研究・採択情報

温暖化によるアユ生態の南方化~海水温の上昇が海洋生活を短縮、長良川の長期データで解明~

 アユは秋に川で生まれ、海に下りて冬を過ごし、春に再び川へ戻る魚です。一般に、アユの海での生活期間は南方ほど短いことが知られており、川や海の水温がこれに関連していると考えられていました。しかし、その詳しい要因は未解明であり、加えて近年の温暖化の影響についてはまったく分かっていませんでした。
 長野大学共創情報科学部の永山滋也しげや教授は、岐阜大学環境社会共生体研究センターの原田守啓もりひろセンター長、岐阜県里川・水産振興課の藤井亮吏りょうじ氏、岐阜県水産研究所の大原健一氏と共同研究を行い、長良川河口堰で捕獲した遡上アユの日齢と河川・海水温の関係を調べました。その結果、冬季のアユの海洋生活期間が海水温と密接な関係にあること、また温暖化に伴う海水温の上昇によって海洋生活期間が短くなっていることを突き止めました。
 本研究成果は、国際学術誌『Journal of Fish Biology』のオンライン版において、日本時間2026年6月11日に掲載されました。

イメージ
長良河口堰で捕獲した遡上アユ(左)、摘出した耳石※1(中)、研磨した耳石の輪紋の様子(右)

本研究のポイント

  • 岐阜県水産研究所に長年蓄積されてきた長良川のアユのデータを活用し、アユが冬の海で過ごす期間は海水温と密接に関係しており、この海洋生活期間が温暖化による海水温上昇によって短縮していることを初めて突き止めました。
  • この結果は、ある特定地域におけるアユの生態が、温暖化によって≪南方の生態―南方ほど海洋生活期間が短い―≫に近づいていることを意味します(アユ生態の南方化)。
  • 過去の研究から、長良川では、温暖化の影響による秋の産卵・孵化の遅延が確認されています。しかし、冬の海洋生活期間が短くなっているために、見かけ上は春の遡上時期に顕著な変化は起きていないと考えられます。
  • 本成果により、川と海を行き来するアユ仔稚魚期の生態の理解が深まるとともに、アユ資源管理方策への貢献が期待されます。

詳しい研究内容について

温暖化によるアユ生態の南方化
~海水温の上昇が海洋生活を短縮、長良川の長期データで解明~

論文情報

用語解説

  • ※1 耳石
    魚の頭の中、内耳にあり、主成分が炭酸カルシウムからなる硬い小構造物で、魚のバランス感覚や聴覚に関与している。成長とともに大きくなり、年輪のような層(成長輪)を形成する。そのため、魚の日齢や年齢の推定に用いられる。また、成長時に耳石に取り込まれる微量元素は、その時の周囲の水環境を反映するため、魚の回遊履歴の推定にも用いられる。