい分子ガスのゆりかご(ホットコア注2)を発見しました。さらに、このゆりかごには、複雑な有機分子注3や水をはじめとして、様々な分子が含まれていることも明らかになりました。今回の発見は、超新星爆発注4という有機分子にとっては過酷な環境にあっても、生まれたばかりの星はそのゆりかごに守られ、化学的な豊かさが保たれる可能性を示唆しています。本研究は、宇宙における有機分子の多様性や、私たちの住む太陽系が形成された環境の理解などに大きく貢献することが期待されます。この研究成果は、2026年7月1日に天文学論文誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されました。

超新星残骸に発見された星の赤ちゃんを包む暖かい分子ガスのゆりかご(ホットコア)の想像図
青色は超新星爆発により生じた高エネルギー粒子や光子、茶色は星間物質を表している。
クレジット:下西隆(新潟大学)[本研究の観測結果に基づき、Google GeminiおよびChatGPTによる描画支援を利用]
本研究のポイント
- 星が爆発した現場において、生まれたばかりの星を包む暖かい分子ガスのゆりかごが世界で初めて発見されました。
- 近くで星が爆発した過酷な環境にあっても、星のゆりかごには様々な種類の有機分子が含まれていました。
- 生命関連物質の材料となりうる複雑な有機分子は、私たちが思っていたよりずっと過酷な環境でも生き残る可能性が示唆されました。
詳しい研究内容について
星が爆発した現場において、生まれたばかりの星を包む多様な有機分子含んだゆりかごを世界で初めて発見
-宇宙における有機分子の多様性や太陽系形成環境への新たな知見がもたらされることを期待-
論文情報
用語解説
アルマ望遠鏡(正式には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array、ALMA)は、南米チリ共和国北部にあるアタカマ砂漠の標高5000メートルに建設された電波望遠鏡です。パラボラアンテナ66台を組み合わせる干渉計方式の巨大望遠鏡で、ミリ波・サブミリ波領域では分解能・感度ともに世界一の性能を誇ります。アルマ望遠鏡は、国立天文台を代表とする東アジア、米国国立電波天文台を代表とする北米連合、ヨーロッパ南天天文台を代表とするヨーロッパ、及びチリ共和国が協力して建設・運用する国際的な共同プロジェクトです。
生まれたばかりの星(原始星)の周りでは、分子雲段階で生成された氷が融けることで、暖かい分子ガスが大量に存在する領域が作られます。星の赤ちゃんをゆりかごのように包むこのような暖かい分子ガスの塊は、ホットコアと呼ばれています。暖かいといっても、温度としてはマイナス150度前後からせいぜい室温程度です。星形成初期の分子雲の状態に比べれば十分に暖かいので、ホットという表現が使われます。太陽程度の比較的質量の小さい原始星に付随するホットコアは、ホットコリノと呼ばれることもあります。
天文学では、6個以上の原子からなる有機分子を「複雑な有機分子」と呼んでいます。
太陽よりもおよそ10倍以上の大きな質量を持つ重い星や、一部の近接連星がその生涯を終える時に引き起こす宇宙最大規模の爆発現象のことです。超新星爆発は、鉄より重い元素を作ったり、その強烈な衝撃波により強いX線やガンマ線など発生させたり、高エネルギーの荷電粒子(宇宙線)を加速させたりと、周囲の環境に大きな影響を与えます。爆発時の超新星は一時的に極めて明るくなるため、天体によっては古代の文献にその記録が残っているものもあります。超新星爆発の後に残された星雲状の天体を超新星残骸と呼びます。